医業 医療法人の運営等
医療法人の運営
1 医療法人の組織形態
⑴社団医療法人の組織図
項目 | 詳細 | 定員 | 任期 |
社員 | 社員は拠出者でなくてもなることが出来、各一個の議決権を有します。 また社員には法人(営利を目的とする法人を除く)もなることが出来ますが運営上の観点から適当でないとされています | 3人以上 | |
理事 | 1 理事になれる人は自然人で次の欠格事由に該当していない人で、社員と兼務することが出来ます。 ⑴ 成年被後見人又は被保佐人 ⑵ 医療法、医師法等医療法施行令5条の5の7に定める医事に関する法令の規定により罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して2年を経過しない者 ⑶ ⑵に該当する者を除くほか刑法等において禁錮以上の刑に処せられ、その執行が終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者 2 その医療法人の開設する全ての病院、診療所又は介護老人保健施設の管理者を理事に加えなければならない。 | 3人以上 | 2年以内(定款の規定による) |
理事会 | 医療法人の業務執行の決定、理事の職務の執行の監督、理事長の選出及び解職を行います。 | ||
理事長 | 医師、歯科医師である理事のうちから選出する(ただし都道府県知事の認可を受けた場合は医師、歯科医師でない理事のうちから選出することができる)。 *例外規定 理事長が死亡し、又は重度の傷病により理事長の職務を継続することが不可能となった場合にその子女が医科又は歯科大学在学中か、又は卒業後、臨床研修を終えるまでの間、医師、歯科医師でない配偶者が理事長に就任しようとするような場合 | 1人 | 2年以内(定款の規定による) |
監事 | 医療法人の財産等及び業務の監査を行います。 医師である必要はありませんが理事又は従業員、理事の親族、医療法人に拠出している個人、顧問関係にある個人(税理士、公認会計士、弁護士等)は監事になることができません | 1人以上 | 2年以内(定款の規定による) |
社員総会 | 社員総会は社団医療法人の最高意思決定機関で各一個の議決権を有する社員で構成されます。 理事長は少なくとも毎年1回定時社員総会を開かなければなりません(厚生労働省のモデル定款により実務上は年2回行われることが一般的になっています) |
⑴ 財団医療法人の組織図
綱目 | 詳細 | 定員 | 任期 |
評議員 | 財団医療法人の最高意思決定機関で、諮問機関である評議員会の構成員で医療従事者、病院の経営に関して見識を有する者又は患者等のうちから寄付行為で定める方法により選出することになっています。 ただし次の人は評議員になれません。 ⑴法人 ⑵成年被後見人又は被保佐人 ⑶医療法、医師法等医療法施行令5条の5の7に定める医事に関する法令の規定により罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して2年を経過しない者 ⑷⑶に該当する者を除くほか、刑法等において禁錮以上の刑に処せられ、その執行が終わり、又執行を受けることがなくなるまでの者 ⑸当該医療法人の役員、職員 | 理事の定数を超える数 | 2年以内(寄付行為の規定による) |
評議員会 | ⑴事業報告書等の承認 ⑵法人の重要事項の決定 ⑶理事、監事の選任、解任 ⑷理事、監事の報酬額の決定(寄付行為で規定がない場合) | ||
理事 | 1 理事になれる人は自然人で次の欠格事由に該当していない人で、社員と兼務することが出来ます。 ⑴成年被後見人又は被保佐人 ⑵医療法、医師法等医療法施行令5条の5の7に定める医事に関する法令の規定により罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して2年を経過しない者 ⑶⑵に該当する者を除くほか刑法等において禁錮以上の刑に処せられ、その執行が終わり、又執行を受けることがなくなるまでの者 2 その医療法人の開設する全ての病院、診療所又は介護老人保健施設の管理者を理事に加えなければならない | 3人以上 | 2年以内(寄付行為の規定による) |
理事長 | 医師、歯科医師である理事のうちから選出する(ただし都道府県知事の認可を受けた場合は医師、歯科医師でない理事のうちから選出することができる) *例外規定 理事長が死亡し、又は重度の傷病により理事長の職務を継続することが不可能となった場合にその子女が医科又は歯科大学在学中か、又は卒業後、臨床研修を終えるまでの間、医師、歯科医師でない配偶者が理事長に就任しようとするような場合 | 1人 | 2年以内(寄付行為の規定による) |
監事 | 医療法人の財産等及び業務の監査を行います。 医師である必要はありませんが理事又は従業員、理事の親族、医療法人に拠出している個人、顧問関係にある個人(税理士、公認会計士、弁護士等)は監事になることができません | 1人以上 | 2年以内(寄付行為の規定による) |
2 運 営
医療法人の運営は医療法人運営管理指導要綱に従い運営する必要が有ります 実務上は医療法人運営管理指導要綱に従い運営する必要が有りますので厚生労働省の医療法人運営管理指導要綱への案内をいたしますのでご参照ください
3 医療法人の会計、会計年度及び作成書類
⑴ 会 計
①会計基準
医療法人は医療法及び厚生労働省令で定めるところにより、一般的に公正妥当と認められる会計の慣行に従い適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならないとされています。 また、医療法第51条第2項に該当する医療法人の場合は公認会計士等の外部監査が義務付けられ、貸借対照表及び損益計算書については医療法人会計基準により作成しなければならないとされています。 医療法第51条第2項に該当する医療法人(医療法人会計基準により作成する必要がある法人)とは 医療法第51条第2項に規定する医療法人とは以下のとおりです(医療法施行規則第33条の2)。
- 貸借対照表に計上した負債の合計額が50億円以上又は損益計算書に計上した事業収益の合計額が70億円以上である医療法人
- 貸借対照表に計上した負債の合計額が20億円以上又は損益計算書に計上した事業収益の合計額が10億円以上である社会医療法人
- 社会医療法人債発行法人である社会医療法人
➁会計期間
医療法人の会計年度は4月1日に始まり、翌年3月31日に終わるとされています。 ただし定款又は寄付行為に別段の定めがある場合は、この限りでないと規定されています。
⑵ 事業報告書等(毎決算期に作成する必要がある書類です)
①事業報告書
➁財産目録
➂貸借対照表(医療法人の種類により次のとおり分かれています)
会計基準 | 法人の種類 | |
一般(医療法人会計基準適用以外) | イ 病院又は介護老人施設を開設する医療法人 | A 持分の定めがないもの B 経過措置医療法人 |
ロ 診療所のみを開設する医療法人 | A 持分の定めがないもの B 経過措置医療法人 | |
医療法人会計基準適用 | イ 病院又は介護老人施設を開設する医療法人 | A 持分の定めがないもの B 経過措置医療法人 |
ロ 診療所のみを開設する医療法人 | A 持分の定めがないもの B 経過措置医療法人 |
➃損益計算書
イ 病院又は介護老人施設を開設する医療法人 ロ 診療所のみを開設する医療法人
⑤監事監査報告書
⑥関係事業者との取引状況に関する報告書
医療法人における事業報告書等の様式について (厚生労働省ホ-ムペ-ジより) 1 医療法(昭和23年法律第205号。以下「法」という。)第51条第1項の事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書及び関係事業者との取引の内容に関する報告書並びに第46条の4第7項第3号の監査報告書の様式を次のとおり定めたこと。 (1) 事業報告書 様式1 (2) 財産目録 様式2 (3) 貸借対照表 ① 病院、介護老人保健施設又は介護医療院を開設する医療法人 様式3―1 ② 診療所のみを開設する医療法人 様式3―2 (4) 損益計算書 ① 病院、介護老人保健施設又は介護医療院を開設する医療法人 様式4―1 ② 診療所のみを開設する医療法人 様式4―2 (5) 関係事業者との取引の状況に関する報告書 様式5 (6) 監事監査報告書 様式6 2 法第54条の2第1項の社会医療法人債を発行した医療法人(当該社会医療法人債の総額について償還済みであるものを除く。)の財産目録、貸借対照表及び損益計算書の様式については、1にかかわらず、社会医療法人債を発行する社会医療法人の財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(平成19年厚生労働省令第38号)の様式第一号、様式第二号及び様式第三号により取り扱われたいこと。 3 法第51条第2項の医療法人の財産目録、貸借対照表及び損益計算書の様式については、1にかかわらず、財産目録については、医療法人会計基準適用上の留意事項並びに財産目録、純資産変動計算書及び附属明細表の作成方法に関する運用指針(平成28年4月20日医政発0420第5号)の様式第三号、貸借対照表及び損益計算書については、医療法人会計基準(平成28年厚生労働省令第95号)の様式第一号及び第二号により取り扱われたいこと。
〔別紙〕 厚生労働省ホ-ムペ-ジにリンク画像1 (39KB)
4 変更登記
登記項目 | 登記内容 |
⑴ 定款又は寄付行為の変更の許可を受けた登記事項の変更 | 医療法人の名称及び事務所の所在地の変更、診療所の新規開設があった場合等の場合は登記の変更が必要になります |
⑵ 総資産額の変更 | 毎会計年度終了後2か月以内に、財産目録に記載された資産の総額の登記が必要になります |
⑶ 理事、理事長の変更 | 理事、理事長の任期満了等による変更があった場合は変更の登記が必要になります |
⑴、⑶の変更登記は2週間以内にする必要が有ります |
5 税金に係る申告書の提出及び納付
税 目 | 手続き |
⑴ 法人税の申告 | 原則毎会計年度終了の日から2か月以内に確定申告書を提出する必要が有り、また、前期の税額が一定額を超える場合は期中で予定申告書を提出する必要が有ります |
⑵ 法人県民税及び事業税の申告 | 会計年度終了の日から2か月以内に確定申告書を提出する必要が有り、また、場合により期中で予定申告書を提出する必要が有ります(ただし事業税の予定申告は必要ありません) |
⑶ 法人市民税の申告 | 会計年度終了の日から2か月以内に確定申告書を提出する必要が有り、また、場合により期中で予定申告書を提出する必要が有ります |
⑷ 源泉所得税の納付 | 従業員の給与に係る源泉所得税を徴収月の翌月10日までに納付する必要が有ります(但し納期の特例の承認を受けた場合は、1月-6月分は7月10日迄に、7月-12月分は翌年1月20日迄) |
⑸ 市民税の納付 | 従業員の特別徴収の市民税は徴収月の翌月10日までに納付する必要が有ります |
⑹ 償却資産(固定資産税)の申告 | 毎年1月31日までに1月1日現在の償却資産(固定資産税)の申告書を提出する必要が有ります |
6 理事及び監事の報酬等
項 目 | 内 容 |
⑴ 理事の報酬等 | 理事の報酬等は定款又は寄付行為によりその額を定めていないときは、社員総会や評議員会(以下社員総会等という)の決議によって定めることされています。 実務は総額を社員総会等で定め具体的な個々の理事の金額は理事会で決めることになります。 |
⑵ 監事の報酬等 | 監事の報酬等は定款又は寄付行為によりその額を定めていないときは、社員総会等の決議によって定めることされています。 監事が二人以上の場合は決められた総額の範囲内で監事の協議で決めることになっています。 |
⑴、⑵が不相当に高額な場合 | ただし税法上、役員報酬(定時同額給与及び税務署の承認を受けた場合は届出の賞与)は原則損金に算入されますが、その役員の職務の内容、同種同規模法人の報酬支給状況に照らして不相当に高額な金額は損金になりません(法人税第34条) |
不相当の判定方法 | 不相当に高額かどうかの判定は、当該役員の職務の内容、その内国法人の収益及びその使用人に対する給与の支給の状況、その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する給与の支給の状況等に照らし、当該役員の職務に対する対価として相当であるかどうかによります |
医療法人の持分についての相続税の納税猶予制度
概要
相続人等が、相続又は遺贈により認定医療法人(相続税の申告期限において)の持分を相続した場合、納付すべき相続税のうち、この特例の適用を受ける持分の価額に対応する相続税については、所定の要件のもと、認定移行計画に記載された移行期限まで、その納税が猶予されます。 この場合の猶予される相続税額を医療法人持分納税猶予税額といいます。
認定医療法人とは
平成26年度の医療法改正により令和5年9月30日までに持ち分の定めがある社団が持ち分の定めのない社団に移行する計画を策定し、厚生労働大臣の認定を受けた場合その医療法人。
特例の適用を受けるための要件
この特例の適用を受けるための要件は、下記のとおりです。
(必要要件)
要 件 | |
1 | 被相続人が医療法人の持分を有していた人であること。 |
2 | 相続人等が被相続人から相続または遺贈により医療法人の持分を取得した人であること。 |
3 | 医療法人の持分が相続税の申告期限において認定医療法人の持分(遺産分割されているものに限ります。)であり、相続税の期限内申告書にこの特例の適用を受ける旨を記載したものであること。 |
猶予された相続税額
医療法人持分納税猶予税額が免除される場合
認定医療法人の認定移行計画に記載された移行期限までに、下記の様な事由が生じた場合は、原則的に、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれに掲げる金額に相当する相続税額は、届出書を提出することにより、免除されます。
区分 | 届出により免除される額 | |
---|---|---|
1 | 認定医療法人の持分のすべてを放棄した場合 | 医療法人持分納税猶予税額 |
2 | 認定医療法人が基金拠出型医療法人への移行をする場合において、持分の一部を放棄し、その残余の部分をその基金拠出型医療法人の基金として拠出したとき | 医療法人持分納税猶予税額から基金として拠出した額に対応する部分の金額を控除した残額 |
放棄の手続き 厚生労働大臣が定める「出資持分の放棄申出書」(医療法施行規則附則様式7)を認定医療法人に提出する ことにより放棄する必要があります。
医療法人持分納税猶予税額が免除されない場合
下記に該当する場合には、この特例の適用を受けることはできません。
区分 | |
1 | 相続開始の時から相続税の申告期限までの間に、医療法人の持分に基づき出資額に応じた払戻しを受けた場合 |
2 | 相続開始の時から相続税の申告期限までの間に、医療法人の持分を譲渡した場合 |
3 | 相続開始の時から相続税の申告期限までの間に、認定医療法人の持分の全部または一部を放棄し、医療法人の持分についての相続税の税額控除の適用を受ける場合 |
医療法人持分納税猶予額の納付
(1) 医療法人持分納税猶予税額を納付しなければならない場合
納税猶予を受けている相続税額は、下記に該当する場合は、その相続税額の全部または一部を納付する必要があります。
<医療法人持分納税猶予税額の全部確定>
区分 | 詳 細 |
a | 相続税の申告期限から認定医療法人の認定移行計画に記載された移行期限までの間に、認定医療法人の持分に基づき出資額に応じた払戻しを受けた場合 |
b | 相続税の申告期限から認定医療法人の認定移行計画に記載された移行期限までの間に、認定医療法人の持分の譲渡をした場合 |
c | 認定医療法人の認定移行計画に記載された移行期限までに、新医療法人への移行をしなかった場合 |
d | 認定医療法人の認定移行計画について、厚生労働大臣の認定が取り消された場合 |
e | 認定医療法人が解散をした場合(合併により消滅をする場合を除きます。) |
f | 認定医療法人が合併により消滅をした場合(合併により医療法人を設立する場合において相続人等が持分に代わる金銭その他の財産の交付を受けないときなど一定の場合を除きます。) |
<医療法人持分納税猶予税額の一部確定>
認定医療法人が認定移行計画に記載された移行期限までに、基金拠出型医療法人への移行をする場合において、相続人等が認定医療法人の持分の一部を放棄し、その残余の部分を基金拠出型医療法人の基金として拠出したとき |
(2) 利子税
区分 | 内 容 |
原則 | 上記(1)により納付する相続税額については、相続税の申告期限の翌日から納税猶予の期限までの期間(日数)に応じ、年6.6パーセントの割合で利子税がかかります。 |
特例 | 各年の利子税特例基準割合(※1)が7.3パーセントに満たない場合には、その年中においては次の算式により計算した割合が適用されます。 算式[6.6% × 利子税特例基準割合(※1) ÷ 7.3%] (注)0.1パーセント未満の端数は切り捨て、その割合が0.1パーセント未満の割合である場合は年0.1パーセント 税特例基準割合については、国税庁の延滞税の割合をご参照ください。 |
納付義務の承継
認定医療法人の認定移行期間中に、この特例の適用を受けている相続人等が死亡した場合には、その相続人等に係る医療法人持分納税猶予税額の納付義務は、その相続人等の相続人が承継いたします。
申告等の方法
この特例の適用を受けるためにはの手続きは、①所轄の税務署に相続税の申告書を期限内に提出するとともに、➁医療法人持分納税猶予税額および利子税の額に見合う担保を提供する必要があります。