法人 同族会社
同族会社
同族会社は一部の特定の株主が思い通りに経営することによって、会社や経営者一族に対する課税が不当に回避される可能性があります。 このような租税回避を防ぐため、法人税法上、⑴同族会社等の行為及び計算の否認、⑵使用人に対するみなし役員の認定、及び⑶留保金課税の規定が設けられています。
同族会社の意義
同族会社とは会社の株主等の3人以下並びにこれらと特殊関係ある個人及び法人が次に該当するの場合にその会社をいう
⑴その会社の発行済み株式等(自己株式を除く)の50%を超える株式を有する場合
⑵その会社議決権の50%を超える議決権を有する場合
⑶その会社の社員の半数を超える場合
同族会社のメリットとデメリット
メリット |
経営者の経営理念が会社全体に浸透しやすい |
短期的な利益に左右されず、長期的な視野に立った経営を行える |
意思決定が迅速に行える |
事業承継を円滑に行うことが出来る |
意思決定次第で個人の財産を増やしやすい |
デメリット |
経営者の独断と偏見により健全な経営ができない可能性がある |
後継者の選択の幅が狭められる |
兄弟等親族間で経営権を争う虞があり、場合により倒産に至る可能性がある |
親族と一般社員間に差異が生まれ、円滑な経営運営が出来なくなる可能性がある |
税法上で不利な取り扱いを受ける可能性がある |
同族会社に対する法人税の特別な規定
同族会社の行為又は計算の否認
法人税法では、[税務署長は、次に掲げる法人に係る法人税につき更正又は決定をする場合において、その法人の行為又は計算で、これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、その法人に係る法人税の課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる。]と規定されています。
行為及び計算の否認の対象となる法人 | |
⑴ | 内国法人である同族会社 |
⑵ | イからハまでのいずれにも該当する内国法人 イ 三以上の支店、工場その他の事業所を有すること。 ロ その事業所の二分の一以上に当たる事業所につき、その事業所の所長、主任その他のその事業所に係る事業の主宰者又は当該主宰者の親族その他の当該主宰者と政令で定める特殊の関係のある個人(以下この号において「所長等」という。)が前に当該事業所において個人として事業を営んでいた事実があること。 ハ ロに規定する事実がある事業所の所長等の有するその内国法人の株式又は出資の数又は金額の合計額がその内国法人の発行済株式又は出資(その内国法人が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額の三分の二以上に相当すること。 |
注 | 内国法人が同項各号に掲げる法人に該当するかどうかの判定は、同項に規定する行為又は計算の事実のあつた時の現況によるものとする。 |
使用人に対するみなし役員の認定
同族会社の使用人の内、経営に関わっていると判断された従業員は「みなし役員」として扱われる場合があります。 この場合、従業員に対して支払う給与・賞与でも、税務上役員と同様に扱われます。 事前確定届出給与に関する届出書を提出した賞与以外の損金に算入した賞与が否認されます。
みなし役員とは同族会社の使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者に限ります。)のうち、次に掲げるすべての要件を満たす者で、その会社の経営に従事しているもの
⑴ | その会社の株主グループ(注1)をその所有割合(注2)の大きいものから順に並べた場合に、その使用人が所有割合50パーセントを超える第一順位の株主グループに属しているか、または第一順位と第二順位の株主グループの所有割合を合計したときに初めて50パーセントを超える場合のこれらの株主グループに属しているか、あるいは第一順位から第三順位までの株主グループの所有割合を合計したときに初めて50パーセントを超える場合のこれらの株主グループに属していること。 |
⑵ | その使用人の属する株主グループの所有割合が10パーセントを超えていること。 |
⑶ | その使用人(その配偶者およびこれらの者の所有割合が50パーセントを超える場合における他の会社を含みます。)の所有割合が5パーセントを超えていること。 |
(注1) | 「株主グループ」とは、その会社の一の株主等およびその株主等と親族関係など特殊な関係のある個人や法人をいいます。 |
(注2) | 「所有割合」とは、次に掲げる場合に応じて、それぞれ次に定める割合をいいます。 ① その会社がその株主等の有する株式または出資の数または金額による判定により同族会社に該当する場合 その株主グループの有する株式の数または出資の金額の合計額がその会社の発行済株式または出資(その会社が有する自己の株式または出資を除きます。)の総数または総額のうちに占める割合 ➁ その会社が一定の議決権による判定により同族会社に該当することとなる場合 その株主グループの有する議決権の数がその会社の議決権の総数(議決権を行使することができない株主等が有するその議決権を除きます。)のうちに占める割合 ③ その会社が社員または業務執行社員の数による判定により同族会社に該当する場合 その株主グループに属する社員または業務執行社員の数がその会社の社員または業務執行社員の総数のうちに占める割合 |
留保金課税
同族会社のうち、特定同族会社[1つの株主グループの持株保有割合が50%超で、かつ資本金が1億円を超える会社又は大会社(資本金5億円以上の会社)の100%子会社]に該当する場合、一定の控除額を超える金額の留保がある場合は、留保金に対して通常の法人税とは別に下記の税率により留保金に課税されます。
課税留保金額 | 税率 |
年3,000万円以下の部分 | 10% |
年3,000万円超1億円以下の部分 | 15% |
年間1億円超の部分 | 20% |
[注]
⑴ 留保金額 = 法人の課税所得 + 課税外収入項目(受取配当金の益金不算入額や繰越欠損金の損金算入額など) - 社外流出の金額(剰余金の配当や役員賞与等) - 法人税等(法人税、市町村民税及び道府県民税)
⑵ 課税留保金 = 留保金額 ― 留保控除額
留保控除額は、次の基準額のうち最も多い金額を使用します。
基 準 | 留保控除額 |
(1) 所得基準額 | 当期の所得金額×40% |
(2) 定額基準額 | 2,000万円×当期の月数12 |
(3) 利益積立金基準額 | 期末資本金の額又は出資金の額×25%-期末利益積立金額 |