相続 贈与税
贈与税の計算方法
贈与税の概略
区分 | 詳 細 |
原 則 | 一般的に贈与税は贈与者及び受贈者に贈与の意思があって課税されます。 又贈与税は、個人からの贈与により財産を取得したときにかかり、法人からの贈与により財産を取得したときは、贈与税ではなく所得税が課税されます |
特例(みなし贈与等) | この他、贈与税にはみなし贈与等の規定があり、実態が贈与と同じような場合に、贈与者及び受贈者に贈与の意思がなければ贈与税を課税できないとするならば、課税の公平を保つことが出来ませんので、この「不合理」を補うために、実質的に対価を支払わないで経済的利益を受けた場合においても、贈与契約の有無にかかわらず当該経済的利益を贈与により取得したものとみなして、贈与税が課税されています *当HPのみなし贈与等の項目をご参照下さい |
1 暦年課税の計算方法
現在の贈与税の税率は、「一般贈与財産」と「特例贈与財産」に区分されていますので、下記の様に区分して計算します
⑴ 一般贈与財産用の計算
(特例贈与財産以外の財産に係る贈与税の計算に適用します)
例題 贈与財産の価額が600万円の場合
基礎控除後の課税価格 | 600万円 - 110万円 = 490万円 |
贈与税額の計算 | 490万円 × 30% - 65万円 = 82万円 |
⑵ 特例贈与財産用の計算
[贈与により財産を取得した者(贈与を受けた年の1月1日において20歳以上)が直系尊属(父母や祖父母など)から贈与により取得した場合に、その取得した財産の贈与税の計算に適用します]
(注) 「20歳」とあるのは、令和4年4月1日以後の贈与については「18歳」となります
例題 贈与財産の価額が600万円の場合
基礎控除後の課税価格 | 600万円 - 110万円 = 490万円 |
贈与税額の計算 | 490万円 × 20% - 30万円 = 68万円 |
⑶ 一般贈与財産用と特例贈与財産用の両方ある場合の計算
例題 一般贈与財産が100万円、特例贈与財産が500万円の場合
( 計算方法)
① | すべての財産を一般税率で計算した税額に一般贈与財産の割合に応じた税額を計算します。 |
② | すべての財産を特例税率で計算した税額に特例贈与財産の割合に応じた税額を計算します。 |
③ | 贈与税額は、①と②の合計額です。 |
① (すべての贈与財産を「一般贈与財産」として税額計算)
基礎控除後の課税価格 | 600万円 - 110万円 = 490万円 |
贈与税額の計算(すべての贈与財産を「一般贈与財産」として税額計算) | 490万円 × 30% - 65万円 = 82万円 |
上記の税額のうち、一般贈与財産に対応する税額 | 82万円 × 100万円 / (100万円+500万円) = 13.6万円 |
② (すべての贈与財産を「特例贈与財産」として税額計算)
基礎控除後の課税価格 | 600万円 - 110万円 = 490万円 |
贈与税額の計算(すべての贈与財産を「特例贈与財産」として税額計算) | 490万円 × 20% - 30万円 = 68万円 |
上記の税額のうち、特例贈与財産に対応する税額 | 68万円 × 500万円 / (100万円 + 500万円) = 56.6万円 |
③ 贈与税額 = (➀一般贈与財産の税額 )+ (➁特例贈与財産の税額)
従いまして例題の贈与税額は ①13.6万円 + ②56.6万円 = 70.2万円となります。
(贈与税率)
現在の贈与税の税率は、「一般贈与財産」と「特例贈与財産」に区分されています。
<一般贈与財産用>(一般税率)
この速算表は、「特例贈与財産用」に該当しない場合の贈与税の計算に適用します。
基礎控除後の課税価格 | 200万円 以下 | 300万円 以下 | 400万円 以下 | 600万円 以下 | 1,000万円 以下 | 1,500万円 以下 | 3,000万円 以下 | 3,000万円 超 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
税 率 | 10% | 15% | 20% | 30% | 40% | 45% | 50% | 55% |
控除額 | ‐ | 10万円 | 25万円 | 65万円 | 125万円 | 175万円 | 250万円 | 400万円 |
<特例贈与財産用>(特例税率)
この速算表は、贈与を受けた年の1月1日において20歳以上の者が、直系尊属から贈与により取得した財産に係る贈与税の計算に適用します。
(注) 「20歳」とあるのは、令和4年4月1日以後の贈与については「18歳」となります。
基礎控除後の課税価格 | 200万円 以下 | 400万円 以下 | 600万円 以下 | 1,000万円 以下 | 1,500万円 以下 | 3,000万円 以下 | 4,500万円 以下 | 4,500万円 超 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
税 率 | 10% | 15% | 20% | 30% | 40% | 45% | 50% | 55% |
控除額 | ‐ | 10万円 | 30万円 | 90万円 | 190万円 | 265万円 | 415万円 | 640万円 |
2 相続時精算課税を選択した場合の贈与税の計算方法
贈与税額の計算
相続時精算課税の適用を受ける贈与財産については、その選択をした年以後、相続時精算課税に係る贈与者以外の者からの贈与財産と区分して、1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額を基に贈与税額を計算します。
➀ 特定贈与者(相続時精算課税に係る贈与者)からの財産に係る贈与税
その贈与税の額は、贈与財産の価額の合計額から、特別控除額2,500万円(ただし、前年以前において、既にこの特別控除額を控除している場合は、残額が限度額となります。)を控除した後の金額に、一律20パーセントの税率を乗じて算出します。
➁ 特定贈与者以外からの財産に係る贈与税
その贈与財産の価額の合計額から暦年課税の基礎控除額110万円を控除し、贈与税率を贈与乗じて税額を計算します。 計算の仕方については上記の暦年課税の計算方法を御参照下さい。
結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税
概 要
直系尊属(父母・祖父母など)から結婚や子育て資金に充てるために一括で贈与された資金について1,000万円まで贈与税が非課税になる制度です。
(条 件)
⑴ 非課税になる限度額は贈与を受ける受贈者1人あたり1,000万円です。
⑵ 贈与者は直系尊属(父母・祖父母など)であること。
⑶ 受贈者は18歳以上50歳未満であること。
⑷ 贈与が行われる前年の受贈者の所得が1,000万円を超えないこと。
(注) 管理契約の契約期間中に贈与者が死亡した場合や、資金管理契約が終了した場合には、それぞれ相続税または贈与税がかかることがあります。
直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税
概 要
令和8年3月31日までの間に、受贈者が、教育資金に充てるため、贈与者から贈与により取得した資金のうち1,500万円までの金額に相当する部分の価額については、取扱金融機関の営業所等を経由して教育資金非課税申告書の提出等をすることにより、受贈者の贈与税が非課税となる制度です。
(条 件)
⑴ 非課税になる限度額は贈与を受ける受贈者1人あたり1,500万円です。
⑵ 贈与者は直系尊属(父母・祖父母など)であること。
⑶ 受贈者は30歳未満であること。
⑷ 贈与が行われる前年の受贈者の所得が1,000万円を超えないこと。
(注) 教育資金管理契約の契約期間中に贈与者が死亡した場合や、教育資金管理契約が終了した場合には、それぞれ相続税または贈与税がかかることがあります。
直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
概 要
令和8年12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築等の対価に充てるための金銭を取得した場合において、下記の要件を満たすときは、次の非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となる制度です。
要 件
限度金額
⑴ 省エネ等住宅の場合 1000万円
⑵ それ以外の住宅の場合 500万円
(省エネ等住宅とは)
⑴ | 断熱等性能等級5以上 かつ一次エネルギー消費量等級6以上であること。 |
⑵ | 耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上または免震建築物であること。 |
⑶ | 高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上であること。 |
受贈者等に関する要件
⑴ 贈与者の直系卑属(子や孫)であること
⑵ 贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上であること
⑶ 贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であること(床面積が40㎡以上50㎡未満の場合には、1,000万円以下)
⑷ 贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住することまたは同日後遅滞なくその家屋に居住することが確実であると見込まれること。(贈与を受けた年の翌年12月31日までにその家屋に居住していないときは、この特例の適用を受けることはできません。)
⑸ 住宅を購入した相手が自己の配偶者や親族ではないこと
住宅に関する要件
⑴ 日本国内にある住宅であること
⑵ 床面積が40㎡以上240㎡以下で、その2分の1以上を受贈者の居住の用に供されるものであること
⑶ 中古住宅の場合は①と②に加えて築20年以内であること(鉄骨造や鉄筋コンクリート造のような耐火建築物は築25年以内です。)
⑷ 住宅の増改築にも適用があります(100万円以上の増改築に限ります)
申告等の方法
この特例の適用を受けるためには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、非課税の特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書に戸籍の謄本、新築や取得の契約書の写しなど一定の書類を添付して、納税地の所轄税務署に提出する必要があります。
親子間の土地の使用貸借
贈与税の課税
通常、親の土地に子供が建物を建てた場合に土地の賃借料、借地権の設定料は支払われません。 これを土地の使用貸借といいますが、これに対しての贈与税の課税は行われません。
相続税の課税
この土地が将来親から子供へと相続されるとき、この土地は相続財産として相続税の課税対象になりますが、その評価額は貸宅地としての評価ではなく、自用地として評価されます。
親子間の金銭貸借
贈与税の課税
親子間、親族間等の金銭貸借は、本当に金銭貸借である場合は、借入金は返済されるものとして贈与税の課税対象にはなりませんが、途中で返済しない場合又は返済期日の取り決めがない場合等で本当に返済されるのかどうか不明の場合は課税される可能性がありますので注意が必要です。 また利子が無利息である場合、贈与税の課税対象になる場合があります(国税庁HPには、”その利益相当額は、贈与として取り扱われる場合があります”とだけ記載されていて具体的に記載されていません)。
贈与税の課税を受けないためには、金銭消費貸借契約書を作成し、返済方法(現金ではなく、銀行口座を通して返済すること)、返済期限、返済金額等を記載し、そのとおり実行することが重要です。 返済する意思があって、実際に返済していることが重要です。
相続税の課税関係
借入金の返済期間中に相続が発生した場合、相続発生時点の貸付金残高が貸付金として相続税の課税対象になります。
夫婦間における居住用不動産等の贈与
概略
一定の要件のもと、夫婦間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、贈与税の計算をするときに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)の適用が受けれる制度です。 この場合には贈与税の基礎控除110万円も同時に適用を受けることが出来ます。
特例の適用を受けるための要件
番号 | 要 件 |
1 | 婚姻期間20年以上の夫婦の間の贈与であること |
2 | 配偶者から贈与された財産が、 居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭であること |
3 | 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した居住用不動産または贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に、贈与を受けた者が実際に住むこと |
4 | 贈与を受けた者がその後も引き続き住む見込みであること |
注1 | 居住用不動産とは、専ら居住の用に供する土地(土地の上に存する権利も含む)または家屋で国内にあるものをいいます |
注2 | 配偶者控除は同じ配偶者からの贈与については一生に一度しか適用されません |
負担付贈与
概要
負担付贈与とは、贈与者が財産を受贈者に贈与し、同時に一定の債務を負担させることを条件にした贈与をいいます。
課税価格
贈与された財産 | 課税価額 | |
1 | 土地や借地権など、及び家屋や構築物 | その贈与の時における通常の取引価額に相当する金額から負担額を控除した価額 |
2 | 1以外の財産 | その財産の相続税評価額から負担額を控除した価額となります |
(注1) 受贈者が負担する債務は、贈与者に対するものばかりでなく、第三者に対するものでも可能ですので、その結果、負担額の引き受けが第三者の利益に帰すときは、その第三者は負担額に相当する金額を贈与により取得したことになります。
(注2) 贈与者は、負担額でその贈与財産を譲渡したことになり、所得税の課税対象となります。
普通の贈与との違い
負担付贈与でも、普通の贈与と同じく、一定額を超えると贈与税が課税されます。
贈与税の計算方法は、土地や借地権など、及び家屋や構築物の贈与の場合では、評価額が異なり、負担付贈与の方が税額が高くなります。
贈与の種類 | 評価額 |
普通の贈与 | 相続税評価額 |
負担付贈与 | 通常の取引価額に相当する金額(時価) |
みなし贈与等
みなし贈与等の意義
一般的に贈与税は贈与者及び受贈者に贈与の意思があって課税されます。 しかしながら、実態が贈与と同じような場合に、贈与者及び受贈者に贈与の意思がなければ贈与税を課税できないとするならば、課税の公平を保つことが出来ません。 この「不合理」を補うために、実質的に対価を支払わないで経済的利益を受けた場合においては、贈与契約の有無にかかわらず当該経済的利益を贈与により取得したものとみなして、贈与税が課税されています。
相続税法第7条のみなし贈与等の規定
(贈与又は遺贈により取得したものとみなす場合)
区分 | 内 容 |
原則 | 著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合においては、当該財産の譲渡があつた時において、当該財産の譲渡を受けた者が、当該対価と当該譲渡があつた時における当該財産の時価(当該財産の評価について第三章に特別の定めがある場合には、その規定により評価した価額)との差額に相当する金額を当該財産を譲渡した者から贈与(当該財産の譲渡が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなして、課税されます。 |
例外 | 当該財産の譲渡が、その譲渡を受ける者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、その者の扶養義務者から当該債務の弁済に充てるためになされたものであるときは、その贈与又は遺贈により取得したものとみなされた金額のうちその債務を弁済することが困難である部分の金額については、この限りでない。 |
著しく低い価額の対価とは
所得税法59条に著しく低い価額の対価として政令で定める額(時価の1/2未満)の規定がありますが、相続税法等に規定はありません。 以前は相続税法等にも同様の規定がありましたが、このような画一的基準によって、明らかに贈与する意思で贈与した場合でも、時価の1/2以上であることによって、課税できないという不公平が生じていました。 これを是正するため、著しく低い価額の対価の判断は個々の具体的事案に基づき判断する必要があるという結論になり、今日に至りました。 したがいまして時価以下で売買することは慎重に考える必要があります。
相続税法第9条のみなし贈与等の規定
区分 | 内 容 |
原則 | 相続税法第五条から八条まで及び次節に規定する場合を除くほか、①対価を支払わないで、又は➁著しく低い価額の対価で➂利益を受けた場合においては、当該利益を受けた時において、当該利益を受けた者が、当該利益を受けた時における当該利益の価額に相当する金額(対価の支払があつた場合には、その価額を控除した金額)を当該利益を受けさせた者から贈与(当該行為が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみしまなす。 |
例外 | ただし、当該行為が、当該利益を受ける者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、その者の扶養義務者から当該債務の弁済に充てるためになされたものであるときは、その贈与又は遺贈により取得したものとみなされた金額のうちその債務を弁済することが困難である部分の金額については、この限りではありません。 |
*[利益を受けた]の意義とは、おおむね利益を受けた者の財産の増加又は債務の減少があった場合等(労務の提供等を受けたような場合を除く)
主な具体的事例(相続税基本通達より)
区 分 | 内 容 |
株式又は出資の価額が増加した場合 | (原則) 同族会社(法人税法(昭和40年法律第34号)第2条第10号に規定する同族会社をいう。以下同じ。)の株式又は出資の価額が、例えば、次に掲げる場合に該当して増加したときにおいては、その株主又は社員が当該株式又は出資の価額のうち増加した部分に相当する金額を、それぞれ次に掲げる者から贈与によって取得したものとして取り扱うものとする。この場合における贈与による財産の取得の時期は、財産の提供があった時、債務の免除があった時又は財産の譲渡があった時によるものとする。(昭57直資7-177改正、平15課資2-1改正) (1) 会社に対し無償で財産の提供があった場合 当該財産を提供した者 (2) 時価より著しく低い価額で現物出資があった場合 当該現物出資をした者 (3) 対価を受けないで会社の債務の免除、引受け又は弁済があった場合 当該債務の免除、引受け又は弁済をした者 (4) 会社に対し時価より著しく低い価額の対価で財産の譲渡をした場合 当該財産の譲渡をした者 (例外) 同族会社の取締役、業務を執行する社員その他の者が、その会社が資力を喪失した場合において9-2の(1)から(4)までに掲げる行為をしたときは、それらの行為によりその会社が受けた利益に相当する金額のうち、その会社の債務超過額に相当する部分の金額については、9-2にかかわらず、贈与によって取得したものとして取り扱わないものとする。 なお、会社が資力を喪失した場合とは、法令に基づく会社更生、再生計画認可の決定、会社の整理等の法定手続による整理のほか、株主総会の決議、債権者集会の協議等により再建整備のために負債整理に入ったような場合をいうのであって、単に一時的に債務超過となっている場合は、これに該当しないのであるから留意する。 |
同族会社の募集株式引受権 | 同族会社が新株の発行(当該同族会社の有する自己株式の処分を含む。以下9-7までにおいて同じ。)をする場合において、当該新株に係る引受権(以下9-5までにおいて「募集株式引受権」という。)の全部又は一部が会社法(平成17年法律第86号)第206条各号((募集株式の引受け))に掲げる者(当該同族会社の株主の親族等(親族その他法施行令第31条に定める特別の関係がある者をいう。以下同じ。)に限る。)に与えられ、当該募集株式引受権に基づき新株を取得したときは、原則として、当該株主の親族等が、当該募集株式引受権を当該株主から贈与によって取得したものとして取り扱うものとする。ただし、当該募集株式引受権が給与所得又は退職所得として所得税の課税対象となる場合を除くものとする。 |
同族会社の新株の発行に伴う失権株に係る新株の発行が行われなかった場合 | 同族会社の新株の発行に際し、会社法第202条第1項((株主に株式の割当てを受ける権利を与える場合))の規定により株式の割当てを受ける権利(以下9-7において「株式割当権」という。)を与えられた者が株式割当権の全部若しくは一部について同法第204条第4項((募集株式の割当て))に規定する申込みをしなかった場合又は当該申込みにより同法第206条第1号に規定する募集株式の引受人となった者が同法第208条第3項((出資の履行))に規定する出資の履行をしなかった場合において、当該申込み又は出資の履行をしなかった新株(以下「失権株」という。)に係る新株の発行が行われなかったことにより結果的に新株発行割合(新株の発行前の当該同族会社の発行済株式の総数(当該同族会社の有する自己株式の数を除く。以下9-7において同じ。)に対する新株の発行により出資の履行があった新株の総数の割合をいう。以下9-7において同じ。)を超えた割合で新株を取得した者があるときは、その者のうち失権株主(新株の全部の取得をしなかった者及び結果的に新株発行割合に満たない割合で新株を取得した者をいう。以下9-7において同じ。)の親族等については、当該失権株の発行が行われなかったことにより受けた利益の総額のうち、次の算式により計算した金額に相当する利益をその者の親族等である失権株主のそれぞれから贈与によって取得したものとして取り扱うものとする |
婚姻の取消し又は離婚により財産の取得があった場合 | 婚姻の取消し又は離婚による財産の分与によって取得した財産(民法第768条((財産分与))、第771条((協議上の離婚の規定の準用))及び第749条((離婚の規定の準用))参照)については、贈与により取得した財産とはならないのであるから留意する。ただし、その分与に係る財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮してもなお過当であると認められる場合における当該過当である部分又は離婚を手段として贈与税若しくは相続税のほ脱を図ると認められる場合における当該離婚により取得した財産の価額は、贈与によって取得した財産となるのであるから留意する |
財産の名義変更があった場合 | 不動産、株式等の名義の変更があった場合において対価の授受が行われていないとき又は他の者の名義で新たに不動産、株式等を取得した場合においては、これらの行為は、原則として贈与として取り扱うものとする |
無利子の金銭貸与等 | 夫と妻、親と子、祖父母と孫等特殊の関係がある者相互間で、無利子の金銭の貸与等があった場合には、それが事実上贈与であるのにかかわらず貸与の形式をとったものであるかどうかについて念査を要するのであるが、これらの特殊関係のある者間において、無償又は無利子で土地、家屋、金銭等の貸与があった場合には、法第9条に規定する利益を受けた場合に該当するものとして取り扱うものとする。ただし、その利益を受ける金額が少額である場合又は課税上弊害がないと認められる場合には、強いてこの取扱いをしなくても妨げないものとする |
負担付贈与等 | 負担付贈与又は負担付遺贈があった場合において当該負担額が第三者の利益に帰すときは、当該第三者が、当該負担額に相当する金額を、贈与又は遺贈によって取得したこととなるのであるから留意する。この場合において、当該負担が停止条件付のものであるときは、当該条件が成就した時に当該負担額相当額を贈与又は遺贈によって取得したことになるのであるから留意する |
共有持分の放棄 | 共有に属する財産の共有者の1人が、その持分を放棄(相続の放棄を除く。)したとき、又は死亡した場合においてその者の相続人がないときは、その者に係る持分は、他の共有者がその持分に応じ贈与又は遺贈により取得したものとして取り扱うものとする |
信託が合意等により終了した場合 | 法第9条の3第1項に規定する受益者連続型信託(以下「受益者連続型信託」という。)以外の信託(令第1条の6に規定する信託を除く。以下同じ。)で、当該信託に関する収益受益権(信託に関する権利のうち信託財産の管理及び運用によって生ずる利益を受ける権利をいう。以下同じ。)を有する者(以下「収益受益者」という。)と当該信託に関する元本受益権(信託に関する権利のうち信託財産自体を受ける権利をいう。以下同じ。)を有する者(以下「元本受益者」という。)とが異なるもの(以下9の3-1において「受益権が複層化された信託」という。)が、信託法(平成18年法律第108号。以下「信託法」という。)第164条((委託者及び受益者の合意等による信託の終了))の規定により終了した場合には、原則として、当該元本受益者が、当該終了直前に当該収益受益者が有していた当該収益受益権の価額に相当する利益を当該収益受益者から贈与によって取得したものとして取り扱うものとする |
配偶者居住権が合意等により消滅した場合 | 配偶者居住権が、被相続人から配偶者居住権を取得した配偶者と当該配偶者居住権の目的となっている建物の所有者との間の合意若しくは当該配偶者による配偶者居住権の放棄により消滅した場合又は民法第1032条第4項((建物所有者による消滅の意思表示))の規定により消滅した場合において、当該建物の所有者又は当該建物の敷地の用に供される土地(土地の上に存する権利を含む。)の所有者(以下9―13の2において「建物等所有者」という。)が、対価を支払わなかったとき、又は著しく低い価額の対価を支払ったときは、原則として、当該建物等所有者が、その消滅直前に、当該配偶者が有していた当該配偶者居住権の価額に相当する利益又は当該土地を当該配偶者居住権に基づき使用する権利の価額に相当する利益に相当する金額(対価の支払があった場合には、その価額を控除した金額)を、当該配偶者から贈与によって取得したものとして取り扱うものとする。(令元課資2-10追加) (注) 民法第1036条((使用貸借及び賃貸借の規定の準用))において準用する同法第597条第1項及び第3項((期間満了及び借主の死亡による使用貸借の終了))並びに第616条の2((賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了))の規定により配偶者居住権が消滅した場合には、上記の取り扱いはないことに留意する。 |
相続時精算課税
制度の概要
1 制度の概要
相続時精算課税の制度とは、原則てして60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の子または孫(贈与者の直系卑属)に対し、財産を贈与した場合において、その贈与によって財産を取得した者は、贈与に係る財産について相続時精算課税の規定の適用を受けることができる贈与税の制度です。 この制度を選択する場合には、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日(贈与税の申告期限)の間に一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要があります。
2 暦年課税との関係
なお、この制度を選択すると、その選択に係る贈与者から贈与を受ける財産については、その選択をした年分以降すべてこの制度が適用され、暦年課税へ変更することはできません。
3 受贈者と贈与者の選択
相続時精算課税は、受贈者(子または孫)が贈与者(父母または祖父母)ごとに選択できます。
4 贈与者の死亡による相続財産への加算
また、この制度の贈与者である父母または祖父母が亡くなった時の相続税の計算上、相続財産の価額にこの制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の時価)を加算して相続税額を計算します。
上記のように、相続時精算課税の制度は、贈与税・相続税を関係づけて課税が行われる制度です。
(注意事項)
(注1) | 「20歳」とあるのは、令和4年4月1日以後の贈与については「18歳」となります。 |
(注2) | 暦年課税とは、まず、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与によりもらった全ての財産の価額を合計し、続いて、その合計額から基礎控除額110万円控除し、そして次に、その控除後の金額(千円未満切り捨)に贈与税率を乗じて税額を計算する制度です |
(注3) | (注3)相続時精算課税に係る贈与税額を計算する際には、暦年課税の基礎控除額110万円を控除することはできませんので、贈与を受けた財産が110万円以下であっても贈与税の申告をする必要があります。 (注4)のように改正されました |
(注4) 2023年度の相続時精算課税に関する重要な税制改正 | 年110万円の基礎控除の創設 相続時精算課税制度に年110万円の基礎控除が創設されました。 相続時精算課税制度の適用を受けた贈与については、その財産の全額が相続財産への持ち戻し対象となっていましたが、今回の改正後では年110万円以下の部分については加算する必要がなくなりました。 申告不要制度 相続時精算課税制度の選択をすると、その贈与者からの贈与を受けた年は贈与税申告をしなければなりませんでしたが、110円以下であれば贈与税申告も不要となりました。 (改正後の相続時精算課税制度が適用されるのは、令和6年1月1日以降に行われる贈与によって取得する財産に係る相続税又は贈与税です。) |
適用対象者
贈与者
贈与をした年の1月1日において60歳以上の父母または祖父母
受贈者
贈与を受けた年の1月1日において20歳以上の者のうち、贈与者の直系卑属(子や孫)である推定相続人または孫とされています。
なお、贈与により「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例(措法70の7の5)」の適用に係る非上場株式等を取得する場合、贈与者が贈与をした年の1月1日において60歳以上であれば、受贈者が贈与者の直系卑属(子や孫)である推定相続人以外の者(贈与を受けた年の1月1日において20歳(注)以上の者に限ります。)でも適用できます。
また、贈与により「個人の事業用資産についての贈与税の納税猶予及び免除(措法70の6の8)」の適用に係る事業用資産を取得する場合、贈与者が贈与をした年の1月1日において60歳以上であれば、受贈者が贈与者の直系卑属(子や孫)である推定相続人以外の者(贈与を受けた年の1月1日において20歳(注)以上の者に限ります。)でも適用できます。
(注) 「20歳」とあるのは、令和4年4月1日以後の贈与については「18歳」となります。
適用対象財産等
全ての贈与財産が対象になり、種類、金額、回数に制限はありません。
税額の計算方法
(1)贈与税額の計算
相続時精算課税の適用を受ける贈与財産については、その選択をした年以後、相続時精算課税に係る贈与者以外の者からの贈与財産と区分して、1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額を基に贈与税額を計算します。
区 分 | 税 額 |
➀ 特定贈与者(相続時精算課税に係る贈与者)からの財産に係る贈与税 | 贈与財産の価額の合計額から、特別控除額2,500万円(ただし、前年以前において、既にこの特別控除額を控除している場合は、残額が限度額となります。)を控除した後の金額に、一律20パーセントの税率を乗じて算出します。 |
➁ 特定贈与者以外からの財産に係る贈与税 | その贈与財産の価額の合計額から暦年課税の基礎控除額110万円を控除し、贈与税率を贈与乗じて税額を計算します。 |
尚具体的な計算方法は当HPの贈与税の計算方法を御参照下さい。
(贈与税率)
現在の贈与税の税率は、次のとおり、「一般贈与財産」と「特例贈与財産」に区分されています。
<一般贈与財産用>(一般税率)
この速算表は、「特例贈与財産用」に該当しない場合の贈与税の計算に適用します。
基礎控除後の課税価格 | 200万円 以下 | 300万円 以下 | 400万円 以下 | 600万円 以下 | 1,000万円 以下 | 1,500万円 以下 | 3,000万円 以下 | 3,000万円 超 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
税 率 | 10% | 15% | 20% | 30% | 40% | 45% | 50% | 55% |
控除額 | ‐ | 10万円 | 25万円 | 65万円 | 125万円 | 175万円 | 250万円 | 400万円 |
<特例贈与財産用>(特例税率)
この速算表は、贈与を受けた年の1月1日において20歳以上の者が、直系尊属から贈与により取得した財産に係る贈与税の計算に適用します。
(注) 「20歳」とあるのは、令和4年4月1日以後の贈与については「18歳」となります。
基礎控除後の課税価格 | 200万円 以下 | 400万円 以下 | 600万円 以下 | 1,000万円 以下 | 1,500万円 以下 | 3,000万円 以下 | 4,500万円 以下 | 4,500万円 超 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
税 率 | 10% | 15% | 20% | 30% | 40% | 45% | 50% | 55% |
控除額 | ‐ | 10万円 | 30万円 | 90万円 | 190万円 | 265万円 | 415万円 | 640万円 |
(2)相続税額の計算
相続時精算課税を選択した者に係る相続税額は、相続時精算課税に係る贈与者が亡くなった時に、それまでに贈与を受けた相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の価額(贈与時の価額)と相続や遺贈により取得した財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納めた相続時精算課税に係る贈与税相当額を控除して算出します。
その際、相続税額から控除しきれない相続時精算課税に係る贈与税相当額については、相続税の申告をすることにより還付を受けることができます。
手続き
申告等の方法
相続時精算課税を選択しようとする贈与を受けた者(子または孫)は、その選択に係る最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間(贈与税の申告書の提出期間)に納税地の所轄税務署長に対して相続時精算課税選択届出書を受贈者の戸籍の謄本などの所定の書類とともに贈与税の申告書に添付して提出することとされています。
申告先等
所轄税務署
2023年度の相続時精算課税に関する重要な税制改正
相続時精算課税に関する改正は、納税者にとっては暦年贈与に対する課税強化とは対照的に、下記のような有利な改正になりました。(改正後の相続時精算課税制度が適用されるのは、令和6年1月1日以降に行われる贈与によって取得する財産に係る相続税又は贈与税です。)
年110万円の基礎控除の創設
相続時精算課税制度に年110万円の基礎控除が創設されました。 相続時精算課税制度の適用を受けた贈与については、その財産の全額が相続財産への持ち戻し対象となっていましたが、今回の改正後では年110万円以下の部分については加算する必要がなくなりました。
申告不要制度
相続時精算課税制度の選択をすると、その贈与者からの贈与を受けた年は贈与税申告をしなければなりませんでしたが、110円以下であれば贈与税申告も不要となりました。