所得税―国際税務
個人の国際税務
個人の課税区分
所得税では、個人を居住者及と非居住者に区分し、それぞれ下記のように規定されています。
区 分 | 詳 細 | ||
居住者 | 国内に住所を有し、又は現在まで引き続き1年以上居所を有する個人 | 永住者 | 非永住者以外の居住者 |
非永住者 | 日本国籍を有しておらず、かつ過去10年以内において国内に住所又は居所を有していた期間が5年以下である個人 | ||
非居住者 | 居住者以外の個人 |
注1 法に規定する住所とは各人の生活の本拠をいい、生活の本拠であるかどうかは客観的事実によって判定する。
注2 居所とは、その人の生活の本拠ではないが、その人が現実に居住している場所とされています。
個人の課税範囲
所得税では、個人を居住者及び非居住者に区分に応じてその課税範囲が下記のように規定されています。
区 分 | 課 税 所 得 の 範 囲 | ||||
国内源泉所得 | 国外源泉所得 | ||||
国内払い | 国外払い | ||||
国外から送金されたもの | 国外から送金されないもの | ||||
居住者 | 永住者 | 課 税 | |||
非永住者 | 課 税 | 課税対象外 | |||
非居住者 | 課 税 | 課 税対 象 外 |
参照 非居住者の課税関係(国税庁資料)
(注) 1 恒久的施設帰属所得が、上記の表①から⑯までに掲げる国内源泉所得に重複して該当する場合があることに留意する。
2 上記の表i➁資産の譲渡により生ずる所得のうち恒久的施設帰属所得に該当する所得以外のものについては、令第281条第1項第1号から第8号までに掲げるもののみ課税される。
3 措置法の規定により、上記の表において総合課税の対象とされる所得のうち一定のものについては、申告分離課税又は源泉分離課税の対象とされる場合があることに留意する。
4 措置法の規定により、上記の表における源泉徴収税率のうち一定の所得に係るものについては、軽減又は免除される場合があることに留意する。
恒久的施設(Parmanent Establishment以下PEという)とは
恒久的施設とはその内容により次の3つの種類があります。
種類 | 内 容 |
支店PE | 支店、出張所、事業所、事務所、工場、倉庫業者の倉庫、鉱山・採石場等天然資源を採取する場所はPEに含まれます。 ただし、下記①、➁は除く ①資産を購入したり、保管したりする用途のみに使われる場所、 ➁広告、宣伝、情報の提供、市場調査、基礎的研究等、その事業の遂行にとって補助的な機能を有する活動を行うためにのみ使用する場所 |
建設PE | 建設、据付け、組立て等の建設作業等のための役務の提供を、1年を超えて行う場合のその場所は、PEとみなされます。 |
代理人PE | 非居住者のためにその事業に関し契約を結ぶ権限のある者で、常にその権限を行使する者や在庫商品を保有しその出入庫管理を代理で行う者、あるいは注文を受けるための代理人等はPEとみなされます。ただし、代理人等が、その事業に係る業務を非居住者に対して独立して行い、かつ、通常の方法により行う場合の代理人等はPEとみなされません。 |
恒久的施設帰属所得とは
非居住者が恒久的施設を通じて事業を行う場合において,その恒久的施設がその非居住者から独立して事業を行う事業者であるとしたならば,①その恒久的施設が果たす機能,②その恒久的施設において使用する資産,③その恒久的施設とその非居住者の事業場等との間の内部取引その他の状況を勘案して,その恒久的施設に帰せられるべき所得とされています。
給与所得者が海外勤務になった場合の課税関係
概 略
国外における勤務期間があらかじめ1年未満であることが明らかな場合を除いて原則として、所得税法上の非居住者と推定されます。 この場合には下記のように課税関係が異なります。
区 分 | 1月1日から出国の日までの期間(居住者の期間) | 出国の日の翌日から12月31日まで期間及び翌年以降の期間(非居住者の期間) |
給与所得だけの場合 | 居住者としての最後の給与支給の際に年末調整で手続き終了。 確定申告必要なし | 課税なし |
納給与所得以外にも不動産所得がある場合で 出国の日までに納税管理人の届け出を提出した場合 | 納税管理人が゛翌年3月15日までに全ての所得についての確定申告書を提出 | 納税管理人が翌年3月15日までに国内源泉所得と居住者期間についての所得と一緒に確定申告書を提出 |
納給与所得以外にも不動産所得がある場合で 出国の日までに税管理人の届け出を提出しなかった場合 | 出国の日までに確定申告書を提出 | 納税管理人が翌年3月15日までに非居住者の期間の不動産所得のみの確定申告を納税管理人を通じて提出 |
給与所得者が国外転出時課税の対象者である場合で 出国の日までに納税管理人の届け出を提出した場合 | 給与所得と対象資産の含み益(国外転出時の価額で対象資産の譲渡等があったものとみなして計算した金額)に対して翌年3月15日までに納税管理人を通して確定申告が必要。 一定の要件のもと、含み益に対する税額の納税猶予の手続きも可能 | 給与所得と対象資産の含み益と非居住者の期間の国内源泉所得の確定申告を納税管理人を通じて提出 |
給与所得者が国外転出時課税の対象者である場合で 出国の日までに税管理人の届け出を提出しなかった場合 | 給与所得と対象資産の含み益(国外転出予定日から起算して3か月前の価額で対象資産の譲渡等があったものとみなして計算した金額)に対して出国の日までに確定申告が必要。 | 非居住者の期間の国内源泉所得のみの確定申告を納税管理人を通じて提出 |
国外転出時課税の対象者とは | ⑴対象資産の価額の合計が1億円以上であること ⑵原則として国外転出をする日前10年以内において国内に5年を超えて住所又は居所を有していること | |
国外転出時課税の対象資産とは | 有価証券(株式、投資信託等)、匿名組合契約の出資の持分、未決済の信用取引・発行日取引・ デリバティブ取引 |
海外勤務中の課税関係
海外勤務になった後に、現地で支給される給与以外に本社からも日本に居住する家族に在留守宅手当、賃金格差補填金又は給与が支給される場合で、日本法人の役員に対する役員報酬に該当しない場合は、これらは非居住者が受ける国外源泉所得に該当するため、日本国内では課税されません。 ただし現地での課税については租税条約等の関係もありますので、現地で確認する必要があります。
給与の種類 | 所得の区分 | 課税関係 |
⑴ 日本法人の役員に対する役員報酬 | 日本の国内源泉所得 | 日本で課税される |
⑵ ⑴以外 | 日本の国外源泉所得 | 日本で課税されない |