所得 譲渡所得

譲渡所得とは、下記の様な資産を含む資産の譲渡による所得をいいます。

土地、借地権、建物、株式等、 金地金、宝石、書画、骨とう、船舶、機械器具、漁業権、取引慣行のある借家権、配偶者居住権、配偶者敷地利用権、ゴルフ会員権、特許権、著作権、鉱業権、土石(砂)など。

なお、貸付金や売掛金などの金銭債権は除かれます。

譲渡所得の課税方法は譲渡した資産の種類より、下記のように課税方法が異なります。

課税方法譲渡資産の種類税率
総合課税一般の資産(下記以外のもの)総合課税による一般税率
株式等①ゴルフ会員権の譲渡に類似するもの
分離課税(土地建物等)②短期所有土地の譲渡に類似するもの30%
分離課税(株式等)「上場株式等に係る譲渡所得等の金額」➂上記①及び②以外の株式等で上場株式に該当するものに係る譲渡15%
分離課税 (株式等) 「一般株式等に係る譲渡所得等の金額」④上記①から➂以外の株式等で一般株式に該当するものに係る譲渡15%
分離課税(土地建物等)
短期譲渡所得
長期譲渡所得
土地(借地権等の土地の上に存する権利を含みます。)および建物等課税短期譲渡所得 30%
課税長期譲渡所得 15%
分離課税(先物取引に係る雑所得等の金額)上場カバードワラント15%
店頭カバードワラント

(注) 平成25年から令和19年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1パーセントを所得税と併せて申告・納付することになります。

1 総合課税 譲渡所得の金額を事業所得や不動産所得などの他の所得と一緒に総所得金額に算入し、税額を計算します。

2 分離課税 それぞれの譲渡所得金額についての税額を、他の所得と区分し、それぞれの所得の種類ごとに税額を計算します。

株式等の課税の仕方は複雑ですので下記にてご確認下さい。

株式等の詳細は国税庁へ

譲渡とは、有償無償に関係なく、資産の所有権を移転させる一切の行為をいいます。 通常の売買のほか、交換、競売、公売、代物弁済、財産分与、収用、法人に対する現物出資なども含まれます。

また、次の場合にも資産の譲渡があったものとされます。

(1) 法人に対して資産を贈与した場合や限定承認による相続などがあった場合

次のイまたはロのような事由により資産の移転があった場合には、時価(通常売買される価額をいいます。以下同じ。)で資産の譲渡があったものとされます。

  イ 法人に対する贈与や遺贈、時価の2分の1未満の価額による譲渡

  ロ 限定承認の相続や限定承認の包括遺贈(個人に対するものに限られます。)

(2) 1億円以上の有価証券等を所有している一定の居住者が国外転出等をする場合

(3) 地上権や賃借権、地役権を設定して権利金などを受け取った場合

建物や構築物を所有するための地上権や賃借権(以下「借地権」といいます。)の設定などにより受ける権利金などについても、その金額が借地権の設定された土地の時価の2分の1(地下または空間について上下の範囲を定めたものである場合等は4分の1、大深度事業と一体的に施行される事業により設置される施設等の全部の所有を目的とする地下について上下の範囲を定めたものである場合は4分の1にさらに一定の割合を乗じたもの)を超える場合には、譲渡所得の対象とされます。

(4) 資産が消滅することによって補償金などを受け取った場合

収用などにより、借地権、漁業権などの資産が消滅したり、その価値が減少することにより一時に補償金などを受け取ったときは、その補償金などは譲渡所得の対象とされます。

(5) ストック・オプション税制の適用を受けて取得した株式の返還または移転があった場合

(6) 特定従事者がストック・オプション税制の適用を受けて取得した株式を保有したまま国外転出する場合

下記のような資産の譲渡による所得は事業所得や雑所得、山林所得として課税されます。

(事業所得になる場合)

⑴ 事業所得者が商品、製品、半製品、仕掛品、原材料などの棚卸資産を譲渡した場合の所得。

(山林所得になる場合)

⑵ 山林を伐採して譲渡した場合または立木のまま譲渡した場合の所得。

(雑所得になる場合)

⑶ 不動産所得や山林所得、雑所得を生ずる業務を行っている者がその業務に関して上記(1)の棚卸資産に準ずる資産を譲渡した場合の所得。

(事業所得または雑所得になる場合)

⑷ 使用可能期間が1年未満の減価償却資産、取得価額が10万円未満である減価償却資産(業務の性質上基本的に重要なものを除きます。)、取得価額が20万円未満である減価償却資産で、取得の時に「一括償却資産の必要経費算入」の規定の適用を受けたもの(業務の性質上基本的に重要なものを除きます。)を譲渡した場合の所得。

⑸ 山林を取得してから5年以内に伐採して譲渡したり立木のまま譲渡した場合の所得。

⑹(1)から(5)までの資産以外の資産を相当の期間にわたり、継続的に譲渡している場合の所得。

下記のような資産の譲渡による所得は課税されません。

(所得税法の規定による非課税)

(1) 生活用動産の譲渡による所得

家具、じゅう器、通勤用の自動車、衣服などの生活に通常必要な動産の譲渡による所得です。

ただし、貴金属や宝石、書画、骨とう及び美術工芸品などで、1個または1組の価額が30万円を超えるものの譲渡による所得は除きます。

(2) 強制換価手続による資産の譲渡による所得

資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難な場合に、強制換価手続(滞納処分や強制執行、担保権の実行としての競売、破産手続等)により、資産を譲渡したことによる所得および強制換価手続の執行が避けられないと認められる場合における資産の譲渡による所得で、その譲渡代金の全部が債務の弁済に充てられたものです。

(租税特別措置法の規定による非課税)

(3) 貸付信託の受益権等の譲渡による所得

(4) 国または地方公共団体に対して財産を寄附した場合(公益法人等に対する財産の寄附で国税庁長官の承認を受けた場合の含む)の所得

法人に対して財産を贈与または遺贈(以下「寄附」といいます。)した場合には、時価で財産の譲渡があったものとされますが、国や地方公共団体に対して財産を寄附した場合や、公益を目的とする事業を行う法人に対する財産の寄附で国税庁長官の承認を受けた場合には、その寄附はなかったものとみなされます。

(5) 国等に対して重要文化財を譲渡した場合の所得

特定の重要文化財(土地を除きます。)を国、独立行政法人国立文化財機構、独立行政法人国立美術館、独立行政法人国立科学博物館、地方公共団体、一定の地方独立行政法人または一定の文化財保存活用支援団体に譲渡した場合の譲渡所得については、課税されません。

(6) 財産を相続税の物納に充てた場合の所得

財産を相続税の物納に充てた場合には、その財産の譲渡はなかったものとみなされます。

ただし、物納の許可限度額を超える価額の財産を物納した場合には、その超える部分は譲渡所得の課税対象になります。

(7) 債務処理計画に基づき資産を贈与した場合の所得

中小企業者である法人の取締役等でその法人の債務の保証人であるものが、その法人の事業の用に供されている資産を、債務処理計画に基づき令和7年3月31日までの間にその法人に贈与した場合には、一定の要件の下、その贈与はなかったものとみなされます。

譲渡所得の金額  =  譲渡金額 - (取得費+譲渡費用)

(1)取得費とは、売った資産を買い入れたときの購入代金や、購入手数料などの資産の取得に要した金額に、その後支出した改良費、設備費を加えた合計額をいいます。

(注1) 時の経過に伴って減価する資産は、所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します。

(注2) 土地や建物の取得費が不明の時、または実際の取得費が譲渡価額の5パーセントよりも少ないときは、譲渡価額の5パーセントを取得費(概算取得費)として計算することができます。

(2)譲渡費用とは、資産を売るために支出した費用をいい、仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代、売却するときに借家人などに支払った立退料、建物を取り壊して土地を売るときの取壊し費用などです。

総合課税の場合と土地建物等の分離課税の場合では長期、短期の区分の仕方が異なっていますので、注意が必要です。

1 総合課税の場合

総合課税の譲渡所得は、取得したときから売ったときまでの所有期間によって長期と短期の二つに分かれます。

①長期譲渡所得 所有期間が5年を超えている場合です。 (所得-譲渡所得の特別控除)×1/2が総所得金額に算入されます。

②短期譲渡所得 所有期間が5年以内の場合です。 (所得-譲渡所得の特別控除)が総所得金額に算入されます。

2 土地建物等の分離課税の場合

所有期間によって長期譲渡所得と短期譲渡所得の2つに区分し、税金の計算も別々に行います。

①長期譲渡所得とは譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるものをいいます。

②短期譲渡所得とは譲渡した年の1月1日において所有期間が5年以下のものをいいます。

(注)相続や贈与により取得したものは、原則として、被相続人や贈与者の取得した日から計算することになっています。

1 総合課税の場合

課税総所得金額 × 税率

2 分離課税の場合

それぞれの課税所得金額 × 税率(租税特別措置法の規定によるそれぞれの税率)