相続税
相続 贈与
みなし贈与等
みなし贈与等の意義
一般的に贈与税は贈与者及び受贈者に贈与の意思があって課税されます。 しかしながら、実態が贈与と同じような場合に、贈与者及び受贈者に贈与の意思がなければ贈与税を課税できないとするならば、課税の公平を保つことが出来ません。 この「不合理」を補うために、実質的に対価を支払わないで経済的利益を受けた場合においては、贈与契約の有無にかかわらず当該経済的利益を贈与により取得したものとみなして、贈与税が課税されています。
相続税法第7条のみなし贈与等の規定
(贈与又は遺贈により取得したものとみなす場合)
区分 | 内 容 |
原則 | 著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合においては、当該財産の譲渡があつた時において、当該財産の譲渡を受けた者が、当該対価と当該譲渡があつた時における当該財産の時価(当該財産の評価について第三章に特別の定めがある場合には、その規定により評価した価額)との差額に相当する金額を当該財産を譲渡した者から贈与(当該財産の譲渡が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなして、課税されます。 |
例外 | 当該財産の譲渡が、その譲渡を受ける者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、その者の扶養義務者から当該債務の弁済に充てるためになされたものであるときは、その贈与又は遺贈により取得したものとみなされた金額のうちその債務を弁済することが困難である部分の金額については、この限りでない。 |
著しく低い価額の対価とは
所得税法59条に著しく低い価額の対価として政令で定める額(時価の1/2未満)の規定がありますが、相続税法等に規定はありません。 以前は相続税法等にも同様の規定がありましたが、このような画一的基準によって、明らかに贈与する意思で贈与した場合でも、時価の1/2以上であることによって、課税できないという不公平が生じていました。 これを是正するため、著しく低い価額の対価の判断は個々の具体的事案に基づき判断する必要があるという結論になり、今日に至りました。 したがいまして時価以下で売買することは慎重に考える必要があります。
相続税法第9条のみなし贈与等の規定
区分 | 内 容 |
原則 | 相続税法第五条から八条まで及び次節に規定する場合を除くほか、①対価を支払わないで、又は➁著しく低い価額の対価で➂利益を受けた場合においては、当該利益を受けた時において、当該利益を受けた者が、当該利益を受けた時における当該利益の価額に相当する金額(対価の支払があつた場合には、その価額を控除した金額)を当該利益を受けさせた者から贈与(当該行為が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみしまなす。 |
例外 | ただし、当該行為が、当該利益を受ける者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、その者の扶養義務者から当該債務の弁済に充てるためになされたものであるときは、その贈与又は遺贈により取得したものとみなされた金額のうちその債務を弁済することが困難である部分の金額については、この限りではありません。 |
*[利益を受けた]の意義とは、おおむね利益を受けた者の財産の増加又は債務の減少があった場合等(労務の提供等を受けたような場合を除く)
主な具体的事例(相続税基本通達より)
区 分 | 内 容 |
株式又は出資の価額が増加した場合 | (原則) 同族会社(法人税法(昭和40年法律第34号)第2条第10号に規定する同族会社をいう。以下同じ。)の株式又は出資の価額が、例えば、次に掲げる場合に該当して増加したときにおいては、その株主又は社員が当該株式又は出資の価額のうち増加した部分に相当する金額を、それぞれ次に掲げる者から贈与によって取得したものとして取り扱うものとする。この場合における贈与による財産の取得の時期は、財産の提供があった時、債務の免除があった時又は財産の譲渡があった時によるものとする。(昭57直資7-177改正、平15課資2-1改正) (1) 会社に対し無償で財産の提供があった場合 当該財産を提供した者 (2) 時価より著しく低い価額で現物出資があった場合 当該現物出資をした者 (3) 対価を受けないで会社の債務の免除、引受け又は弁済があった場合 当該債務の免除、引受け又は弁済をした者 (4) 会社に対し時価より著しく低い価額の対価で財産の譲渡をした場合 当該財産の譲渡をした者 (例外) 同族会社の取締役、業務を執行する社員その他の者が、その会社が資力を喪失した場合において9-2の(1)から(4)までに掲げる行為をしたときは、それらの行為によりその会社が受けた利益に相当する金額のうち、その会社の債務超過額に相当する部分の金額については、9-2にかかわらず、贈与によって取得したものとして取り扱わないものとする。 なお、会社が資力を喪失した場合とは、法令に基づく会社更生、再生計画認可の決定、会社の整理等の法定手続による整理のほか、株主総会の決議、債権者集会の協議等により再建整備のために負債整理に入ったような場合をいうのであって、単に一時的に債務超過となっている場合は、これに該当しないのであるから留意する。 |
同族会社の募集株式引受権 | 同族会社が新株の発行(当該同族会社の有する自己株式の処分を含む。以下9-7までにおいて同じ。)をする場合において、当該新株に係る引受権(以下9-5までにおいて「募集株式引受権」という。)の全部又は一部が会社法(平成17年法律第86号)第206条各号((募集株式の引受け))に掲げる者(当該同族会社の株主の親族等(親族その他法施行令第31条に定める特別の関係がある者をいう。以下同じ。)に限る。)に与えられ、当該募集株式引受権に基づき新株を取得したときは、原則として、当該株主の親族等が、当該募集株式引受権を当該株主から贈与によって取得したものとして取り扱うものとする。ただし、当該募集株式引受権が給与所得又は退職所得として所得税の課税対象となる場合を除くものとする。 |
同族会社の新株の発行に伴う失権株に係る新株の発行が行われなかった場合 | 同族会社の新株の発行に際し、会社法第202条第1項((株主に株式の割当てを受ける権利を与える場合))の規定により株式の割当てを受ける権利(以下9-7において「株式割当権」という。)を与えられた者が株式割当権の全部若しくは一部について同法第204条第4項((募集株式の割当て))に規定する申込みをしなかった場合又は当該申込みにより同法第206条第1号に規定する募集株式の引受人となった者が同法第208条第3項((出資の履行))に規定する出資の履行をしなかった場合において、当該申込み又は出資の履行をしなかった新株(以下「失権株」という。)に係る新株の発行が行われなかったことにより結果的に新株発行割合(新株の発行前の当該同族会社の発行済株式の総数(当該同族会社の有する自己株式の数を除く。以下9-7において同じ。)に対する新株の発行により出資の履行があった新株の総数の割合をいう。以下9-7において同じ。)を超えた割合で新株を取得した者があるときは、その者のうち失権株主(新株の全部の取得をしなかった者及び結果的に新株発行割合に満たない割合で新株を取得した者をいう。以下9-7において同じ。)の親族等については、当該失権株の発行が行われなかったことにより受けた利益の総額のうち、次の算式により計算した金額に相当する利益をその者の親族等である失権株主のそれぞれから贈与によって取得したものとして取り扱うものとする |
婚姻の取消し又は離婚により財産の取得があった場合 | 婚姻の取消し又は離婚による財産の分与によって取得した財産(民法第768条((財産分与))、第771条((協議上の離婚の規定の準用))及び第749条((離婚の規定の準用))参照)については、贈与により取得した財産とはならないのであるから留意する。ただし、その分与に係る財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮してもなお過当であると認められる場合における当該過当である部分又は離婚を手段として贈与税若しくは相続税のほ脱を図ると認められる場合における当該離婚により取得した財産の価額は、贈与によって取得した財産となるのであるから留意する |
財産の名義変更があった場合 | 不動産、株式等の名義の変更があった場合において対価の授受が行われていないとき又は他の者の名義で新たに不動産、株式等を取得した場合においては、これらの行為は、原則として贈与として取り扱うものとする |
無利子の金銭貸与等 | 夫と妻、親と子、祖父母と孫等特殊の関係がある者相互間で、無利子の金銭の貸与等があった場合には、それが事実上贈与であるのにかかわらず貸与の形式をとったものであるかどうかについて念査を要するのであるが、これらの特殊関係のある者間において、無償又は無利子で土地、家屋、金銭等の貸与があった場合には、法第9条に規定する利益を受けた場合に該当するものとして取り扱うものとする。ただし、その利益を受ける金額が少額である場合又は課税上弊害がないと認められる場合には、強いてこの取扱いをしなくても妨げないものとする |
負担付贈与等 | 負担付贈与又は負担付遺贈があった場合において当該負担額が第三者の利益に帰すときは、当該第三者が、当該負担額に相当する金額を、贈与又は遺贈によって取得したこととなるのであるから留意する。この場合において、当該負担が停止条件付のものであるときは、当該条件が成就した時に当該負担額相当額を贈与又は遺贈によって取得したことになるのであるから留意する |
共有持分の放棄 | 共有に属する財産の共有者の1人が、その持分を放棄(相続の放棄を除く。)したとき、又は死亡した場合においてその者の相続人がないときは、その者に係る持分は、他の共有者がその持分に応じ贈与又は遺贈により取得したものとして取り扱うものとする |
信託が合意等により終了した場合 | 法第9条の3第1項に規定する受益者連続型信託(以下「受益者連続型信託」という。)以外の信託(令第1条の6に規定する信託を除く。以下同じ。)で、当該信託に関する収益受益権(信託に関する権利のうち信託財産の管理及び運用によって生ずる利益を受ける権利をいう。以下同じ。)を有する者(以下「収益受益者」という。)と当該信託に関する元本受益権(信託に関する権利のうち信託財産自体を受ける権利をいう。以下同じ。)を有する者(以下「元本受益者」という。)とが異なるもの(以下9の3-1において「受益権が複層化された信託」という。)が、信託法(平成18年法律第108号。以下「信託法」という。)第164条((委託者及び受益者の合意等による信託の終了))の規定により終了した場合には、原則として、当該元本受益者が、当該終了直前に当該収益受益者が有していた当該収益受益権の価額に相当する利益を当該収益受益者から贈与によって取得したものとして取り扱うものとする |
配偶者居住権が合意等により消滅した場合 | 配偶者居住権が、被相続人から配偶者居住権を取得した配偶者と当該配偶者居住権の目的となっている建物の所有者との間の合意若しくは当該配偶者による配偶者居住権の放棄により消滅した場合又は民法第1032条第4項((建物所有者による消滅の意思表示))の規定により消滅した場合において、当該建物の所有者又は当該建物の敷地の用に供される土地(土地の上に存する権利を含む。)の所有者(以下9―13の2において「建物等所有者」という。)が、対価を支払わなかったとき、又は著しく低い価額の対価を支払ったときは、原則として、当該建物等所有者が、その消滅直前に、当該配偶者が有していた当該配偶者居住権の価額に相当する利益又は当該土地を当該配偶者居住権に基づき使用する権利の価額に相当する利益に相当する金額(対価の支払があった場合には、その価額を控除した金額)を、当該配偶者から贈与によって取得したものとして取り扱うものとする。(令元課資2-10追加) (注) 民法第1036条((使用貸借及び賃貸借の規定の準用))において準用する同法第597条第1項及び第3項((期間満了及び借主の死亡による使用貸借の終了))並びに第616条の2((賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了))の規定により配偶者居住権が消滅した場合には、上記の取り扱いはないことに留意する。 |