相続 遺言書
遺言書の種類と作成方法
相続が発生した後、相続人間で相続争いが起こることは珍しくありません。 それを防ぎ、スムーズに相続を進めるためには遺言書の作成は重要な意味を持ちます。 遺言書作成方法には基本的に自筆証書遺言、公正証書遺言及び秘密証書遺言と三種類あり、それぞれ長所と短所がありますが、下記にその内容を掲載致しますのでご参照願います。
遺言書の種類
自筆証書遺言
自筆証書遺言とは下記の要件を備えた遺言書です。
項目 | 一般的 | 自筆証書遺言書保管制度を利用する場合の追加要件 |
書き方 | ①遺言書の全てを自筆で書く必要がありますのでパソコク等で作成した遺言書は無効です。 ➁自書でない財産目録が添付されている場合、すべてのページに署名、押印する必要があります。 ➂自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力は生じません。 | |
書式 | 特に規定はなく、縦書き又は横書きでもよいことになっており、外国語で書いたものでも意味が分かれば良いことになっています。 枚数及び用紙サイズの規定はありません。 | ①A4用紙で作成し、➁上側5mm、下側10mm、左側20mm、右側5mmの余白を確保すること➂片面のみに記載し➃各ペ-ジにページ番号を記載し(1/1、1/2等)、⑤複数ページでもとじ合わせしない。 |
筆記用具 | ボールペン、万年筆等。 鉛筆、シャープペンは不可 | |
日付 | 令和〇〇年〇月〇日と書く。(〇月吉日は不可) | |
氏名 | 実名が望ましい | |
押印 | 認め印でも可 |
公正証書遺言
遺言者が公証役場で遺言の内容を口述し、公証人がこれに基づき遺言書を作成し、証人二人の前でその内容を確認し、出席した全員が署名・押印をし作成した遺言書です。
区分 | 詳細 |
内容 | 遺言者が公証役場で遺言の内容を口述し、公証人がこれに基づき作成し、証人二人の前でその内容を確認し、出席した全員が署名・押印をし作成した遺言書です。 |
必要書類 | ①遺言者と相続人の戸籍謄本 ➁相続人以外に相続させたい人がいる場合はその人の住民票 ➂不動産の登記事項証明書及び固定資産税評価額が分かる書類 ➃預貯金・株式その他の金融資産について金融機関名、口座番号などを記載した通帳等(写し) 又は、それを正確に記載したメモ及びその残高、価額等 ⑤遺言者の3か月以内の印鑑証明書 ⑥実印 ⑦証人二人とその印鑑 |
作成場所 | 公証役場又は必要に応じその他の場所 |
秘密証書遺言
遺言内容を秘密にし、作成するための遺言書です。 具体的には遺言内容を自筆又はパソコンで作成し、これに遺言者が署名押印した上で、これに封をして遺言書に押印した印鑑と同じ印鑑で封印します。 その後公証人及び証人二人の前に提出し、これが遺言者の遺言書であること及び住所、氏名を申述します。 そして公証人が遺言者の申述と日付を封書に記載し、これに遺言者、公証人、証人が署名押印して作成します。
遺言書の形式とその特色
区分 | 自筆証書遺言 | 自筆証書遺言書保管制度を利用した自筆証書遺言書 | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 |
メリット | 費用がかからない | 比較的費用がかからない | 遺言書は基本的に無効になることがない | 遺言内容が秘密にできる |
デメリット | 遺言書が無効になるリスクがある | 無効になるリスクがあるが、法務局に保管申請時に適合するかどうかの外形的チェックを受けることが出来るので無効になるリスクは軽減できる。 | 費用がかかる。 財産の評価額により異なる | 無効になるリスクがあり、費用がかかる。 |
発生費用 | 基本的にゼロ | 保管料は1通につき3900円 | 書類作成費と法定費用 | 11000円 |
相続発生時に発見されるかどうか | 自宅で保管しているので、保管状況次第で発見されにくいこともある | 発見されやすい | 発見されやすい | 遺言書を作成したことは証明されるが、保管状況次第で発見されにくいこともある |
証人 | 不要 | 不要 | 二人 | 二人 |
作成方法 | 自分で作成する手間がかかるが、内容が簡単でありば早く作成できる可能性がある | 自分で作成する手間がかかり、かつ法務局に預ける手間ががかる | 公証役場に行く必要と必要書類を集める必要があり、比較的手間がかかる | 遺言書を作成する手間と、公証役場に行く必要があり、比較的手間がかかる |
家庭裁判所の検認 | 必要 | 不要 | 不要 | 必要 |
遺言書の保管 | 自分で保管 | 法務局 | 公証役場 | 自分で保管 |
費用は令和5年4月1日現在です。
注1 検認とは
注2 自筆証書遺言書保管制度とは
参照 民法に規定する遺言に関する主な条文
第九百六十七条
遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によってしなければならない。ただし、特別の方式によることを許す場合は、この限りでない。
(自筆証書遺言)
第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
(公正証書遺言)
第九百六十九条 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 証人二人以上の立会いがあること。
二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。
(公正証書遺言の方式の特則)
第九百六十九条の二 口がきけない者が公正証書によって遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述し、又は自書して、前条第二号の口授に代えなければならない。この場合における同条第三号の規定の適用については、同号中「口述」とあるのは、「通訳人の通訳による申述又は自書」とする。
2 前条の遺言者又は証人が耳が聞こえない者である場合には、公証人は、同条第三号に規定する筆記した内容を通訳人の通訳により遺言者又は証人に伝えて、同号の読み聞かせに代えることができる。
3 公証人は、前二項に定める方式に従って公正証書を作ったときは、その旨をその証書に付記しなければならない。
(秘密証書遺言)
第九百七十条 秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。
二 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。
三 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
四 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。
2 第九百六十八条第三項の規定は、秘密証書による遺言について準用する。
(方式に欠ける秘密証書遺言の効力)
第九百七十一条 秘密証書による遺言は、前条に定める方式に欠けるものがあっても、第九百六十八条に定める方式を具備しているときは、自筆証書による遺言としてその効力を有する。
(秘密証書遺言の方式の特則)
第九百七十二条 口がきけない者が秘密証書によって遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、その証書は自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を通訳人の通訳により申述し、又は封紙に自書して、第九百七十条第一項第三号の申述に代えなければならない。
2 前項の場合において、遺言者が通訳人の通訳により申述したときは、公証人は、その旨を封紙に記載しなければならない。
3 第一項の場合において、遺言者が封紙に自書したときは、公証人は、その旨を封紙に記載して、第九百七十条第一項第四号に規定する申述の記載に代えなければならない。
(成年被後見人の遺言)
第九百七十三条 成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければならない。
2 遺言に立ち会った医師は、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、これに署名し、印を押さなければならない。ただし、秘密証書による遺言にあっては、その封紙にその旨の記載をし、署名し、印を押さなければならない。