相続 相続対策

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相続税を少なくする方法

一般的に相続財産を減らすことなく相続税を少なくする方法及び相続財産を子、孫に贈与することによって相続税を少なくする方法は、下記の様に存在しますので、それぞれの状況に応じて参考にして下さい。

1相続財産を減らすことなく財産の評価を下げることにより相続税を少なくする方法

⑴ 土地を現金預金で取得する

 現金預金で土地を取得することで、土地が増え、現金預金が減少しますが、財産の総額の変動はありません。しかしながら評価方法の違いにより土地の相続税の評価は財産評価基本通達により評価することになっていますので、一般的に下記の様に時価と比較した場合に、時価の約60%~80%になる場合が有ります。

土地の状況詳細評価額
➀更地 相続税評価額(約時価の80%以下)
➁貸宅地宅地を賃貸している場合相続税評価額×(1-借地権割合)
➂貸家建付地土地の上に建物を建て賃貸している状況相続税評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
➃小規模宅地等の特例自分の居住用家屋の敷地等で一定のもの(特定居住用宅地等)相続税評価額-相続税評価額×減額割合
注1 ➁➂の場合で使用貸借に該当する場合はの場合は➀の更地の評価になります  

原則として不小規模宅地等の特例は故人と同居していた親族ではないと適用されませんが、特例として故人と同居していなかった親族でも一定の要件を満たせば小規模宅地等の特例が適用され、土地の評価額を減額することができます。

用語の説明
借地権割合路線価表に記載されています
借家権割合財産評価基本通達によって一律に定められています
賃貸割合課税時期において賃貸されている各独立部分の床面積の合計/その貸家の各独立部分の床面積の合計
注1賃貸割合を計算する場合に、一時的空室部分(一時的に空室になった部屋)について「継続的に賃貸されてきたもので、課税時期において、一時的に賃貸されていなかったと認められる各独立部分がある場合には、その各独立部分の床面積を、賃貸されている各独立部分の床面積に加えて賃貸割合を計算して差し支えありません。」と評価通達に規定されていますので評価減の対象になります。 但し空室の期間等により一時的空室部分に認められない場合もありますので注意が必要です。
注2 「継続的に賃貸されてきたもので、課税時期において、一時的に賃貸されていなかったと認められる」部分の範囲
アパート等の一部に空室がある場合の一時的な空室部分が、「継続的に賃貸されてきたもので、課税時期において、一時的に賃貸されていなかったと認められる」部分に該当するかどうかは、その部分が、下記基準に照らして該当するかどうかのかどうかの判断をします。
①各独立部分が課税時期前に継続的に賃貸されてきたものかどうか、
②賃借人の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われたかどうか、
③空室の期間、他の用途に供されていないかどうか
➃空室の期間が課税時期の前後の例えば1ケ月程度であるなど一時的な期間であったかどうか、
➄課税時期後の賃貸が一時的なものではないかどうかなどの事実関係から総合的に判断します。 
小規模宅地等の特例の内容は下記の通りです。
宅地の利用区分限度面積減額割合
特定居住用宅地等である小規模宅地等330㎡80%
特定事業用宅地等である小規模宅地等400㎡80%
特定同族会社事業用宅地等である小規模宅地等400㎡80%
貸付事業用宅地等である小規模宅地等200㎡50%

小規模宅地等の特例の適用要件の詳細は当HP土地の評価をご確認ください

⑵ 建物を現金預金で取得する

建物の状況詳細評価額
➀自用家屋 約時価の60% (固定資産税の評価額×1.0)
➁貸家建物を賃貸している状況約時価の60%以下 [固定資産税の評価額×1.0×(1-借家権割合×賃貸割合)]
注1 ➁の場合で使用貸借に該当する場合の場合は➀自用家屋の評価になります
注2 建築中の家屋は費用現価×70%
  

⑶ 上記⑴⑵の場合に注意すべき点

土地、建物を借入金で取得した場合において、その行為が相続発生直前に行われたときの評価額が不動産鑑定評価額になった判例も有ります。 したがいまして単に相続税を減らす目的だけでなく、収益を目的とした不動産投資等を相続発生以前から相当長期に渡り行うことをお勧め致します。

⑷ 非課税財産の購入

墓地、仏壇、仏具及び祭具の購入した場合、現金等は減少しますが、非課税財産は増加し、その結果財産の増減はゼロですが非課税財産分だけ課税価額は減少します。

ただし、仏具及び祭具等で、骨董品、投機の対象となるもの(金製品等)は非課税になりません。

⑸ 生命保険金等の非課税枠を利用する

相続税においては、みなし相続財産である生命保険には非課税枠があります。 現金で生命保険に加入した場合に受け取る保険金から非課税部分だけ課税価額が低くなります。

非課税枠 = (500万円×法定相続人の数)

⑹ 相続時精算課税制度の利用により将来値上がりすると見込まれる資産を贈与する

相続時精算課税とは、一定の条件のもと親から子や孫に資産を贈与した場合に、相続時精算課税制度を利用することにより、贈与時点で、贈与財産の価額の合計額から、特別控除額2,500万円(ただし、前年以前において、既にこの特別控除額を控除している場合は、残額が限度額となります。)を控除した後の金額に、一律20パーセントの税率を乗じて算出します。 将来相続が発生した時に当該贈与財産を相続財産に加算し、相続税額を計算し、そこからその贈与税を差し引くという制度です。 この場合、相続財産への加算は贈与時の評価額で行われますので、贈与時から相続発生までの評価益に対しては課税されないことになりますが、逆に値下がりした場合は評価減部分だけ余分に課税されることになります。 従って個別資産の選択は慎重に行う必要があり、また一度この制度を適用すると暦年贈与課税には戻れませんので注意が必要です。 具体的には下記のような資産が該当すると思われますが、絶対値上がりするという保証は有りませんのでその点ご理解願います。

インフレ時の金
業績の良い非上場の自社株式
業績の良い上場株式

⑺ 養子縁組より法定相続人を増やす

養子縁組の影響

養子縁組をおこなうことによって法定相続人の数が増えますので、下記のように基礎控除額及び非課税枠が増え、相続税を少なくすることができます。

区  分金  額
相続税の基礎控除額3000万円+600万円 × 法定相続人の数
生命保険金等の非課税枠の金額500万円 ×  法定相続人の数 
死亡退職金等の非課税枠の金額500万円 ×  法定相続人の数 
相続税の総額の計算一人当たりの相続分が減少することで、税率が下がる
養子の数

相続税法上で、法定相続人の数として認められる養子の人数には制限があります。 養子の数は実子がいる場合といない場合により下記のように区分され制限されています。

区  分人  数
実子がいる場合一人まで
実子がいない場合二人まで

⑻ 事業承継税制

 法人版事業承継税制は、後継者である受贈者・相続人等が、円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合において、その非上場株式等に係る贈与税・相続税について、一定の要件のもと、その納税を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納付が免除される制度です。
 なお、法人版事業承継税制の適用に当たっては、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」に基づく認定等が必要となりますが、認定等に係る申請書・報告書の提出に関する窓口・お問い合わせ先は、都道府県の担当課となります。 

順調に進めば非常にメリットがある制度ですが同時にデメリットも多数存在しますので慎重に行うことをお勧めいたします。

この制度が適用される条件

要件項目要  件
先代経営者①会社の代表取締役を経験したことがあること
②贈与(又は相続)の直前に会社の筆頭株主であったこと
③贈与後において代表取締役ではないこと
後継者①贈与を受ける時に会社の代表取締役になっていること
②贈与(又は相続)を受けることにより、会社の筆頭株主になること
③贈与で事業承継税制を受ける場合には、贈与前に3年間継続してその会社の役員であること
➃相続発生時には役員でなければいけません
会社会社が中小企業者に該当すること(中小企業者の規定は中小企業庁HP参照ください)
継続条件①後継者が5年間社長であり続けること
②株主であり続けること
③雇用の8割を守ること
➃5年間継続届出書等の書類を提出し続け、その後3年ごとに書類を提出し続けること(失念すると猶予が打ち切りになる)
免除の条件①後継者が、次の代に事業承継すること
②後継者が次の代に事業承継する前に、後継者が死亡してしまった場合には、猶予されていた税金は全額免除になります

(デメリット) 

⑴ 承認手続が非常に煩雑であるし、以後の手続きも同じく非常に煩雑である

⑵ 状況次第(単純に廃業の場合、手続きの失念等)で納税猶予が打ち切られる。 この場合本来の税金に加算税が付加される。

⑶ 打ち切り事由に該当した場合は、納税猶予が打ち切られる。 この場合本来の税金に加算税が付加される 

2 資産を減らして相続税を少なくする方法

⑴ 毎年相続人に贈与する 

非課税枠(110万)を利用し相続人に贈与することで贈与税を払わずに相続財産を減らすことが出来ます。 また相続税率と贈与税率を比較して、贈与税率が低い場合は非課税枠(110万)を超えても毎年相続人に贈与することによって、贈与税は支払いますが、相続税を少なくすることが出来ますので税率の差額分だけ税負担を減らすことが出来ます。 この場合に、毎年同じ金額(110万円)を贈与し続けると、最初の年に総額を贈与したものとして課税される恐れがありますので時期、金額を変えることをお勧めいたします。

相続税の税率

法定相続分に応ずる取得金額税 率控 除 額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

一般の贈与税率

基礎控除後の課税価格200万円
以下
300万円
以下
400万円
以下
600万円
以下
1,000万円
以下
1,500万円
以下
3,000万円
以下
3,000万円
税 率10%15%20%30%40%45%50%55%
控除額10万円25万円65万円125万円175万円250万円400万円

特例贈与財産用(特例税率)

この速算表は、贈与を受けた年の1月1日において20歳以上の者が、直系尊属から贈与により取得した財産に係る贈与税の計算に適用します。

(注) 「20歳」とあるのは、令和4年4月1日以後の贈与については「18歳」となります。

基礎控除後の課税価格200万円
以下
400万円
以下
600万円
以下
1,000万円
以下
1,500万円
以下
3,000万円
以下
4,500万円
以下
4,500万円
税 率10%15%20%30%40%45%50%55%
控除額10万円30万円90万円190万円265万円415万円640万円

⑵ 居住用不動産等の配偶者への贈与

「居住用不動産贈与時の配偶者控除の特例」を利用して、居住用の不動産、もしくはその不動産の購入資金の贈与ができます。 この場合通常の控除(110万円)と2000万円の合計(2110万円)を贈与した資産の評価額から控除して贈与税を計算します。 なおこの特例を適用するには下記の条件を満たしていることが必要です。

(条  件)

夫婦の婚姻期間が20年以上
贈与財産が、国内の居住用不動産または居住用不動産の取得資金であること
贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与された又は取得した不動産に居住し、その後も居住する見込みであること
一定の書類を添付して贈与税の申告を行うこと
前年以前に同じ配偶者からこの特例を受けていないこと。

⑶ 相続人が相続や遺贈により取得した相続財産を国等へ贈与した場合

相続や遺贈によって取得した財産を、相続税の申告期限までに、国、地方公共団体、公益を目的とする事業を行う特定の法人または認定非営利活動法人(認定NPO法人)に寄附した場合や特定の公益信託の信託財産とするために支出した場合は、その寄附をした財産や支出した金銭は相続税の対象としない特例があります。

寄 付 先条  件
国、地方公共団体または公益を目的とする事業を行う特定の法人に寄附した場合⑴ その取得した財産を相続税の申告書の提出期限までに寄附すること。
⑵ 寄附した先が国、地方公共団体、教育や科学の振興などに貢献することが著しいと認められる公益を目的とする事業を行う特定の法人(以下「特定の公益法人」といいます。)であること。
(注)特定の公益法人の範囲は独立行政法人や社会福祉法人などに限定されており、寄附の時点で既に設立されているものでなければなりません。
特定の公益信託の信託財産とするために支出をした場合⑴ 支出した金銭は相続や遺贈で取得したものであること(相続や遺贈で取得したとみなされる生命保険金や退職手当金も含まれます)。
⑵ その金銭を相続税の申告書の提出期限までに支出すること。
⑶ その受託者が信託会社(金融機関の信託業務の兼営等に関する法律により同法第1条第1項に規定する信託業務を営む同項に規定する金融機関を含みます。)であり、その公益信託が、教育や科学の振興などに貢献することが著しいと認められるなど一定のものであること。
認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)に寄附した場合⑴ 寄附した財産には、相続や遺贈で取得したとみなされる生命保険金や退職手当金も含まれます。
⑵ 取得した財産を相続税の申告書の提出期限までに寄附すること。
⑶ その認定NPO法人が行う特定非営利活動促進法第2条第1項に規定する特定非営利活動に係る事業に関連する寄附をすること。
(注)認定NPO法人とは、特定非営利活動促進法第2条第2項に規定する特定非営利活動法人のうち、一定の基準を満たすものとして所轄庁(都道府県知事または指定都市の長)の認定を受けたものをいいます。
注意事項詳 細
この特例の適用除外⑴ 寄附を受けた日から2年を経過した日までに特定の公益法人、認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)または特定の公益信託に該当しなくなった場合や特定の公益法人または認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)がその財産を公益を目的とする事業の用または特定非営利活動に係る事業の用に使っていない場合
⑵ 寄附または支出した人あるいは寄附または支出した人の親族などの相続税または贈与税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合
例えば、財産を寄附した人または寄附した人の親族などが、寄附を受けた特定の公益法人などを利用して特別の利益を受けている場合は、これに該当することになります。
手続き相続税の申告書にこれらの特例の適用を受けようとする旨を記載し、かつ、その適用を受ける寄附または支出をした財産の明細書その他一定の書類を添付して申告する必要があります。

⑷ 直系尊属から結婚・子育て資金を一括贈与をした場合

令和5年3月31日までの間に、結婚・子育て資金管理契約を締結する日において18歳(注1)以上50歳未満の方(以下「受贈者」といいます。)が、結婚・子育て資金に充てるため、金融機関等とのその結婚・子育て資金管理契約に基づき、受贈者の直系尊属(父母や祖父母など。以下「贈与者」といいます。)から信託受益権を付与された場合、書面による贈与により取得した金銭を銀行等に預入をした場合または書面による贈与により取得した金銭等で証券会社等で有価証券を購入した場合には、信託受益権または金銭等の価額のうち1,000万円までの金額に相当する部分の価額については、取扱金融機関の営業所等を経由して結婚・子育て資金非課税申告書を提出することにより贈与税が非課税となります(注2)。

(注1) 「18歳」とあるのは、令和4年3月31日以前の信託受益権または金銭等の取得については「20歳」となります。
(注2) 信託受益権または金銭等を取得した日の属する年の前年分の所得税に係る合計所得金額が1,000万円を超える場合には、この非課税制度の適用を受けることができません(平成31年4月1日以後に取得する信託受託権または金銭等に係る贈与税について適用されます。)。
(契約期間中に贈与者が死亡した場合)

契約期間中に贈与者が死亡した場合には、死亡日における非課税拠出額(注2)から結婚・子育て資金支出額(注3)(結婚に際して支払う金銭については、300万円を限度とします。)を控除した残額(以下「管理残額」(注4)といいます。)を、贈与者から相続等により取得したこととされます(注5)。

(注2) 「非課税拠出額」とは、結婚・子育て資金非課税申告書または追加結婚・子育て資金非課税申告書にこの制度の適用を受けるものとして記載された金額の合計額(1,000万円を限度とします。)をいいます。
(注3) 「結婚・子育て資金支出額」とは、取扱金融機関の営業所等において、結婚・子育て資金の支払の事実を証する書類(領収書等)により結婚・子育て資金の支払の事実が確認され、かつ、記録された金額の合計額をいいます。
(注4) 贈与者の死亡日における管理残額は、取扱金融機関の営業所等でご確認ください。
(注5) 令和3年4月1日以後にその贈与者から取得をした信託受益権または金銭等がある場合には、その取得分に対応する管理残額に相当する相続税額について、相続税額の2割加算の規定が適用されます。

⑸ 直系尊属から教育資金を一括贈与した場合

令和5年3月31日までの間に、教育資金管理契約を締結する日において30歳未満の方(以下「受贈者」といいます。)が、教育資金に充てるため、金融機関等とのその教育資金管理契約に基づき、受贈者の直系尊属(父母や祖父母など。以下「贈与者」といいます。)から信託受益権を取得した場合、書面による贈与により取得した金銭を銀行等に預入をした場合または書面による贈与により取得した金銭等で証券会社等で有価証券を購入した場合には、その信託受益権または金銭等の価額のうち1,500万円までの金額に相当する部分の価額については、取扱金融機関の営業所等を経由して教育資金非課税申告書を提出することにより、受贈者の贈与税が非課税となります(注1)。

(注1)信託受益権または金銭等を取得した日の属する年の前年分の受贈者の所得税に係る合計所得金額が1,000万円を超える場合には、この非課税制度の適用を受けることができません (平成31年4月1日以後に取得する信託受益権または金銭等に係る贈与税について適用されます。)。

(契約期間中に贈与者が死亡した場合)

詳細は国税庁へ

(山口県下関市 角島)

相続時精算課税の選択

制度の概要

1 相続時精算課税の制度とは、原則てして60歳以上の父母または祖父母から、20歳(注1)以上の子または孫(贈与者の直系卑属)に対し、財産を贈与した場合において、その贈与によって財産を取得した者は、贈与に係る財産について相続時精算課税の規定の適用を受けることができる贈与税の制度です。 この制度を選択する場合には、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日(贈与税の申告期限)の間に一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要があります。

2 なお、この制度を選択すると、その選択に係る贈与者から贈与を受ける財産については、その選択をした年分以降すべてこの制度が適用され、暦年課税へ変更することはできません。

3 相続時精算課税は、受贈者(子または孫)が贈与者(父母または祖父母)ごとに選択できます。

4 また、この制度の贈与者である父母または祖父母が亡くなった時の相続税の計算上、相続財産の価額にこの制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の時価)を加算して相続税額を計算します。

上記のように、相続時精算課税の制度は、贈与税・相続税を関係づけて課税が行われる制度です。

(注1) 「20歳」とあるのは、令和4年4月1日以後の贈与については「18歳」となります。

(注2) 暦年課税とは、まず、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与によりもらった全ての財産の価額を合計し、続いて、その合計額から基礎控除額110万円控除し、そして次に、その控除後の金額(千円未満切り捨)に贈与税率を乗じて税額を計算する制度です。

(注3)相続時精算課税に係る贈与税額を計算する際には、暦年課税の基礎控除額110万円を控除することはできませんので、贈与を受けた財産が110万円以下であっても贈与税の申告をする必要があります。

適用対象者

贈与者

贈与をした年の1月1日において60歳以上の父母または祖父母

受贈者

贈与を受けた年の1月1日において20歳(注1)以上の者のうち、贈与者の直系卑属(子や孫)である推定相続人または孫とされています。

なお、贈与により「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例(措法70の7の5)」の適用に係る非上場株式等を取得する場合、贈与者が贈与をした年の1月1日において60歳以上であれば、受贈者が贈与者の直系卑属(子や孫)である推定相続人以外の者(贈与を受けた年の1月1日において20歳(注)以上の者に限ります。)でも適用できます。

また、贈与により「個人の事業用資産についての贈与税の納税猶予及び免除(措法70の6の8)」の適用に係る事業用資産を取得する場合、贈与者が贈与をした年の1月1日において60歳以上であれば、受贈者が贈与者の直系卑属(子や孫)である推定相続人以外の者(贈与を受けた年の1月1日において20歳(注)以上の者に限ります。)でも適用できます。

 (注1) 「20歳」とあるのは、令和4年4月1日以後の贈与については「18歳」となります。

適用対象財産等

全ての贈与財産が対象になり、種類、金額、回数に制限はありません。

税額の計算方法

(1)贈与税額の計算

相続時精算課税の適用を受ける贈与財産については、その選択をした年以後、相続時精算課税に係る贈与者以外の者からの贈与財産と区分して、1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額を基に贈与税額を計算します。

区 分税 額
➀ 特定贈与者(相続時精算課税に係る贈与者)からの財産に係る贈与税贈与財産の価額の合計額から、特別控除額2,500万円(ただし、前年以前において、既にこの特別控除額を控除している場合は、残額が限度額となります。)を控除した後の金額に、一律20パーセントの税率を乗じて算出します。
➁ 特定贈与者以外からの財産に係る贈与税その贈与財産の価額の合計額から暦年課税の基礎控除額110万円を控除し、贈与税率を贈与乗じて税額を計算します。

尚具体的な計算方法は当HPの贈与税の計算方法を御参照下さい。

(贈与税率) 

現在の贈与税の税率は、次のとおり、「一般贈与財産」と「特例贈与財産」に区分されています。

<一般贈与財産用>(一般税率)

この速算表は、「特例贈与財産用」に該当しない場合の贈与税の計算に適用します。

基礎控除後の課税価格200万円
以下
300万円
以下
400万円
以下
600万円
以下
1,000万円
以下
1,500万円
以下
3,000万円
以下
3,000万円
税 率10%15%20%30%40%45%50%55%
控除額10万円25万円65万円125万円175万円250万円400万円

<特例贈与財産用>(特例税率)

この速算表は、贈与を受けた年の1月1日において20歳以上の者が、直系尊属から贈与により取得した財産に係る贈与税の計算に適用します。

(注) 「20歳」とあるのは、令和4年4月1日以後の贈与については「18歳」となります。

基礎控除後の課税価格200万円
以下
400万円
以下
600万円
以下
1,000万円
以下
1,500万円
以下
3,000万円
以下
4,500万円
以下
4,500万円
税 率10%15%20%30%40%45%50%55%
控除額10万円30万円90万円190万円265万円415万円640万円

(2)相続税額の計算

相続時精算課税を選択した者に係る相続税額は、相続時精算課税に係る贈与者が亡くなった時に、それまでに贈与を受けた相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の価額(贈与時の価額)と相続や遺贈により取得した財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納めた相続時精算課税に係る贈与税相当額を控除して算出します。

その際、相続税額から控除しきれない相続時精算課税に係る贈与税相当額については、相続税の申告をすることにより還付を受けることができます。

手続き

申告等の方法

相続時精算課税を選択しようとする贈与を受けた者(子または孫)は、その選択に係る最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間(贈与税の申告書の提出期間)に納税地の所轄税務署長に対して相続時精算課税選択届出書を受贈者の戸籍の謄本などの所定の書類とともに贈与税の申告書に添付して提出することとされています。

申告先等

所轄税務署

2023年度の相続時精算課税に関する重要な税制改正

相続時精算課税に関する改正は、納税者にとっては暦年贈与に対する課税強化とは対照的に、下記のような有利な改正になりました。(改正後の相続時精算課税制度が適用されるのは、令和6年1月1日以降に行われる贈与によって取得する財産に係る相続税又は贈与税です。)

年110万円の基礎控除の創設

相続時精算課税制度に年110万円の基礎控除創設されました。 相続時精算課税制度の適用を受けた贈与については、その財産の全額が相続財産への持ち戻し対象となっていましたが、今回の改正後では年110万円以下の部分については加算する必要がなくなりました。

申告不要制度

相続時精算課税制度の選択をすると、その贈与者からの贈与を受けた年は贈与税申告をしなければなりませんでしたが、110円以下であれば贈与税申告も不要となりました。

(和歌山県東牟婁郡串本町 橋杭岩)

非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例等(法人版事業承継税制)

概 略

法人の後継者である受贈者が、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(「円滑法」といいます。)の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与により取得した場合において、その非上場株式等に係る贈与税について、一定の要件のもと、その納税を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税の納付が免除される制度です。(「法人版事業承継税制」といいます。) この制度には、租税特別措置法第70条の7の5の規定による措置(「特例措置」といいます。)と同法第70条の7の規定による措置(「一般措置」といいます。)の2つの制度があり、特例措置については、平成30年1月1日から令和9年12月31日までの10年間の制度とされています。

個人を含めた事業承継税制の概要

項目法人個人事業主
一般事業承継税制特例事業承継税制特例事業承継税制
概略中小企業の後継者が非上場株式等を先代経営者から贈与又は相続等により取得した場合、その贈与又は相続等により取得した株式等に係る贈与税又は相続税の一定額を一定の期間まで猶予又は免除する制度一定の個人事業主の後継者がその者の事業に係る一定の事業用財産を先代経営者から贈与又は相続等により取得した場合、その贈与又は相続等により取得した財産に係る贈与税又は相続税の一定額を一定の期間まで猶予又は免除する制度
事業承継計画不要事業承継計画を認定経営革新等支援機関の所見を記載のうえ令和6年(2024年)3月31日まで(令和4年度改正により1年延長された)に都道府県知事に提出し確認を受けること
認定要件経営承継円滑化法に基づき後継者要件、先代事業者要件等を満たしていること等を記載した認定申請書を贈与年の10月15日から翌年1月15日までに、相続の場合は相続開始後8カ月以内に都道府県知事に申請し認定を受けること(期限内申告要件有り)
適用期限なし平成30年1月1日から
令和9年(2027年)12月31日まで
平成31年1月1日から
令和10年(2028年)12月31日まで
会社要件中小企業であること
(資本金・従業員数・業種制限・事業実態等の要件)
 
先代経営者要件
(贈与者又は被相続人の要件)
1.贈与者又は被相続人が法人の代表者であったこと
2.相続開始又は贈与の直前において現経営者と現経営者の親族などで、総議決権数の過半数を保有し且つこれらの中で贈与者又は被相続人が筆頭株主であったこと
55万円又は65万円控除適用青色申告者であること等一定の要件がある
後継者要件
(受贈者又は相続人
の要件)
贈与時又は相続開始時において後継者と後継者の親族などで、総議決権数の過半数を保有し且つこれらの中で筆頭株主であること  
<贈与税>
 贈与時に18歳以上であること
 贈与の直前において3年以上役員であり且つ贈与時において代表者であること
<相続税>
 相続開始直前において役員であり、相続開始から5カ月以内に代表者であること
1.贈与税の場合は、贈与時に18歳以上であること、贈与の日まで引き続き3年以上にわたり特定事業用資産に係る事業に従事していたこと
2.相続税の場合は、相続開始の直前において特定事業用資産に係る事業等に従事していたこと
3.贈与税・相続税の申告期限において青色申告の承認を受けていること
 等々一定の要件がある
対象株数限度等総株式の最大3分の2全株式事業の用に供されていた
宅地・建物・一定の減価償却資産等
納税猶予割合贈与税100% 相続税80%贈与税・相続税 100%贈与税・相続税 100%
承継パターン複数株主から後継者1名複数株主から最大後継者3名 
適用確保要件承継後5年間贈与日等の雇用人数の平均雇用8割の雇用維持8割要件の適用弾力化
(事実上撤廃)
 
経営環境変化による免除適用なし
(事業継続困難事由免除なし)
適用あり
(事業継続困難事由免除あり)
適用あり
(事業継続困難事由免除あり)
相続時精算課税60歳以上の者から18歳以上の推定相続人・孫への贈与60歳以上の者から18歳以上の者への贈与 
報告義務 13年間毎に提出する税務署長へ「継続届出書」を3年ごとに提出する

(日本税理士会連合会HPより)

(注意事項)

 内容
 注1議決権に制限のない株式等に限ります。
注2雇用確保要件を満たさなかった場合には、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則第20条第3項に基づき、要件を満たさなかった理由等を記載した報告書を都道府県知事に提出し、その確認を受ける必要があります。
注3「18歳」とあるのは、令和4年3月31日以前の贈与については「20歳」となります。

詳細は中小企業庁へ

(長野県 斑尾からの妙高山)

相続税法上の非課税財産の詳細

相続税法上の非課税財産

1 皇室経済法第7条の規定ににより皇位とともに皇嗣が受けたもの

皇位とともに皇室に伝わる由緒ある物

2 墓所、霊びょう及び祭具並びにこれらに準ずるもの

墓所、霊びょうとは、墓所、墓石等のほか、尊厳の維持に必要な土地その他、神棚、物体、神具、仏壇、位牌、仏像で日常礼拝の用に供しているものが該当します。

3 宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者で政令で定めるものが相続又は遺贈により取得した財産で当該公益を目的とする事業の用に供することが確実なもの

4 個人立幼稚園等の教育用財産

個人立の一定の幼稚園等を設置し、運営する事業を承継した個人で一定のものは当分の間非課税とされています。

5 条例の規定により地方公共団体が精神又は身体に障害のある者に関して実施する共済制度で政令で定めるものに基づいて支給される給付金を受ける権利

6 相続人の取得した相続税法第三条第一項第一号に掲げる保険金(前号に掲げるものを除く。以下この号において同じ。)については、イ又はロに掲げる場合の区分に応じ、イ又はロに定める金額に相当する部分

 第三条第一項第一号の被相続人のすべての相続人が取得した同号に掲げる保険金の合計額が五百万円に当該被相続人の第十五条第二項に規定する相続人の数を乗じて算出した金額(ロにおいて「保険金の非課税限度額」という。)以下である場合 当該相続人の取得した保険金の金額

 イに規定する合計額が当該保険金の非課税限度額を超える場合 当該保険金の非課税限度額に当該合計額のうちに当該相続人の取得した保険金の合計額の占める割合を乗じて算出した金額

7 相続人の取得した相続税法第三条第一項第二号に掲げる給与(以下この号において「退職手当金等」という。)については、イ又はロに掲げる場合の区分に応じ、イ又はロに定める金額に相当する部分

 第三条第一項第二号の被相続人のすべての相続人が取得した退職手当金等の合計額が五百万円に当該被相続人の第十五条第二項に規定する相続人の数を乗じて算出した金額(ロにおいて「退職手当金等の非課税限度額」という。)以下である場合 当該相続人の取得した退職手当金等の金額

 イに規定する合計額が当該退職手当金等の非課税限度額を超える場合 当該退職手当金等の非課税限度額に当該合計額のうちに当該相続人の取得した退職手当金等の合計額の占める割合を乗じて算出した金額

租税特別措置法上の非課税財産

1 国等へ相続財産を贈与した場合の非課税

 相続により取得した財産を相続税の申告期限までに、国又は地方公共団体等の一定の者に贈与した場合には、租税特別措置法第70条《国等に対して相続財産を贈与した場合等の相続税の非課税等》により当該贈与した財産の価額は、相続税の課税価格の計算の基礎に算入しないこととされています。

2 特定公益信託に係る相続税の非課税

 相続により取得した財産を相続税の申告期限までに、特定信託会社(その公益信託が、教育や科学の振興などに貢献することが著しいと認められるなど一定のものであること)に贈与した場合には、当該贈与した財産の価額は、相続税の課税価格の計算の基礎に算入しないこととされています。

(岐阜県高山市 乗鞍岳畳平)

続対策Ⅰ タワ-マンション購入について

裁判の概略

 最近まで相続税の節税対策のため、タワ-マンション等高額な不動産を銀行からの借入金で購入する対策が行われていました。 そして納税者がその不動産の評価を財産評価基本通達に基づき相続税の申告をしたところ、課税庁から財産評価基本通達6項(この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する)を適用し、不動産鑑定評価額により評価する旨の更正処分が行われ、この処分の妥当性が裁判により争われましたが、課税庁が勝訴いたしました。これにより今後の相続税対策が大きな影響を受けると思われますのでその争点を整理したいと思います。

この裁判による課税庁の財産評価基本通達6項の適用については次の様に要約する事ができます。

要  約

1 時価と財産評価基本通達に著しい乖離がある事(今までも乖離が有りましたが相続人間の課税の公平性のため財産評価基本通達による評価が認められていました)

2 ほかに適切な評価方法があること(不動産所在地の売買実例、不動産鑑定評価額等)

3 納税者に著しい乖離を生じさせる行為が存在すること

 特に”納税者に著しい乖離を生じさせる行為が存在すること”が重要な判断基準になっていると思われますので、相続開始前後の納税者の行為には注意が必要です。

以前においては相続人が相続直後に当該不動産を売却した場合に、客観的時価が顕在化するため財産評価基本通達6項が適用され時価で課税されることが有りました。 しかしこのたび、課税庁は相続後売却していない不動産の評価まで不動産鑑定評価により更正処分を行いました。 これは課税庁がこの節税対策をこのまま放置すると課税上の公平さが維持できなくなると考えた結果と推測されます。

 しかしながら被相続人が不動産経営のため長期間所有していた収益物件である不動産の評価や、被相続人が長期間所有していた不動産を相続開始後に相続税の納付のため売却した場合の不動産の評価にまで財産評価基本通達6項を適用することについては不適切と考えられます。

結  論

 今後の相続税対策はこの点を踏まえて、その対策の合理性、明瞭性、必然性が非常に重要になりますので、事前に税理士等の専門家に相談されることをお勧め致します。

(富山県黒部市 欅平)

相続対策 Ⅱ タワ-マンション購入についての結末

裁判の概略

最高裁判所において借入金による高額不動産の購入による相続税の節税対策に対する課税庁の更正処分の正当性を認める判決が出ました。 

事実関係の要約

1 被相続人が平成21年1月30日付けで信託銀行から6億3000万円を借入し,甲不動産を8億3700万円で 購入

2 被相続人が平成21年12月25日付けで信託銀行から3億7800万円を借入し、乙不動産を5億5000万円で購入

3 平成24年6月17日被相続人が死亡し、相続人が不動産の評価を財産評価基本通達に基づき相続税0で申告

4 平成25年3月7日に相続人が乙不動産を5億1500万円で売却

課税庁の対応

不動産の評価を財産評価基本通達によらず財産評価基本通達6項を適用し不動産鑑定士の評価で計算し直し、更正処分を行った

相続人側の対応

最終的に最高裁に上告し、不動産の時価を財産評価基本通達にすべきとして争っていた

税理士の意見

財産評価基本通達6項(この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。)の適用の合理性と、特定の納税者だけにこれを適用し課税することに合理的理由があるかどうかが争点になっていたので非常に注目を引いていました。 その判決文の中で最高裁の基準が下記の様に明確になりました。

                       記

⑴特定の者の相続財産の価額についてのみ評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることは、たとえ当該価額が客観的な交換価値としての時価を上回らないとしても、合理的な理由がない限り、租税法上の一般原則としての平等原則に違反するものとして違法というべきであること

⑵しかしながら評価通達による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある場合には、財産評価基本通達6項を適用することは合理的な理由があると認められること

したがって、財産評価基本通達6項を適用するかどうかは、国税庁が合理的理由が存在するかどうかの判断次第になり、その基準は明確になりましたが、申告する側が個別に事前確認方法はないといわざるを得ないこととなりました。 しかしながら、長期にわたる不動産賃貸業に係る不動産と借入金の存在と、相続発生直前の不動産の取得とその取得に伴う借入金の存在は明らかに区分して取り扱われるべきであると思われますが、今後の課税庁側の本判決に対する動向を慎重に見守る必要が有り、安易な相続税対策はするべきではないと思います。 

最高裁判所の判例集へ

(山梨県北杜市 清泉寮)

3 相続で税金を少なくすることと同様、非常に大切なこと

上記1、2で相続税を少なくすることの説明をいたしましたが、それに伴うデメリットもあり慎重に行うことが重要です。 一般的に、節税と同時に相続を相続人間で円満に行うことがより重要かもしれません。 説明致しました節税方法はもろ刃の剣で、税金は少なくなりますが、それに伴い相続人間の関係を悪くすることも起こりえます。 例えば事業承継を含む相続では、会社の株式を誰に相続させるか(誰を後継者にするか)の選定、その他の資産を誰に相続させるかも重要で、扱い方次第で相続トラブルになってきます。 そこで事前に遺言書の作成または民事信託を行うことによって相続トラブルを防ぐことが出来かもしれませかもしれませんのでご紹介致します。

⑴ 遺言書の作成

 相続争いの恐れがある場合は遺言書の作成で相続をスム-ズに行うことができる可能性が有ります。 また作成する時は公正証書遺言の作成をお勧め致します。 

(遺言書の種類と内容)

種類内容メリットデメリット保管する人
自筆証書遺言自分で遺言の全文・氏名・日付を自書し、押印する①費用がかからない
②秘密性の保持が可能
③証人が不要
①条件を満たさず遺言書が無効になるリスクがある
②遺言書が本物かどうか証明できない
③紛失や盗難のリスクがある
被相続人が保管
公正証書遺言本人と証人2名で公証役場へ行き、本人が遺言内容を口述し、それを公証人が記述する法的に有効な遺言を確実に作成するすことができる①作成費用がかかる
②秘密性の保持が不可能
③証人が必要
公証役場で保管
秘密証書遺言遺言に署名・押印した後、封筒に入れ封印して、公証役場で証明してもらう①遺言書が本物であることを証明できる
②秘密性の保持が可能
①作成費用がかかる
②遺言書が無効になるリスクがある
③紛失や盗難のリスクがある
➃証人が必要
被相続人が保管

⑵ 信託の活用

概 要

信託とは財産の所有者が受託者に財産を預けて、管理・処分等を任せることです(不動産を信託した場合は不動産の登記簿の信託目録に委託者、受託者、受益者が記載されますので権利関係が明確になります)。 その内容は下記の通りです。

区 分詳  細
信託の方法➀信託契約(民事信託はほとんどこの方法で行われます) ➁遺言信託 ➂自己信託
委託者財産を預ける人
受託者財産を預かる人(法律的所有者)
受益者財産の実質的な所有者
信託財産(原則)一切の財産 (ただし法律により譲渡が禁止されている預金債権、及び債務は除かれます)
信託財産(例外)賃貸不動産に係る債務を信託財産責任負担債務として信託行為に定め、かつ事前に金融機関と交渉することによって、当該債務を引き受けて返済することがが出来るようになります。 このときに信託財産に属する財産で返済できない場合、受託者固有の財産で返済する必要がありますので注意が必要です。

信託契約書の作成の仕方によっては課税が下記の通り、生じますのでご注意願います。

信託に対する課税
状 況委託者、受託者、受益者の関係等課  税
信託の効力発生時委託者=受益者課税なし
委託者≠受益者受益者に贈与税が課税される
受益権の移転時A受益者→B受益者B受益者に贈与税が課税される
受益者権の譲渡譲渡した人の譲渡所得
受益権の放棄時新たな受益権者に新たな受益権者に贈与税(相続税)が課税される
信託終了時信託財産を受益者に交付課税なし
信託財産を受益者以外に交付当該受益者以外の者に贈与税が課税される
受益権の評価信託財産に属する資産の評価-信託財産に属する負債の評価
信託活用の具体例

① 会社の経営権の支配を目的にする

受益者指定権の設定、受益者連続型信託の利用で信託終了まで委託者の意思でその所有する財産がどのように相続されるか信託契約により指定することが出来ます。 その結果下記のように会社の経営権をコントロ-ルできます。 

イ 後継者の暴走及び浪費を防止

ロ 後継者の配偶者への移転の防止

② 認知症対策

委託者(親)が認知症になる前に下記のようにしますと贈与税が課税されずに、子が財産を管理できます。

ィ 親が親の財産を子に信託します(委託者=親、 受託者=子)

ロ 受益者を親に設定

(山口県下関市 角島)