相続 貸付用不動産の評価方法の見直し

 

近年、相続税の過度の節税が多く見られるため、国税庁はこれを防ぎ課税の公平性を確保するため①タワーマンションの評価方法の見直しに次いで➁貸付用不動産の評価方法の見直し(亡くなる前5年以内に取得・新築した賃貸用不動産は、路線価ではなく取得価額ベースで評価する)を行うことになりました。 このことにより相続発生直前の駆け込み節税が出来なくなりました。 以前からタワマン節税等のほとんどの節税スキームは時価と相続税評価額との乖離に基づいて行われていましたが、財産評価基本通達6項(総則6項)に基づきより国税庁の指示により時価課税を行うことによって、過度の節税が是正され、また新しい評価通達等により納税者側で評価の予測ができるようになり、課税の公平性、客観性、明瞭性等が確保できるものと思われます。 その第二弾として貸付用不動産の評価方法の見直しが行われることになりました。

(札幌タワ-マンション事案の経緯)

1生前に、被相続人は、不動産の購入資金を借り入れた上で二つの不動産を購入した。
2相続が発生し、相続人は以前から行われていた通達による評価方法により評価した結果、最終的に課税価格は相続税の基礎控除内に収まり、相続税は0円となり相続税申告を行いました。
3この申告に対し所轄税務署長は、当該不動産は不動産鑑定評価額で評価するべきであると相続税の更正処分等を行ったところ、相続人がこの判断を不服として裁判で争われることになりました。
4国税当局は、被相続人が90歳を超える高齢者であり、銀行の内部資料にも「この取得は相続税対策である」旨の記載があったことから、相続発生直前に取得価額と評価通達による相続税評価額の乖離を利用した相続税の圧縮を図ったものであり、このような事態は他の納税者との間の租税負担の公平性を著しく害するとして、財産評価基本通達6項を適用し、不動産鑑定価格(市場価格)による価額で相続税を計算すべきであると主張しました。
5最高裁は、国税当局の主張を認める判決を下しました。 
6判決の趣旨は、節税目的が過度に顕著であり、節税の意図が明確でありると推定出来場る場合に租税回避行為として否認できるという点を明確に示しました。

22年4月の「札幌タワマン裁判」についての最高裁判決を受けて、国税庁は、総則6項を適用するかどうかについての判断の基準として下記3項目を全国の国税局に示しました。

基準1   評価通達に定められた評価方法以外に、他の合理的な評価方法が存在するか
基準2評価通達に定められた評価方法による評価額と、他の合理的な評価方法による評価額との間に、著しい乖離が存在するか
基準3課税価格に算入される財産の価額が、客観的交換価値としての時価を上回らないとしても、評価通達の定めによって評価した価額と異なる価額とすることに合理的な理由があるか

3つの基準のすべて満たさなければならないというわけではなく、3要素を踏まえて総合的に判断されます。 また、これを受けマンションの評価方法が新たに公表されました。 その結果評価方法は時価の6割以上で評価することになりました。 

① 相続開始前(または贈与前)5年以内に取得または新築した貸付用不動産(第三者に貸し付けて賃料収入を得る目的の不動産を指します) 
ただし今回の評価内容の変更を通達に定める日までに、被相続人等がその所有する土地(同日の5年前から所有しているものに限る)に新築をした家屋(同日において建築中のものを含む)には適用しません。
➁ 不動産小口化商品
不動産の種類評価額
相続開始前(または贈与前)5年以内に取得または新築した貸付用不動産
 
(注) ただし今回の評価内容の変更を通達に定める日までに、被相続人等がその所有する土地(同日の5年前から所有しているものに限る)に新築をした家屋(同日において建築中のものを含む)には適用しません。
取得価額を基に地価の変動等を考慮した価額の80%
不動産小口化商品 時価評価(取得時期を問わず)

2027年(令和9年)1月1日以後に相続または贈与により取得する貸付用不動産から適用されます。

(改正内容の一覧表)

区分現在改正後(2027/1/1〜)変更  
取得後5年超の貸付用土地路線価等による自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合)路線価等による自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合) なし
取得後5年超の貸付用建物自用家屋の評価額×(1-借家兼割合)自用家屋の評価額×(1-借家兼割合)
取得後5年以内の貸付用土地路線価等による自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合)取得価額の80% あり
取得後5年以内の貸付用   建物自用家屋の評価額×(1-借家兼割合)
不動産小口化商品路線価・固定資産税評価額ベース時価 あり