相続 その他
マンションの評価方法
評価額
マンションの評価方法については、①土地(敷地権)の価額と➁区分所有する建物の価額の合計額になります。
区分 | 評価方法 |
①土地の評価 | マンションの敷地全体の価額 × 区分所有する建物に係る敷地権の割合(小規模宅地の特例の適用あり) |
➁建物の評価 | 区分所有する建物の固定資産税評価額 |
敷地全体の価額 及び敷地権の割合
財産区分 | 土地の評価方法 | 計算方法 |
敷地全体の評価方法 | 路線価方式 | 路線価 × 地積[登記事項証明書の表題部(敷地権の目的である土地の表示)に記載されている地積] |
倍率方式 | その土地の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて計算します。 | |
敷地権割合 | 登記事項証明書の表題部(敷地権の表示)に記載されている敷地権の割合 |
改正の概 要
(注1) 令和6年1月1日以後の相続等又は贈与により取得した財産に適用する。
(注2) 上記の評価方法の適用後も、最低評価水準と重回帰式については、固定資産税の評価の見直し時期に併せて、当該時期の直前における一戸建て及びマンション一室の取引事例の取引価格に基づいて見直すものとする。
また当該時期以外の時期においても、マンションに係る不動産価格指数等に照らし見直しの要否を検討するものとする。
① 一戸建ての物件とのバランスも考慮して、相続税評価額が市場価格理論値の60%未満となっているもの(乖離率1.67倍を超えるもの)について、市場価格理論値の60%(乖離率1.67倍)になるよう評価額を補正する。
② 評価水準60%~100%は補正しない(現行の相続税評価額×1.0)
③ 評価水準100%超のものは100%となるよう評価額を減額する。
相続税評価の見直し案(要旨 )
評価方法
1.区分所有に係る財産の各部分(建物部分及び敷地利用権部分。ただし、構造上、居住の用途に供することができるものに限
る。以下「マンション一室」という。)の価額は、次の算式により計算した価額によって評価することとする。
区分 | 細目 | |
計算式 | 原則 | 重回帰式による理論的な市場価格=現行の相続税評価額 × 当該マンション一室の評価乖離率 × 最低評価水準0.6(定数) |
評価乖離率が0.6分の1以下(約1.67以下)となるマンション一室の評価額 | 現行の相続税評価額×1.0とする | |
評価乖離率が1.0未満となるマンション一室の評価額 | 現行の相続税評価額×当該マンション一室の評価乖離率 | |
不動産鑑定評価書等に照らし評価額が通常の取引価額を上回ると認められる場合には | 当該価額 | |
注1 | 「マンション一室」には、総階数2階以下の物件に係る各部分及び区分所有されている居住用部分が3以下であって、かつ、その全てが親族の居住用である物件(いわゆる二世帯住宅等)に係る各部分は含まない。 | |
注2 | 令和6年1月1日以後の相続等又は贈与により取得した財産に適用する。 |
評価乖離率
区分 | 詳細 |
評価乖離率 | 「①×△0.033+②×0.239+③×0.018+④×△1.195+3.220」により計算したものとする。 |
① | 当該マンション一室に係る建物の築年数 |
➁ | 当該マンション一室に係る建物の「総階数指数」として、「総階数÷33(1.0を超える場合は1.0)」 |
➂ | 当該マンション一室の所在階 |
➃ | 当該マンション一室の「敷地持分狭小度」として、「当該マンション一室に係る敷地利用権の面積÷当該マンション一室に係る専有面積」により計算した値 |
【参考】上記の算式は、次の(1)の目的変数と(2)の説明変数に基づく重回帰式である。 (1)目的変数 平成30年分のマンション一室の取引事例における取引価格÷当該マンション一室の相続税評価額 (2)説明変数 2.に掲げる算式における①、②、③、④ |
注意事項
3.上記の評価方法の適用後も、最低評価水準と重回帰式については、固定資産税の評価の見直し時期に併せて、当該時期の
直前における一戸建て及びマンション一室の取引事例の取引価格に基づいて見直すものとする。
また、当該時期以外の時期においても、マンションに係る不動産価格指数等に照らし見直しの要否を検討するものとする。
加えて、マンション市場価格の大幅な下落その他見直し後の評価方法に反映されない事情が存することにより、当該評価方
法に従って評価することが適当でないと認められる場合は、個別に課税時期における時価を鑑定評価その他合理的な方法によ
り算定する旨を明確化する(他の財産の評価における財産評価基本通達6項に基づくこれまでの実務上の取扱いを適用。)
相続土地国庫帰属制度
概 略
近年、社会経済情勢の変化に伴い、地方から東京等の都心部への人口の移動により、地方の土地が放置されることが多くなり、その結果所有者不明土地(相当な努力を払ってもなおその所有者の全部又は一部を確知することができない土地をいう。)が増加していることに鑑み、相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)(以下「相続等」という。)により土地の所有権又は共有持分を取得した者等がその土地の所有権を国庫に帰属させることができる[相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律]制度を創設し、もって所有者不明土地の発生の抑制を図ることになりました。 その相続した土地の維持管理に費用が掛かり、売却することも困難な土地について、相続放棄を意識せざるを得なかった状況から、この制度を利用することによって問題解決する可能性が見えてきました。 しかしこの制度は国が受け入れる土地についての承認申請が出来ない規定(第二条三項)があり、また国が承認申請を却下する規定(第四条)もありますので、利用する上では注意が必要です。
相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律
目次
第二章 相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属の承認に係る手続(第二条―第十一条)
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、社会経済情勢の変化に伴い所有者不明土地(相当な努力を払ってもなおその所有者の全部又は一部を確知することができない土地をいう。)が増加していることに鑑み、相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)(以下「相続等」という。)により土地の所有権又は共有持分を取得した者等がその土地の所有権を国庫に帰属させることができる制度を創設し、もって所有者不明土地の発生の抑制を図ることを目的とする。
第二章 相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属の承認に係る手続
(承認申請)
第二条 土地の所有者(相続等によりその土地の所有権の全部又は一部を取得した者に限る。)は、法務大臣に対し、その土地の所有権を国庫に帰属させることについての承認を申請することができる。
2 土地が数人の共有に属する場合には、前項の規定による承認の申請(以下「承認申請」という。)は、共有者の全員が共同して行うときに限り、することができる。この場合においては、同項の規定にかかわらず、その有する共有持分の全部を相続等以外の原因により取得した共有者であっても、相続等により共有持分の全部又は一部を取得した共有者と共同して、承認申請をすることができる。
3 承認申請は、その土地が次の各号のいずれかに該当するものであるときは、することができない。
一 建物の存する土地
二 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
三 通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地
四 土壌汚染対策法(平成十四年法律第五十三号)第二条第一項に規定する特定有害物質(法務省令で定める基準を超えるものに限る。)により汚染されている土地
五 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地
(承認申請書等)
第三条 承認申請をする者(以下「承認申請者」という。)は、法務省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した承認申請書及び法務省令で定める添付書類を法務大臣に提出しなければならない。
一 承認申請者の氏名又は名称及び住所
二 承認申請に係る土地の所在、地番、地目及び地積
2 承認申請者は、法務省令で定めるところにより、物価の状況、承認申請に対する審査に要する実費その他一切の事情を考慮して政令で定める額の手数料を納めなければならない。
(承認申請の却下)
第四条 法務大臣は、次に掲げる場合には、承認申請を却下しなければならない。
一 承認申請が申請の権限を有しない者の申請によるとき。
二 承認申請が第二条第三項又は前条の規定に違反するとき。
三 承認申請者が、正当な理由がないのに、第六条の規定による調査に応じないとき。
2 法務大臣は、前項の規定により承認申請を却下したときは、遅滞なく、法務省令で定めるところにより、その旨を承認申請者に通知しなければならない。
(承認)
第五条 法務大臣は、承認申請に係る土地が次の各号のいずれにも該当しないと認めるときは、その土地の所有権の国庫への帰属についての承認をしなければならない。
一 崖(勾配、高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る。)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
二 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地
三 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
四 隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの
五 前各号に掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの
2 前項の承認は、土地の一筆ごとに行うものとする。
(事実の調査)
第六条 法務大臣は、承認申請に係る審査のため必要があると認めるときは、その職員に事実の調査をさせることができる。
2 前項の規定により事実の調査をする職員は、承認申請に係る土地又はその周辺の地域に所在する土地の実地調査をすること、承認申請者その他の関係者からその知っている事実を聴取し又は資料の提出を求めることその他承認申請に係る審査のために必要な調査をすることができる。
3 法務大臣は、その職員が前項の規定により承認申請に係る土地又はその周辺の地域に所在する土地の実地調査をする場合において、必要があると認めるときは、その必要の限度において、その職員に、他人の土地に立ち入らせることができる。
4 法務大臣は、前項の規定によりその職員を他人の土地に立ち入らせるときは、あらかじめ、その旨並びにその日時及び場所を当該土地の占有者に通知しなければならない。
5 第三項の規定により宅地又は垣、柵等で囲まれた他人の占有する土地に立ち入ろうとする職員は、その立入りの際、その旨を当該土地の占有者に告げなければならない。
6 日出前及び日没後においては、土地の占有者の承諾があった場合を除き、前項に規定する土地に立ち入ってはならない。
7 第三項の規定による立入りをする場合には、職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。
8 国は、第三項の規定による立入りによって損失を受けた者があるときは、その損失を受けた者に対して、通常生ずべき損失を補償しなければならない。
(資料の提供要求等)
第七条 法務大臣は、前条第一項の事実の調査のため必要があると認めるときは、関係行政機関の長、関係地方公共団体の長、関係のある公私の団体その他の関係者に対し、資料の提供、説明、事実の調査の援助その他必要な協力を求めることができる。
(承認に関する意見聴取)
第八条 法務大臣は、第五条第一項の承認をするときは、あらかじめ、当該承認に係る土地の管理について、財務大臣及び農林水産大臣の意見を聴くものとする。ただし、承認申請に係る土地が主に農用地(農地法(昭和二十七年法律第二百二十九号)第二条第一項に規定する農地又は採草放牧地をいう。以下同じ。)又は森林(森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)第二条第一項に規定する森林をいう。以下同じ。)として利用されている土地ではないと明らかに認められるときは、この限りでない。
(承認の通知等)
第九条 法務大臣は、第五条第一項の承認をし、又はしないこととしたときは、法務省令で定めるところにより、その旨を承認申請者に通知しなければならない。
(負担金の納付)
第十条 承認申請者は、第五条第一項の承認があったときは、同項の承認に係る土地につき、国有地の種目ごとにその管理に要する十年分の標準的な費用の額を考慮して政令で定めるところにより算定した額の金銭(以下「負担金」という。)を納付しなければならない。
2 法務大臣は、第五条第一項の承認をしたときは、前条の規定による承認の通知の際、法務省令で定めるところにより、併せて負担金の額を通知しなければならない。
3 承認申請者が前項に規定する負担金の額の通知を受けた日から三十日以内に、法務省令で定める手続に従い、負担金を納付しないときは、第五条第一項の承認は、その効力を失う。
(国庫帰属の時期)
第十一条 承認申請者が負担金を納付したときは、その納付の時において、第五条第一項の承認に係る土地の所有権は、国庫に帰属する。
2 法務大臣は、第五条第一項の承認に係る土地の所有権が前項の規定により国庫に帰属したときは、直ちに、その旨を財務大臣(当該土地が主に農用地又は森林として利用されていると認められるときは、農林水産大臣)に通知しなければならない。
延納
概要
相続税額が10万円を超え、金銭で一括納付することが困難な場合には、納税者の申請により、その納付が困難な金額を限度として、担保を提供することにより、年払いで分割納付することができます。 この納付方法を延納といいますが、この延納期間中は利子税が別途必要となります。
延納の要件
下記に掲げるすべての要件を満たす場合に、延納を申請することができます。
要 件 | |
1 | 相続税額が10万円を超えること |
2 | 金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額の範囲内であること。 |
3 | 延納税額および利子税の額に相当する担保を提供すること。 ただし、延納税額が100万円以下で、かつ、延納期間が3年以下である場合には担保を提供する必要はありません。 |
4 | 延納申請期限(延納申請に係る相続税の納期限または納付すべき日)までに、延納申請書に担保提供関係書類を添付して税務署長に提出すること。 |
担保の種類
延納の担保として提供できる財産の種類は、下記に掲げるものに限られます。 またこの場合、相続または遺贈により取得した財産に限らず、相続人所有の財産等も担保として提供することができます。
財産の内容 | |
1 | 国債および地方債 |
2 | 社債その他の有価証券で税務署長が確実と認めるもの |
3 | 土地 |
4 | 建物、立木、登記される船舶などで、保険に附したもの |
5 | 鉄道財団、工場財団など |
6 | 税務署長が確実と認める保証人の保証 |
延納申請書の提出期限
延納申請期限(納期限または納付すべき日)までに延納申請書を必要書類を添付して提出する必要があります。 ただし、延納申請期限までに担保提供関係書類を提供することができない場合は、担保提供関係書類提出期限延長届出書を提出することにより、最長6か月まで担保提供関係書類の提出期限を延長することができます。
延納の許可までの審査期間
延納申請書が提出された場合、延納申請期限から3か月以内(最長で6か月まで)に許可または却下が行われます。
相続税の延納期間および延納に係る利子
※ この表の「特例割合」は、令和5年1月1日現在の「延納特例基準割合」0.9パーセントで計算しています。したがって、「延納特例基準割合」の変更があった場合には、次の表の「特例割合」も変動しますので、延納申請に際し所轄税務署で確認願います。
(国税庁HPより)
区 分 | 延納期間 (最高) | 延納利子税割合 (年割合) | 特例割合※ | |
---|---|---|---|---|
不動産等の割合が75%以上の場合 | ①動産等に係る延納相続税額 | 10年 | 5.4% | 0.6% |
②不動産等に係る延納相続税額(③を除く) | 20年 | 3.6% | 0.4% | |
③森林計画立木の割合が20%以上の森林計画立木に係る延納相続税額 | 20年 | 1.2% | 0.1% | |
不動産等の割合が50%以上75%未満の場合 | ④動産等に係る延納相続税額 | 10年 | 5.4% | 0.6% |
⑤不動産等に係る延納相続税額(⑥を除く) | 15年 | 3.6% | 0.4% | |
⑥森林計画立木の割合が20%以上の森林計画立木に係る延納相続税額 | 20年 | 1.2% | 0.1% | |
不動産等の割合が50%未満の場合 | ⑦一般の延納相続税額(⑧、⑨および⑩を除く) | 5年 | 6.0% | 0.7% |
⑧立木の割合が30%を超える場合の立木に係る延納相続税額(⑩を除く) | 5年 | 4.8% | 0.5% | |
⑨特別緑地保全地区等内の土地に係る延納相続税額 | 5年 | 4.2% | 0.5% | |
⑩森林計画立木の割合が20%以上の森林計画立木に係る延納相続税額 | 5年 | 1.2% | 0.1% |
注1 延納のできる期間と延納にかかる利子税の割合については、その人の相続税額の計算の基礎となった財産の価額の合計額のうちに占める不動産等の価額の割合によって、おおむね上記の「相続税の延納期間および延納に係る利子」の表のようになります。
注2 各年の延納特例基準割合(※)が7.3パーセントに満たない場合の利子税の割合は、下記の算式により計算される割合が適用されます。
項目 | 内容 |
算 式 | 延納利子税割合(年割合) × 延納特例基準割合(※) ÷ 7.3% 0.1パーセント未満の端数は切り捨て、その割合が0.1パーセント未満の割合である場合は年0.1パーセント |
延納特例基準割合 | 各分納期間の開始の日の属する年の前々年の9月から前年の8月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として各年の前年の11月30日までに財務大臣が告示する割合に、年0.5パーセントの割合を加算した割合をいいます。 |
特定物納制度(延納から物納への変更)
延納の許可を受けた相続税額について、その後の納税の資金繰りの悪化等の理由によりより当初の延納条件を履行することが困難となった場合には、申告期限から10年以内に限り、残りの税額部分について、延納から物納への変更を行うこと(特定物納)ができます。 特定物納申請をした場合には、物納財産を納付するまでの期間に応じ、当初の延納条件による利子税を納付することとなります。 なお、特定物納に係る財産の収納価額は、特定物納申請の時の価額となります。
物 納
物納すべきかどうかの判断
相続税法では、延納によっても金銭で納付することを困難とする事由がある場合には、納税者の申請により、その納付を困難とする金額を限度として一定の相続財産(相続時精算課税または非上場株式の納税猶予を適用している場合には、それらの適用対象となっている財産を物納の対象とすることはできません)による納付ができます。 これを物納といいます。 しかしながら近年、条件の厳しさ、手続きの複雑さ等から物納の利用者は大幅に減少しており、物納が認められた件数は平成10年ころには5,000件ぐらいでしたが、令和3年には40件ぐらいまで減少しています。 したがいまして、その内容を検討するとともに、納付のための固定資産の譲渡と比較してどちらが有利か検討することをお勧めいたします。
1 物納の要件
下記のすべての要件を満たすことが必要です。
(要件1) 延納によっても金銭で納付することが困難であり、かつ、その納付が困難な金額を限度としていること。
(要件2) 物納申請財産は、納付すべき相続税額の課税価格計算の基礎となった相続財産のうち、日本国内に所在する下記に掲げる財産および順位(①から⑤の順)となること。
項 目 | 内 容 |
第1順位 | ① 不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式等(特別の法律により法人の発行する債券および出資証券を含みますが、短期社債等は除かれます。) ➁ 不動産および上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの |
第2順位 | ➂ 非上場株式等(特別の法律により法人の発行する債券および出資証券を含みますが、短期社債等は除かれます。) ➃ 非上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの |
第3順位 | ⑤ 動産 |
注意事項 | 注1 後順位の財産は、税務署長が特別の事情があると認める場合および先順位の財産に適当な価額のものがない場合に限って物納に充てることができます。 注2 特定登録美術品(美術品の美術館における公開の促進に関する法律第2条第3号に規定する登録美術品で相続開始の時において既に登録を受けているものをいいます。)については、上記の順序にかかわらず一定の書類を提出することにより物納に充てることができます。 |
(要件3) 物納に充てることができる財産は、管理処分不適格財産に該当しないものであることおよび物納劣後財産に該当する場合には、他に物納に充てるべき適当な財産がないこと。
(要件4) 物納申請期限(物納しようとする相続税の納期限または納付すべき日)までに、物納申請書に必要書類を添付して税務署長に提出すること。
2 管理処分不適格財産(物納に不適格な財産)
下記に掲げるような財産は、物納に不適格な財産(管理処分不適格財産)となります。
(1) 不動産
番 号 | 不動産の内容 |
1 | 担保権の設定の登記がされていることその他これに準ずる事情がある不動産 |
2 | 権利の帰属について争いがある不動産 |
3 | 境界が明らかでない土地 |
4 | 隣接する不動産の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の使用ができないと見込まれる不動産 |
5 | 他の土地に囲まれて公道に通じない土地で民法第210条(公道に至るための他の土地の通行権)の規定による通行権の内容が明確でないもの |
6 | 借地権の目的となっている土地で、その借地権を有する者が不明であることその他これに類する事情があるもの |
7 | 他の不動産(他の不動産の上に存する権利を含みます。)と社会通念上一体として利用されている不動産もしくは利用されるべき不動産または二以上の者の共有に属する不動産 |
8 | 耐用年数(所得税法の規定に基づいて定められている耐用年数をいいます。)を経過している建物(通常の使用ができるものを除きます。) |
9 | 敷金の返還に係る債務その他の債務を国が負担することとなる不動産(申請者において清算することを確認できる場合を除きます。) |
10 | その管理または処分を行うために要する費用の額がその収納価額と比較して過大となると見込まれる不動産 |
11 | 公の秩序または善良の風俗を害するおそれのある目的に使用されている不動産その他社会通念上適切でないと認められる目的に使用されている不動産 |
12 | 引渡しに際して通常必要とされる行為がされていない不動産 |
13 | 地上権、永小作権、賃借権その他の使用および収益を目的とする権利が設定されている不動産で次に掲げる者がその権利を有しているもの ①暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者(以下「暴力団員等」といいます。) ➁暴力団員等によりその事業活動を支配されている者 ➂法人で暴力団員等を役員等(取締役、執行役、会計参与、監査役、理事および監事ならびにこれら以外の者でその法人の経営に従事している者ならびに支配人をいいます。)とするもの |
(2) 株式
番 号 | 株式の内容 |
1 | 譲渡に関して金融商品取引法その他の法令の規定により一定の手続が定められている株式で、その手続がとられていない株式 |
2 | 譲渡制限株式 |
3 | 質権その他の担保権の目的となっている株式 |
4 | 権利の帰属について争いがある株式 |
5 | 共有に属する株式(共有者全員がその株式について物納の許可を申請する場合を除きます。) |
6 | 暴力団員等によりその事業活動を支配されている株式会社または暴力団員等を役員(取締役、会計参与、監査役および執行役をいいます。)とする株式会社が発行した株式(取引相場のない株式に限ります。) |
(3) 上記以外の財産
その財産の性質が上記(1)または(2)に定める財産に準ずるものとして税務署長が認めるもの
3 物納劣後財産
下記のような財産(物納劣後財産)は、他に物納に充てるべき適当な財産がない場合に限り、物納することができます。
番 号 | 内 容 |
1 | 地上権、永小作権もしくは耕作を目的とする賃借権、地役権または入会権が設定されている土地 |
2 | 法令の規定に違反して建築された建物およびその敷地 |
3 | 土地区画整理法による土地区画整理事業等の施行に係る土地につき仮換地または一時利用地の指定がされていない土地(その指定後において使用または収益をすることができない土地を含みます。) |
4 | 現に納税義務者の居住の用または事業の用に供されている建物およびその敷地(納税義務者がその建物および敷地について物納の許可を申請する場合を除きます。) |
5 | 配偶者居住権の目的となっている建物およびその敷地 |
6 | 劇場、工場、浴場その他の維持または管理に特殊技能を要する建物およびこれらの敷地 |
7 | 建築基準法第43条第1項(敷地等と道路との関係)に規定する道路に2メートル以上接していない土地 |
8 | 都市計画法の規定による都道府県知事の許可を受けなければならない開発行為をする場合において、その開発行為が開発許可の基準に適合しないときにおけるその開発行為に係る土地 |
9 | 都市計画法に規定する市街化区域以外の区域にある土地(宅地として造成することができるものを除きます。) |
10 | 農業振興地域の整備に関する法律の農業振興地域整備計画において農用地区域として定められた区域内の土地 |
11 | 森林法の規定により保安林として指定された区域内の土地 |
12 | 法令の規定により建物の建築をすることができない土地(建物の建築をすることができる面積が著しく狭くなる土地を含みます。) |
13 | 過去に生じた事件または事故その他の事情により、正常な取引が行われないおそれがある不動産およびこれに隣接する不動産 |
14 | 事業の休止(一時的な休止を除きます。)をしている法人に係る株式に係る株券 |
4 物納申請書の提出期限
物納申請期限(納期限または納付すべき日)までに物納申請書に物納手続関係書類を添付して提出することが必要です。 ただし、物納手続関係書類提出期限延長届出書を提出することにより、最長で1年まで物納手続関係書類の提出期限を延長することができます。
5 物納の許可までの審査期間
物納の許可までの審査は物納申請期限から3か月以内に許可または却下が行なわれます。 また、場合によっては許可または却下が9か月まで延長される場合もあります。
6 物納財産の収納価額
物納財産を国が収納するときの価額は、原則として相続税の課税価格計算の基礎となったその財産の価額になります。 したがって小規模宅地等については、特例適用後の価額となります。
7 その他
⑴ 物納の再申請
処分の内容 | 手続き |
管理処分不適格と判断された場合 | 他の財産による物納の再申請を1回に限り行うことができます |
延納により金銭で納付することを困難とする事由がないことを理由として物納申請の却下があった場合 | 物納が却下された相続税額について延納の申請をすることができます。 |
⑵ 条件付許可
許可財産に条件が付けられた場合、その条件に対する必要な措置をとらなければ、物納許可が取り消されることがありますのでご注意ください。
⑶ 利子税の納付
物納の許可による納付があったものとされた日までの期間のうち、申請者においての必要な措置を行う期間について、利子税がかかります。 また、物納申請が却下された場合や物納申請を取り下げたものとみなされた場合にも、所定の期間に利子税がかかります。 その他、自ら物納申請を取り下げた場合は、納期限または納付すべき日の翌日から延滞税がかかります。
⑷ 特定物納制度(延納から物納への変更)
延納の許可を受けた相続税額について、その後の納税の資金繰りの悪化等の理由によりより当初の延納条件を履行することが困難となった場合には、申告期限から10年以内に限り、残りの税額部分について、延納から物納への変更を行うこと(特定物納)ができます。 特定物納申請をした場合には、物納財産を納付するまでの期間に応じ、当初の延納条件による利子税を納付することとなります。 なお、特定物納に係る財産の収納価額は、特定物納申請の時の価額となります。
8 譲渡との比較
項目 | 物納 | 不動産の譲渡 |
メリット | ①譲渡による所得税及び住民税がいらない ➁不動産の場合固定資産税が少なくなる | ①物納と比較して手続きが簡単 ➁不動産の譲渡代金が相続税の評価額よりも高い場合手取り額が多くなる ➂利子税がかからない |
デメリット | ①条件が厳しい ➁手続きが複雑である ➂相続税評価額が収納価額となり、時価が高くその差額が大きい時、損する可能性がある ➃利子税がかかる | ①譲渡に対する所得税及び住民税が必要 ➁仲介手数料(仲介業者に依頼する時)が必要 ➂譲渡相手を探す期間が短い時、時価よりも安く譲渡する可能性がある |
医療法人の持分についての相続税の納税猶予制度
概要
相続人等が、相続又は遺贈により認定医療法人(相続税の申告期限において)の持分を相続した場合、納付すべき相続税のうち、この特例の適用を受ける持分の価額に対応する相続税については、所定の要件のもと、認定移行計画に記載された移行期限まで、その納税が猶予されます。 この場合の猶予される相続税額を医療法人持分納税猶予税額といいます。
認定医療法人とは
平成26年度の医療法改正により令和5年9月30日までに持ち分の定めがある社団が持ち分の定めのない社団に移行する計画を策定し、厚生労働大臣の認定を受けた場合その医療法人。
特例の適用を受けるための要件
この特例の適用を受けるための要件は、下記のとおりです。
(必要要件)
要 件 | |
1 | 被相続人が医療法人の持分を有していた人であること。 |
2 | 相続人等が被相続人から相続または遺贈により医療法人の持分を取得した人であること。 |
3 | 医療法人の持分が相続税の申告期限において認定医療法人の持分(遺産分割されているものに限ります。)であり、相続税の期限内申告書にこの特例の適用を受ける旨を記載したものであること。 |
猶予された相続税額
医療法人持分納税猶予税額が免除される場合
認定医療法人の認定移行計画に記載された移行期限までに、下記の様な事由が生じた場合は、原則的に、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれに掲げる金額に相当する相続税額は、届出書を提出することにより、免除されます。
区分 | 届出により免除される額 | |
---|---|---|
1 | 認定医療法人の持分のすべてを放棄した場合 | 医療法人持分納税猶予税額 |
2 | 認定医療法人が基金拠出型医療法人への移行をする場合において、持分の一部を放棄し、その残余の部分をその基金拠出型医療法人の基金として拠出したとき | 医療法人持分納税猶予税額から基金として拠出した額に対応する部分の金額を控除した残額 |
放棄の手続き 厚生労働大臣が定める「出資持分の放棄申出書」(医療法施行規則附則様式7)を認定医療法人に提出する ことにより放棄する必要があります。
医療法人持分納税猶予税額が免除されない場合
下記に該当する場合には、この特例の適用を受けることはできません。
区分 | |
1 | 相続開始の時から相続税の申告期限までの間に、医療法人の持分に基づき出資額に応じた払戻しを受けた場合 |
2 | 相続開始の時から相続税の申告期限までの間に、医療法人の持分を譲渡した場合 |
3 | 相続開始の時から相続税の申告期限までの間に、認定医療法人の持分の全部または一部を放棄し、医療法人の持分についての相続税の税額控除の適用を受ける場合 |
医療法人持分納税猶予額の納付
(1) 医療法人持分納税猶予税額を納付しなければならない場合
納税猶予を受けている相続税額は、下記に該当する場合は、その相続税額の全部または一部を納付する必要があります。
<医療法人持分納税猶予税額の全部確定>
区分 | 詳 細 |
a | 相続税の申告期限から認定医療法人の認定移行計画に記載された移行期限までの間に、認定医療法人の持分に基づき出資額に応じた払戻しを受けた場合 |
b | 相続税の申告期限から認定医療法人の認定移行計画に記載された移行期限までの間に、認定医療法人の持分の譲渡をした場合 |
c | 認定医療法人の認定移行計画に記載された移行期限までに、新医療法人への移行をしなかった場合 |
d | 認定医療法人の認定移行計画について、厚生労働大臣の認定が取り消された場合 |
e | 認定医療法人が解散をした場合(合併により消滅をする場合を除きます。) |
f | 認定医療法人が合併により消滅をした場合(合併により医療法人を設立する場合において相続人等が持分に代わる金銭その他の財産の交付を受けないときなど一定の場合を除きます。) |
<医療法人持分納税猶予税額の一部確定>
認定医療法人が認定移行計画に記載された移行期限までに、基金拠出型医療法人への移行をする場合において、相続人等が認定医療法人の持分の一部を放棄し、その残余の部分を基金拠出型医療法人の基金として拠出したとき |
(2) 利子税
区分 | 内 容 |
原則 | 上記(1)により納付する相続税額については、相続税の申告期限の翌日から納税猶予の期限までの期間(日数)に応じ、年6.6パーセントの割合で利子税がかかります。 |
特例 | 各年の利子税特例基準割合(※1)が7.3パーセントに満たない場合には、その年中においては次の算式により計算した割合が適用されます。 算式[6.6% × 利子税特例基準割合(※1) ÷ 7.3%] (注)0.1パーセント未満の端数は切り捨て、その割合が0.1パーセント未満の割合である場合は年0.1パーセント 税特例基準割合については、国税庁の延滞税の割合をご参照ください。 |
納付義務の承継
認定医療法人の認定移行期間中に、この特例の適用を受けている相続人等が死亡した場合には、その相続人等に係る医療法人持分納税猶予税額の納付義務は、その相続人等の相続人が承継いたします。
申告等の方法
この特例の適用を受けるためにはの手続きは、①所轄の税務署に相続税の申告書を期限内に提出するとともに、➁医療法人持分納税猶予税額および利子税の額に見合う担保を提供する必要があります。
特定空き家及び管理不全空き家
概 略
近年、空き家をめぐり近隣地域とトラブルが多発しており、それを回避するための法律が必要でありました。 そのため空き家対策措置法等が施行され、又今般空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律が施行され、固定資産税等により空き家の適切な管理、土地の有効利用の促進等を進めることになりました。 今回の法律により、地方にある親から相続した土地建物をそのまま放置することが出来なくなり、その結果修理して賃貸にするか、売却するかの判断が必要になり、また売却できない場合は相続土地国庫帰属制度を利用し不動産を処分することも考慮する必要が出てきました。 これに対する判断材料として下記の記事をご参照頂ければと思います。
空き家等とは
建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。)をいう
「空家等」と判断する基準としては、水道、電気、ガスの使用実績や人の出入りの有無が、1年を通してない状態などを、考慮すべき要素としています。
管理不全空き家等と固定資産税
空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律が2023年6月14日に公布されました。 その内容は、管理が適切にできていない状態の空き家で、このまま放置しておくといずれ特定空き家になると予測される家屋に対して、市町村が管理不全空き家に指定することが出来ることになりました。 その結果、下記の様な固定資産税の課税に重要な変化が生じることとなりました。
空き家の状況 | 空き家の内容 | 固定資産税の状況 |
⑴管理不全空き家 | (内容) 管理が適切に行われていないとみなされる空き家で、市町村が指定します。例えば、建物のガラスが一部損壊していたり、建物の壁等ににヒビが入っている等、また雑草が生えている、ゴミが放置されているなどの状態の空き家で、このまま放置しておくといずれ特定空き家になると予測される家屋が該当します。 この管理不全空き家の具体的基準はまだ決まっておりません。 | ①住宅用地の特例制度の適用あり 固定資産税の1/6(200㎡以下の部分) 及び1/3(200㎡超の部分) ➁勧告を受けた段階で住宅用地の特例制度の適用がなくなります |
(市町村の措置) 市町村がこの⑴家屋に対して改善の指導をし、その後改善されない場合に勧告します。 改善されれば管理不全空き家の指定を取り消します。 ① 指導 ↓ ➂ 勧告 | ||
⑵特定空き家 | (内容) 管理が適切に管理されていないとみなされる空き家で下記の条件に該当する空き家で、市町村が指定します。 空家対策特別措置法第2条2項では、次のいずれかに該当するものを「特定空家等」と定義しています。 1.そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態 2.そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態 3.適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態 4.その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状 | ①住宅用地の特例制度の適用あり 固定資産税の1/6(200㎡以下の部分) 及び1/3(200㎡超の部分) ➁勧告を受けた段階で住宅用地の特例制度の適用がなくなります |
(市町村の措置) ① 調査・助言 ↓ ➁ 指導 ↓ ➂ 勧告 ↓ ➃ 命令 なお、特定空家に指定されてしまった場合でも、特定空き家になる要因となった箇所を改善した場合に、この改善が認められれば、指定を解除されます。 |
注1 [管理不全空き家]と[特定空き家]の違いは、[特定空き家]については市町村の行政代執行が適用され、また[管理不全空き家]には適用がありません。
注2 固定資産税はこの勧告を受けた翌年から軽減のない固定資産税になります。
居住用の住宅用地に対する固定資産の軽減措置
区分 | 固定資産税 | 都市計画税 |
小規模住宅用地(200㎡以下の部分) | 固定資産税×1/6 | 都市計画税×1/3 |
一般住宅用地(200㎡超の部分) | 固定資産税×1/3 | 都市計画税×2/3 |