医業 個人と医療法人の違い
個人と医療法人の違い
税 金
個人と法人の税金上の差異
⑴所得税、住民税、事業税、消費税の違い
①設 例 *所得税と住民税の所得控除額は多少異なりますが、便宜上同じ金額で計算し、法人市県民税の均等割りは標準金額にて計算していますのでご了承下さい *令和3年の税法に基づき計算 *消費税は免税事業者として計算しない *個人の開業医の所得 (青色事業専従者給与控除前) 2,000万円 所得控除合計200万円 *自由診療に係る分所得300万として計算 *妻の青色事業専従者給与収入 600万円 所得控除合計100万円 *妻の給与は500~600万円が多いと言われています(業務内容、他の従業員の給与との比較、他医院との比較して妥当な金額でなおかつ届け出の範囲内との制限があります) (個人の場合の税金)
項目 | 本人 | 青色事業専従者 | 備考 |
所得税 | 2,424,000円 | 244,500円 | 本人課税所得1,200万円 2000万円-600万円=1200万円 妻336万円(給与所得控除後の金額) |
住民税 | 1,200,000円 | 336,000円 | 課税所得の10% |
事業税 | 5,000円 | 0 | |
合計 | 3,629,000円 | 580,500円 | 4,209,500円(2人合計) |
(医療法人の場合の税金)
項目 | 法人 | 院長 | 法人理事(家族理事) | 備考 |
課税所得 | - | 10,050,000円 | 3,360,000円 | 院長分 1400万の所得控除後の金額-200 理事分 436(給与所得控除後の金額)-100 |
法人税 | 0円 | - | - | 課税所得0 2000万(所得)-1400万(院長報酬) -600万(理事報酬) |
所得税 | - | 1,780,500円 | 244,500円 | |
住民税 | 72,000円 | 1,005,000円 | 336,000円 | 課税所得の10% |
事業税 | 0円 | 0円 | ||
合計 | 72,000円 | 2,785,500円 | 580,500円 | 3,438,000円(全ての合計) |
*院長及び他の家族役員の給与は法人が自由に決められますが、多すぎると過大役員報酬として一部否認されることがありますので適切に決める必要が有ります この設例では約80万円程の差が有りますが、これ以上所得が増えれば、各役員の報酬次第で益々法人の方が有利なるものと予想できます
⑵その他経費について
退職金
個人は自分自身及び家族に退職金は支給できませんが、法人は理事長及び役員になっている家族に適正な金額の退職金を支給することができます
生命保険料
個人は自分自身の生命保険料を支払っても所得控除で最高5万円の控除しかありませんが、法人で役員に対する掛け捨ての定期保険に加入すれば原則全額損金算入されますし、終身保険でも一部損金算入されます
(3)会計期間
個人
毎年1月1日から12月31日
法人
任意の1年間(医療法人は決算日を自由に決定することができます)
(4)相続税対策
個人は相続発生時に個人所有の医療施設、医療器具等を含むすべての財産が課税対象になりますが、出資持分のない医療法人(平成19年4月1日以後設立等)の場合はその出資持分がないので相続税の課税対象にはならず、また、出資持分のない医療法人のうち基金拠出型医療法人の場合は基金に拠出する部分のみが課税対象になる等、相続税の対策が容易となります。 また出資持分の有る医療法人は現在出資持分のない医療法人に移行期間中でありますので詳しい説明は省略致しますが、もし移行しなければ出資者の持分権(注)は相続税の課税対象になります。 (注)持分権とは出資比率に応じて、その医療法人の財産を保有する権利
管 理 運 営
個人の場合
開業時
保健所に診療所開設届を提出し、保険診療を行う場合は地方厚生局に保険医療機関指定申請書等を必要に応じ提出します
変更時
届け出が必要な変更のみ届け出
廃業時
保健所に診療所廃止届、地方厚生局に保険医療機関廃止届を提出
法人の場合
開業時
保健所に診療所開設届を提出し、保険診療を行う場合は地方厚生局に保険医療機関指定申請書等を必要に応じ提出します。 ただし医療法人設立のための手続きとして都道府県へ設立認可申請書類(提出書類として役員予定者の履歴書、設立総会議事録、医療機関の敷地平面図、建物の構造平面図等ほか都道府県が指定する様々な書類)を提出し、その認可を受けなければならないため、設立までに相当長期間必要とします
変更時
毎決算期ごとに法務局へ資産総額変更登記をし、都道府県に医療法人決算届、医療法人登記事項変更届を提出し、役員の変更の場合は医療法人役員変更届を提出する必要が有ります
廃業時
個人と同じく保健所に診療所廃止届、地方厚生局に保険医療機関廃止届を提出する他、医療法人を消滅させる手続きが発生します
事業の発展性
*医療機関の数 個人は一か所の医療機関しか開設できませんが、医療法人は数か所開設できます。 *事業の種類 介護事業も個人より多くの介護事業(介護老人施設、訪問介護ステ-ション、有料老人ホ-ム等)ができます
所有財産に対する制限
個人の場合は全ての財産は自由に処分できますが、医療法人の場合は法人は別人格であるので法人所有の財産は勝手に処分することができません
事業の承継
個人では他の人に事業を譲る場合、一度自分自身は廃業の手続きをし、譲受人が開設の手続を行う必要がありますが、それに伴い引継ぎ資産、負債等の評価など、かなり煩雑な手続きも必要になります。 しかし法人の場合は理事長が交代することによって事業の承継ができますので、子、孫等に譲る場合も、子、孫等を医療法人の理事、理事長に選任するだけで事業の承継が完了します。