法人税―暗号資産
暗号資産
暗号資産(仮想通貨)の概略
暗号資産(仮想通貨)とは、①インターネットを通じて不特定の者に対して、代金の支払い等に使用でき、かつ、法定通貨(日本円や米国ドル等)と相互に交換でき、➁電子的に記録され、移転でき、➂法定通貨または法定通貨建ての資産(プリペイドカード等)ではないもので通貨のような機能を持つ電子データです。 具体的にはビットコイン、イーサリアム、ライトコイン等様々な種類が存在します。
暗号資産は、国家やその中央銀行によって発行された法定通貨ではなく、裏付け資産を持っていないことなどからその価値も保証されていません。 したがってさまざまな要因によって、暗号資産の価格が大きく変動する傾向にあります.。
暗号資産を売却した場合
暗号資産の売却、暗号資産での商品の購入又は暗号資産同士の交換といった暗号資産取引を行ったことにより生じた譲渡損益は暗号資産の売却等に係る契約をした日(約定日)の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入します。
暗号資産の譲渡利益又は損失額は、その暗号資産の譲渡の時における有償によるその暗号資産の譲渡により通常得べき対価の額とその暗号資産の譲渡原価との差額とされています。
譲渡原価の計算方法
暗号資産の譲渡原価は、次のとおり計算します。
譲渡原価 = 暗号資産の1単位当たりの帳簿価額(注1) × その譲渡をした暗号資産の数量
(注) 1単位当たりの帳簿価額の計算は、暗号資産の種類等ごとに移動平均法(法定評価方法)又は総平均法(事前に所轄税務署長に所定の届出等をする必要が有ります)により算出することとされています。
1。
暗号資産の取得価額
番号 | 区分 | 取得価額 |
① | 対価を支払って取得(購入)した場合 | 購入時に支払った対価の額 |
➁ | 贈与又は遺贈により取得した場合(次の③の場合を除く。) | 贈与又は遺贈の時の価額(時価) |
➂ | 相続人に対する死因贈与、相続、包括遺贈又は相続人に対する特定遺贈により取得した場合 | 被相続人の死亡の時に、その被相続人が暗号資産について選択していた方法により評価し た金額(被相続人が死亡時に保有する暗号資産の評価額) |
➃ | 上記以外の場合 イ 暗号資産同士の交換、マイニング(採掘)、分裂(分岐)などにより暗号資産を取得した場合 | その取得時点の価額(時価) |
注1 分裂(分岐)により暗号資産を取得した場合の取得価額 | ゼロ |
注 年末時点で保有する暗号資産の評価額は総平均法又は移動平均法のうちいずれか選択した方法(選択しない場合、法人においては移動平均法)により計算した金額となります。
暗号資産の評価方法の届出
評価方法の選定は、取得日の属する事業年度の確定申告期限(仮決算をした場合の中間申告書を提出するときは、その中間申告書の提出期限)までに届出書を税務署に提出する必要があります。 選定しなかった場合は、移動平均法が評価額になります。 [暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報)]に法人税について所得税程明確な規定がありませんが、消費税において暗号資産の譲渡は非課税にされていますので、有価証券に該当しませんので棚卸資産の評価方法の規定が準用されるものと思われます。
暗号資産の評価方法の変更手続
変更後の評価方法を適用したい事業年度開始日の前日までにその変更しようとする評価方法など所定の事項を記載した承認申請書を提出して、その承認を受ける必要があります。 ただし原則として現在の評価方法を採用してから3年程度経過していないと、却下される恐れがあります。
暗号資産で商品を購入した場合
暗号資産で商品を購入した場合、保有する暗号資産を譲渡したことになりますので、この譲渡に係る所得金額は、その暗号資産の譲渡価額とその暗号資産の譲渡原価等との差額となります。
暗号資産同士の交換を行った場合
暗号資産Aを他の暗号資産Bと交換した場合、暗号資産Aで暗号資産Bを購入したことになりますので、 暗号資産で商品を購入した場合」と同様に、暗号資産Aの譲渡に係る所得金額を計算する必要があります。
マイニング、ステーキング、レンディングなどにより暗号資産を取得した場合
その取得に伴い生ずる利益は法人税の課税対象となります。
暗号資産の分裂(分岐)により暗号資産を取得した場合
その時点では課税対象となる所得は生じません。
外国法人が行う暗号資産取引
外国法人は国内源泉所得のみが課税対象ですので、国内源泉所得の対象となる資産の譲渡に係る所得(恒久的施設に帰属する所得を除きます。)は、国内にある不動産の譲渡による所得等一定のものなどに限定されており、保有する暗号資産を日本の暗号資産交換業者に売却した場合は法人税の課税対象にはなりません。
国内源泉所得の対象となる資産の譲渡に係る所得(恒久的施設に帰属する所得を除きます。)
① 国内にある不動産の譲渡による所得
② 国内にある不動産の上に存する権利等の譲渡による所得
③ 国内にある山林の伐採又は譲渡による所得
④ 内国法人の発行する株式等の譲渡による所得で一定のもの
⑤ 不動産関連法人の株式等の譲渡による所得
⑥ 非居住者が国内に滞在する間に行う国内にある資産の譲渡による所得
暗号資産の譲渡損益の計上時期
暗号資産の売却等に係る契約をした日(約定日)の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入することになります。
暗号資産の期末時価評価
法人が事業年度終了の時において有する市場暗号資産にについては、時価法により評価した金額をもってその時における評価額とする必要があります。 なお、その市場暗号資産(ただし特定自己発行暗号資産及び特定譲渡制限付暗号資産を除きます。)を自己の計算において有する場合には、その評価額と帳簿価額との差額(評価損益といいます。)は、その事業年度の益金の額又は損金の額に算入する必要があります。 市場暗号資産に該当しない場合は原価法
番 号 | 暗号資産の区分 | 内 容 | 評価方法 |
⑴ | 特定自己発行暗号資産 | 法人が発行し、かつ、発行の時から継続して有する暗号資産であって、その時から継続して譲渡についての制限その他の条件が付されている一定のもので次のいずれかの要件に該当すること ①他の者に移転することができないようにする技術的措置がとられている ➁一定の要件を満たす信託財産とする措置がとられている | 原価法 |
⑵ | 特定譲渡制限付暗号資産 | 法人が有する市場暗号資産であって、譲渡についての制限その他の条件が付されているもので次の両方の要件に該当すること ①一定の譲渡制限(特定条件)が付されていること ➁上記の特定条件が付されていることを認定資金決済事業者協会を通じて公表するための通知手続きをとっていること | 原価法または時価法 |
⑶ | 上記⑴⑵以外の暗号資産 | 時価法 |
暗号資産の取得価額や売却価額が分からない場合
取引区分 | 詳細 | 確認書類及び取得価額 |
国内の暗号資産交換業者を通じた暗号資産取引 | ⑴平成30年1月1日以後の暗号資産取引 | 暗号資産交換業者に対して、国税庁が必要な情報を記載した「年間取引報告書」の交付をお願いしていますので、再交付をしてもらって確認する。 ・ 年中購入数量:その年の暗号資産の購入数量 ・ 年中購入金額:その年の暗号資産の購入金額(取得価額) ・ 年中売却数量:その年の暗号資産の売却数量 ・ 年中売却金額:その年の暗号資産の売却金額 |
⑵平成29年以前の暗号資産取引 | 自分の預金口座等により出金、入金等確認する。 違った場合は修正申告か更正の請求により精算する。 | |
個人間取引の場合 | 主として利用する暗号資産交換業者の取引相場 | |
注 概算取得費 | 不明の場合は売却価額の5%相当額でも可 |