法人 その他
使用人賞与の損金算入時期
概 要
法人が、期末に未払賞与を計上して安易に利益調整することを防ぐため、その賞与の損金算入時期について下記の様な規定が設けられていますのでご注意下さい。 なお、使用人兼務役員に対して支給する賞与のうち、使用人分として支給する賞与も使用人に対して支給する賞与の額に含まれます。
損金算入時期
番号 | 区分 | 条 件 | 損金算入時期 |
1 | 労働協約または就業規則により定められる支給予定日が到来している賞与 | 次の⑴、⑵のいずれにも該当するもの ⑴ 使用人にその支給額が通知されているもの ⑵ その支給予定日またはその通知をした日の属する事業年度においてその支給額につき損金経理したもの | その支給予定日またはその通知をした日のいずれか遅い日の属する事業年度 |
2 | 次に掲げる要件のすべてを満たす賞与 | ⑴ その支給額を、各人別に、かつ、同時期に支給を受けるすべての使用人に対して通知をしていること。 (注1) 法人が支給日に在職する使用人のみに賞与を支給することとしている場合のその支給額の通知は、ここでいう「通知」には該当しません。 (注2) 法人が、その使用人に対する賞与の支給について、いわゆるパートタイマーまたは臨時雇い等の身分で雇用している者(雇用関係が継続的なものであって、他の使用人と同様に賞与の支給の対象としている者を除きます。)とその他の使用人を区分している場合には、その区分ごとに支給額の通知を行ったかどうかを判定することができます。 ⑵ (1)の通知をした金額を通知したすべての使用人に対しその通知をした日の属する事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払っていること。 ⑶ その支給額につき(1)の通知をした日の属する事業年度において損金経理をしていること。 | 使用人にその支給額の通知をした日の属する事業年度 |
3 | 上記1および2に掲げる賞与以外の賞与 | その支払をした日の属する事業年度 |
役員報酬の支給方法及び変更の仕方
役員報酬の種類
⑴定期同額給与
毎月の給与がその事業年度の支給時に同額である給与(したがって臨時に支給する役員賞与等は原則除かれます)は法人税の所得の計算上損金算入されます
(原則改定)
役員の報酬額を変更する場合に、その報酬額を法人税の損金に算入するためには原則として事業年度開始の日から3月を経過する日までにする変更する必要が有ります
(臨時改定)
その法人の役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他やむを得ない事情によりされたそれらの役員にかかる定期給与額の改定はその都度
(事業悪化による改定)
その法人の経営の状況が著しく悪化したことによることその他これに類する理由によりされた定期給与の減額改定はその都度
*3月以内の改定以外の場合は変更を認められない場合もありますので慎重に行う必要が有ります
⑵事前確定届出給与
所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づき支給する給与及び賞与(定期同額給与及び利益連動給与を除く)で納税地の所轄税務署長に事前確定届出給与に関する届出書を提出したもの。 したがって支給時期又は金額が届出書と異なった場合は損金に算入されませんので注意を要します
(届出の期限)
通常の場合
次のいずれか早い日
①株主総会等で決議した日から1月を経過する日
➁その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から4月を経過する日
新設法人の場合
会社設立の日以後2月を経過する日
臨時改定の場合
事由が発生した日から1月を経過する日
事業悪化改定の場合
届出書の内容の変更に関する決議をした日から1月を経過する日
⑶利益連動型給与
同族会社以外の法人で一定の条件で利益連動型役員賞与の損金算入を認める制度
⑷相当の額を超える報酬の取り扱い
⑴~⑶の役員に支給する給与額のうち不相当に高額な給与の金額(その役員の職務の内容、類似法人の支給金額等と比較し相当な金額を超える金額)は損金の額に算入しない
不相当な額 = ⑴~⑶支給金額 - 相当額 |
出向先法人の給与等負担金
出向先法人の給与負担金
概況
最近、系列会社間等で社員の出向、転籍等が多く行われています。 法人の使用人が他法人に出向した場合において、その出向した使用人に対する給与を出向元の法人が支給することとしているため、出向先の法人がその出向者の給与(除く退職給与)に相当する金額(給与負担金)を出向元の法人に支払った場合には、その金額がを労働の対価として相当な金額である場合は、当該給与負担金の額は、出向先の法人におけるその出向者に対する給与(除く退職給与)として取り扱われます。
負担金の処理
出向先での状況 | 負担金の処理 |
⑴ 出向者が出向先の法人において使用人である場合 | 原則損金算入 |
⑵ 出向者が出向先の法人において役員となっている場合で下記2要件を満たすとき ① 当該役員に係る給与負担金の額について、当該役員に対する給与として出向先の法人の株主総会、社員総会またはこれらに準ずるものの決議がされていること ➁ 出向契約等において当該出向者に係る出向期間および給与負担金の額があらかじめ定められていること [注] その給与負担金について、事前確定届出給与の規定の適用を受ける場合には、出向先の法人がその納税地の所轄税務署長にその届け出をする必要があります | 原則損金算入 |
⑶ 出向先の法人が給与負担金として支出した金額が、出向元の法人が当該出向者に支給する給与の額を超える場合 | 超える部分の負担金は寄附金に該当 |
出向先法人の退職金の負担金
概況
出向者の出向期間中に対応する退職金については出向先の法人が負担すべきものとして、通常、出向先の法人から出向元の法人へ負担金が支出されています。
負担金の処理
負担金の支出時期 | 負担金の処理 |
出向先の法人から出向元の法人へ復帰した時または出向元の法人を退職した時に負担金を支出する場合 | 原則として、出向先の法人の支出した事業年度の損金の額に算入されます |
出向先法人が、出向者に対して出向元法人が支給すべき退職給与の額に充てるため、あらかじめ定めた負担区分に基づき、当該出向者の出向期間に対応する退職給与の額として合理的に計算された金額を定期的に出向元法人に支出している場合 | その支出する金額は、たとえ当該出向者が出向先法人において役員となっているときであっても、その支出をする日の属する事業年度の損金の額に算入する |
出向者に対する給与の較差補填金
出向元の法人が出向先の法人との給与条件の較差を補てんするため出向者に対して支給した給与(出向先法人を経て支給した金額を含む。)は、出向元の法人の損金の額に算入されます。
この給与較差補填金は、出向元の法人が出向者に直接支給しても、出向先の法人を通じて支給しても同様に取り扱われます。
また、下記ような場合も、給与較差補てん金に該当いたします。
内 容 | |
1 | 出向先の法人が経営不振等で出向者に賞与を支給することができないため、出向元の法人が当該出向者に対して支給する賞与の額 |
2 | 出向先法人が海外にあるため出向元法人が支給するいわゆる留守宅手当の額 |
退職給与引当金の概要
原則、会計上は正確な期間損益を計算するため退職給与引当金を計上する必要がありますが、現在の法人税法上は退職給与引当金の繰入額は損金算入が認められていません。
以前は期末時点の退職給与規定に基づき計算された要支給額の一定額までは損金算入が認められていましたが、平成14年の改正により損金不算入となりました。 同時に経過措置としてこれまでの退職給与引当金の取崩を10年にわたって処理することになりました。
これは法人が実際に使用人の退職時に退職金を支給しなかったり、少なく支払ったりすることがあり、社内留保による退職引当金に本当に負債性があるかどうかという問題が浮上したため等、これらを是正するためにこの様な改正になりました。
したがいまして現在では従業員の退職金を実際に支給した時に損金算入が原則ですが、この欠点を補うため、その退職金及び年金の準備のため下記の様な制度があり、その掛け金は法人の支払い時に損金算入されますので、ご利用されることをお勧めいたします。
退職金等支払準備のための制度
区分 | 確定給付企業年金 | 企業型確定拠出年金* | 中小企業退職金共済(中小企業のみ加入可) |
種別 | 企業年金 | 企業年金 | 共済 |
受給額 | 運用成績により金額が変動しない | 運用成績により金額が変動する | 運用成績により金額が変動しない |
受取り方法 | 一時金又は年金 退職後に受取り可能 | 一時金又は年金 但し、原則60歳以上に制限 | 一時金又は分割払い 退職後に受取り可能 |
運用方法 | 一般的に資産運用機関などが委託運用 | 加入者自身が行う | 機構が行う |
加入対象者 | 役員も加入可 (厚生年金保険被保険者) | 役員も加入可 (厚生年金保険被保険者) | 従業員のみ加入可 (要全員加入) |
確定給付企業年金とは
確定給付企業年金には下記の2種類があります。
種 類 | 区 分 | 内 容 |
基金型 | 単独型 | 企業が厚生労働大臣の認可を受けて企業年金基金(特別法人)を設立し、確定給付企業年金事業を行う |
複数事業主型 | 企業が複数の事業主が共同で企業年金基金(特別法人)を設立又は加入し、確定給付企業年金事業を行う | |
規約型 | 企業が主体となって、確定給付企業年金事業を行います。 実際の運用は信託会社や生命保険会社などに任せることも出来ます。 |
企業型確定拠出年金とは
確定拠出年金には下記の2種類があります。
区 分 | 内 容 | |
個人型確定拠出年金 | 個人で掛金を支払う「個人型」確定拠出年金 | |
企業型確定拠出年金 | 規約型 | 企業が生命保険会社もしくは信託会社(生命保険会社等)と契約をし、企業は規約にもとづいて定期的に掛金を拠出し、生命保険会社・信託会社が年金資産を管理・運用し、年金給付を行います。 |
基金型 | 企業が法人格を持った企業年金基金を設立し、基金が、管理・運用・給付を行う企業年金制度です。 |
中小企業退職金共済とは
中小企業のために設けられた退職金制度で、独立行政法人勤労者退職金共済機構 中小企業退職金共済事業本部(中退共)が運営を行っています。 従業員が退職した場合、退職金は中小企業退職金共済から直接従業員に支払われます。
中小企業退職金共済(中退共)に加入できる企業の条件
この制度に加入できるのは、次の企業です。 ただし、個人企業や公益法人等の場合は、常用従業員数(一週間の所定労働時間が同じ企業に雇用される通常の従業員とおおむね同等である者であって、雇用期間の定めのない者、雇用期間が2か月を超えて使用される者を含みます。)によります。
業種 | 常用従業員数 | 資本金・出資金 | |
---|---|---|---|
一般業種(製造業、建設業等) | 300人以下 | または | 3億円以下 |
卸売業 | 100人以下 | または | 1億円以下 |
サービス業 | 100人以下 | または | 5千万円以下 |
小売業 | 50人以下 | または | 5千万円以下 |
確定給付企業年金等
概要
使用人の退職後の退職金の支給又は年金給付を行うため、事業主が各事業年度等(各事業年度又は各年)に支出する掛金およびその後に使用人が受け取る退職年金又は退職一時金の課税関係は下記のようになっていますのでご参照下さい。
課税関係
区 分 | 事業主側 | 使用人側 | |
事業主が支出する掛け金 | 損金又は必要経費 | 支出時には給与等としての課税関係は生じません。 | |
ただし掛け金の一部を使用人が負担した場合 | ①確定給付企業年金法第3条第1項に規定する確定給付企業年金に係る規約に基づいて支出した掛金―生命保険控除の対象 ➁確定拠出年金法に規定する企業型年金規約に基づいて企業型年金加入者のために支出した事業主掛金―小規模企業共済等掛金控除の対象 | ||
(例外) 信託銀行等に積み立てられている退職年金等積立金 ― 原則として、毎年1パーセントの税率で法人税が課税されます ただし、平成11年4月1日から令和8年3月31日までの間に開始する事業年度の退職年金等積立金に対しては、法人税を課さないこととされています | - | ||
使用人が退職に伴って受け取る退職年金等 | ― | 退職年金として給付されたもの | ①公的年金等に該当し、雑所得として課税されます |
一時金として受け取ったもの | ①みなし退職手当等に該当し、退職所得として課税されます |
リース取引
分 類
リ-ス取引はその種類により下記の様に分類し、それぞれ下記の方法で処理します
分類表
リ-スの種類 | 詳 細 | 処理基準 | リース料の処理 | 会計上の処理方法 |
所有権移転ファイナンスリ-ス | リ-ス期間中にキャンセルが出来なくて、資産に関して発生する費用は自己負担で期間終了時に所有権が移転する契約 | - | リ-ス料の合計額を取得資産の取得価額に計上 | 耐用年数に応じて減価償却 |
所有権移転外ファイナンスリ-ス | リ-ス期間中にキャンセルが出来なく、資産に関して発生する費用は自己負担で期間終了時に所有権が移転しない契約 | 原 則 | リ-ス料の合計額を取得資産の取得価額に計上 | リ-ス期間定額法で減価償却 |
特 例(中小企業) | 一定の条件のもと例外的に支払時にリース料を損金に算入することが出来ます | 支払時に損金処理 | ||
オペレ-ティングリ-ス | 途中でキャンセルが出来る契約 | - | 支払リ-ス料をリ-ス料として損金処理 | 支払時に損金処理 |
用語の解説
*所有権移転ファイナンスリ-ス
リ-ス期間中にキャンセルが出来ず、資産に関して発生する費用は自己で負担し、リ-ス期間終了時に所有権が移転する契約
*所有権移転外ファイナンスリ-ス
リ-ス期間中にキャンセルが出来ず、資産に関して発生する費用は自己で負担し、リース期間終了時に所有権が移転しない契約
*オペレ-ティングリ-ス
リ-ス期間中に途中でキャンセルが出来る契約
*(例外1)の処理が出来る場合
借主が中小企業である場合で、リース期間が1年以内のリース契約の場合もしくはリース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下の場合
*損金経理した支払リ-ス料
損金経理した支払リ-ス料は『償却費として損金経理した金額』として取り扱われます
*オペレ-ティングリ-スとレンタルの違い
⑴オペレ-ティングリ-ス 借り手が資産を指定し、リース会社が資産を新たに調達して貸し出す取引
⑵レンタル 借り手が資産を選ぶことが出来ず、貸し手の不特定多数に貸し出している資産の中から賃借する取引
所有権移転ファイナンスリ-スと所有権移転外ファイナンスリ-スの税法上の差異
所有権移転ファイナンスリ-スと所有権移転外ファイナンスリ-スはリ-ス料総額を資産計上する点では同じですが、税法上の取り扱い方に下記の様な差異が有りますので注意が必要です
差異表
〇 適用あり × 適用なし
償却等の処理 | 所有権移転ファイナンスリ-ス | 所有権移転外ファイナンスリ-ス |
特別償却 | ○ | × |
特別控除 | ○ | ○ |
圧縮記帳 | ○ | × |
少額減価償却資産(10万円未満) | ○ | × |
一括償却資産 | ○ | × |
中小企業者等の特例 (30万円未満) | ○ | ○ |
貸倒損失
概 略
法人の有する金銭債権(金銭の給付を目的とする債権をいい、これには、預金、受取手形、売掛金、貸付金等が含まれる。)について、貸倒損失の計上が認められるための事実とその対象となる金額および損金算入時期は次のとおりです。
金銭債権が切り捨てられた場合
次に掲げるような事実に基づいて切り捨てられた金額は、その事実が生じた事業年度の損金の額に算入されます。
(1) 会社更生法、金融機関等の更生手続の特例等に関する法律、会社法、民事再生法の規定により切り捨てられた金額
(2) 法令の規定による整理手続によらない債権者集会の協議決定および行政機関や金融機関などのあっせんによる協議で、合理的な基準によって切り捨てられた金額
(3) 債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができない場合に、その債務者に対して、書面で明らかにした債務免除額
金銭債権の全額が回収不能となった場合
債務者の資産状況、支払能力等からその全額が回収できないことが明らかになった場合は、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理することができます。ただし担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ損金経理はできません。
なお、保証債務は現実に履行した後でなければ貸倒れの対象とすることはできません。
一定期間取引停止後弁済がない場合等
次に掲げる事実が発生した場合には、その債務者に対する売掛債権(貸付金などは含みません。)について、その売掛債権の額から備忘価額を控除した残額を貸倒れとして損金経理をすることができます。
(1) 継続的な取引を行っていた債務者の資産状況、支払能力等が悪化したため、その債務者との取引を停止した場合において、その取引停止の時と最後の弁済の時などのうち最も遅い時から1年以上経過したとき(ただし、その売掛債権について担保物のある場合は除きます。)
なお、不動産取引のように、たまたま取引を行った債務者に対する売掛債権については、この取扱いの適用はありません。
(2) 同一地域の債務者に対する売掛債権の総額が取立費用より少なく、支払を督促しても弁済がない場合
貸倒引当金
貸倒引当金の概要
法人税において、貸倒引当金の繰入限度額の計算は、個別評価金銭債権と一括評価金銭債権とに区分してそれぞれ計算することになっています。
個別評価金銭債権に対する繰り入れ限度額
個別の債権について下記の様な事実が発生した場合に、所定の金額の貸倒引当金が計上出来ます。 なお下記に代表的なものについて掲載しますが、詳細は国税庁に確認して下さい。
事実関係 | 限度額 |
当該事業年度終了の時において、債務者に更生計画認可の決定等により弁済を猶予され、又賦払により弁済される事実があること | 計画により5年超えて、返済される債権の金額 |
債務者に債務超過の状態が相当期間継続し、かつ、その事業に好転の見通しがないことでその金額の一部が取り立て等の見込がないこと等 | 当該一部の債権の金額 |
当該事業年度終了の時において債務者に更生手続き開始の申し立て等の事実があること | 金銭債権の額×50/100相当額 |
一括評価金銭債権に対する繰り入れ限度額
一括評価金銭債権に該当するもの
番号 | 明 細 |
1 | 売掛金、貸付金 |
2 | 未収の譲渡代金、未収加工料、未収請負金、未収手数料、未収保管料、未収地代家賃等または貸付金の未収利子で、益金の額に算入されたもの |
3 | 他人のために立替払をした場合の立替金(下記の「一括評価金銭債権に当たらないもの」の(4)に当たるものを除きます。) |
4 | 未収の損害賠償金で益金の額に算入されたもの |
5 | 保証債務を履行した場合の求償権 |
6 | 売掛金、貸付金などの債権について取得した受取手形 |
7 | 売掛金、貸付金などの債権について取得した先日付小切手のうち法人が一括評価金銭債権に含めたもの |
8 | 売買があったものとされる法人税法上のリース取引のリース料のうち、支払期日の到来していないもの |
一括評価金銭債権に該当しないもの
番号 | 明 細 |
1 | 預貯金およびその未収利子、公社債の未収利子、未収配当その他これらに類する債権 |
2 | 保証金、敷金、預け金その他これらに類する債権 |
3 | 手付金、前渡金等のように資産の取得の代価または費用の支出に充てるものとして支出した金額 |
4 | 前払給料、概算払旅費、前渡交際費等のように将来精算される費用の前払として、一時的に仮払金、立替金等として経理されている金額 |
5 | 金融機関における他店為替貸借の決済取引に伴う未決済為替貸勘定の金額 |
6 | 証券会社または証券金融会社に対し、借株の担保として差し入れた信用取引に係る株式の売却代金に相当する金額 |
7 | 雇用保険法、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律、障害者の雇用の促進等に関する法律等の法令の規定に基づき交付を受ける給付金等の未収金 |
8 | 仕入割戻しの未収金 |
9 | 保険会社における代理店貸勘定の金額 |
10 | 法人税法第61条の5第1項(デリバティブ取引に係る利益相当額の益金算入等)に規定する未決済デリバティブ取引に係る差金勘定等の金額 |
11 | 法人がいわゆる特定目的会社(SPC)を用いて売掛債権等の証券化を行った場合において、その特定目的会社の発行する証券等のうちその法人が保有することとなったもの |
実績繰入率に基づく計算(原則)
繰入限度額 = 期末一括評価金銭債権の帳簿価額の合計額(実質的に債権と認められない金額は除く) × 貸倒実績率(注) |
(注) 貸倒実績率は、次の算式により、小数点以下4位未満を切り上げて計算します。
※ 算式中の「月数」については、暦に従って計算し、1か月に満たない端数が生じたときは、これを1か月とします。
なお、貸倒引当金を繰り入れることのできる適用法人は次の1から5までに掲げる法人に該当する法人に限定されています。
(繰り入れができる法人)
番号 | 繰り入れができる法人の種類 | 詳 細 |
1 | 普通法人(次の詳細(3)から(5)までを除きます。)のうち、各事業年度終了の時において資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下であるもの(次の詳細(1)または(2)に掲げる法人に該当するものおよび大通算法人を除きます。)または資本もしくは出資を有しないもの(大通算法人を除きます。)です。 | ⑴ 大法人(次のイからハまでに掲げる法人をいいます。以下1において同じです。)との間にその大法人による完全支配関係がある普通法人 イ 資本金の額または出資金の額が5億円以上の法人 ロ 相互会社および外国相互会社 ハ 受託法人 (2)普通法人との間に完全支配関係があるすべての大法人が有する株式および出資の全部をそのすべての大法人のうちいずれか一の法人が有するものとみなした場合においてそのいずれか一の法人とその普通法人との間にそのいずれか一の法人による完全支配関係があることとなるときのその普通法人(上記(1)に掲げる法人を除きます。) ⑶ 投資法人 ⑷ 特定目的会社 ⑸ 受託法人 |
2 | 公益法人等または協同組合等 | |
3 | 人格のない社団等 | |
4 | 銀行、保険会社その他これらに準ずる法人 | |
5 | 金融に関する取引に係る金銭債権を有する一定の法人(上記1から4までに掲げる法人を除きます。) ただし、この制度の対象となる金銭債権が一定の金銭債権に限定されています。 |
法定繰入率に基づく計算(中小法人等向けの特例)
下記1の各法人については、繰入限度額の計算に当たり、一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の上記「実績繰入率に基づく計算」の代わりに、下記2の繰入限度額の計算によることが認められています。
1 対象となる法人
番号 | 法人の種類 |
⑴ | 中小法人 |
⑵ | 公益法人等または協同組合等 |
⑶ | 人格のない社団等 |
(注) 中小法人とは上記「実績繰入率に基づく計算(原則)」※の1に掲げる法人に該当するものです。ただし、適用除外事業者(その事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人等をいいます。)または通算制度における適用除外事業者については適用対象から除かれます。
2 繰入限度額
(法定繰入率)
業 種 | 法定繰入率 |
卸売業および小売業(飲食店業および料理店業を含むものとし、割賦販売小売業を除きます。) | 10/1000 |
製造業 | 8/1000 |
金融業および保険業 | 3/1000 |
割賦販売小売業ならびに包括信用購入あっせん業および個別信用購入あっせん業 | 7/1000 |
その他 | 6/1000 |
繰入限度額の割増しの特例(公益法人等または協同組合等向けの特例)
公益法人等または協同組合については、一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の繰入限度額の計算を上記「実績繰入率に基づく計算(原則)」または「法定繰入率に基づく計算(中小法人または公益法人等もしくは協同組合等向けの特例)」のいずれかの方法で行った場合であっても、下表のとおり繰入限度額を割増しすることが認められています。
次の期間に開始する事業年度 | 割増率 |
令和3年4月1日から令和4年3月31日まで | 104% |
令和4年4月1日から令和5年3月31日まで | 102% |
令和5年4月1日以後 | (制度廃止) |
各種有価証券の有価証券評価損
売買目的有価証券の定義
株式などの有価証券を短期的な資金運用によってキャピタルゲインなどの運用益を目的として保有する場合は「売買目的有価証券」になります。 ただし法人税法上はより限定的に、証券会社や金融機関でディーリング部門など専門の部署を設けて運用している有価証券や、それ以外に取得日に短期売買目的で取得したものである旨を帳簿書類に記載したもの等がこの売買目的有価証券に該当すると規定されています。
売買目的有価証券の有価証券評価損
法人の所有している売買目的有価証券は、法人税法上期末時点で時価評価する必要があります。 期末時点の時価とは一般的に、証券取引所(金融商品取引所)において公表された事業年度終了の日の最終の売買価格(事業年度終了の日の最終の売買価格がない場合には、事業年度終了の日の最終の気配相場の価格、または合理的な方法により計算した金額となります)をいいます。 取得価格と時価の差額については、有価証券評価損又は有価証券評価益で計上し損金又は益金に算入します。
一般の有価証券の有価証券評価損
概要
法人が所有する有価証券について、下記の様な事由が生じた場合には、原則として、帳簿価額と時価との差額など一定の金額を限度として評価損の計上が認められます。 完全支配関係がある子会社で清算中の法人等および通算法人が有する他の通算法人(通算親法人等を除きます。)の株式等に対し計上する評価損は除きます。
この評価損については時価法による評価損益と異なり翌事業年度での洗替計算をする必要はありません。
有価証券の評価損が認められる場合
1 法人の所有する有価証券について下記のょうな事実が生じた場合で、その法人がその有価証券の評価換えをして損金経理によりその帳簿価額を減額したとき | ||
区 分 | 事 実 | |
⑴上場有価証券等 取引所売買有価証券、店頭売買有価証券、取扱有価証券およびその他価格公表有価証券等の一定の有価証券(いずれも企業支配株式に該当するものを除きます。) | その価額が著しく低下したことにより、その価額が帳簿価額を下回ることとなったこと。 (注1)「有価証券の価額が著しく低下したこと」とは、 ①当該有価証券の当該事業年度終了の時における価額がその時の帳簿価額のおおむね50%相当額を下回ることとなり、かつ、 ➁近い将来その価額の回復が見込まれないことをいうものとする。 (注2)回復可能性がないことについて法人が用いた合理的な判断基準が示される限りにおいては、その基準が尊重されることとなります。 したがって、必ずしも株価が過去2年間にわたり帳簿価額の50%程度以上下落した状態でなければ損金算入が認められないというものではありません。 | |
⑵非上場有価証券 上記(1)以外の有価証券 | その有価証券を発行する法人の資産状態が著しく悪化したため、その価額が著しく低下したことにより、その価額が帳簿価額を下回ることとなったこと。 (注)有価証券を発行する法人の資産状態が著しく悪化したこと」には、次に掲げる事実がこれに該当する。 ① 当該有価証券を取得して相当の期間を経過した後に当該発行法人について次に掲げる事実が生じたこと。 イ 特別清算開始の命令があったこと。 ロ 破産手続開始の決定があったこと。 ハ 再生手続開始の決定があったこと。 ニ 更生手続開始の決定があったこと。 ➁ 当該事業年度終了の日における当該有価証券の発行法人の1株又は1口当たりの純資産価額が当該有価証券を取得した時の当該発行法人の1株又は1口当たりの純資産価額に比しておおむね50%以上下回ることとなったこと。 ③ 上記①、➁に準ずる特別の事実 | |
2 法人の所有する有価証券について、更生計画認可の決定があったことにより、会社更生法または金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の規定に従って評価換えをしてその帳簿価額を減額したときの規定に従って評価換えをしてその帳簿価額を減額したとき | ||
3 有価証券を所有する法人について、再生計画認可の決定があったこと又は再生計画認可の決定に準ずる事実が生じた場合で、その法人が売買目的有価証券および償還有価証券以外の一定の有価証券の価額について再生計画認可の決定があった時の価額により行う評定などの評定を行っているとき |
ホ-ムペ-ジの製作費等の処理
ホ-ムペ-ジの製作費の処理
ホ-ムペ-ジの製作費の処理については、HPの内容によって下記のように処理します。(以前、課税当局に掲載されていた処理方法が現在削除されていますが、現在も以前の内容と変更はないようですので、以前の内容で掲載します)
参照
国税庁 取扱通知(平成9年7月28日)
通常、 ホームページ(HTMLと言う言語の組合わせで、ブラウザソフトで閲覧するもの) の中には、コンピュータプログラムは組み込まれておらず、その制作を業者等に委託した場 合であっても、制作費用の中には繰延資産に該当するソフトウェアの開発費用は含まれていない。 また、通常、ホームページは企業や新製品のPRのために制作され、その内容は頻繁に 更新されるもので、長年にわたり繰り返し使用できるものではなく、その制作に係る費用の 効果が1年以上に及ぶことは稀であると考えられる。 よって、ホームページの制作を他の者に 委託した場合の費用は、原則として、その支出時の損金として取扱うのが相当である。
(削除された国税庁資料)
質問 | Q1 インターネット上に広告宣伝用のホームページを開設しました。その制作のために業者に委託した費用は、広告宣伝費等として一時の損金にするのでしょうか。それとも、繰延資産として償却するのでしょうか。 |
回答 | A1 通常、ホームページは企業や新製品のPRのために制作されるものであり、その内容は頻繁に更新されるため、開設の際の制作費用の支出の効果が1年以上には及ばないと考えられますので、ホームページの制作費用は、原則として、その支出時の損金として取り扱うのが相当であると考えられます。 ただし、ホームページの内容が更新されないまま使用期間が1年を超える場合には、その制作費用はその使用期間に応じて償却します。 また、制作費用の中にプログラムの作成費用(ソフトウェアの開発費用)が含まれるようなホームページについては、その制作費用のうちプログラムの作成費用に相当する金額は無形減価償却資産(ソフトウェア)として耐用年数「5年」を適用して償却することとなります。 |
(法令13、耐令別表第三) |
ホ-ムペ-ジの製作費の処理方法 | |||
区分 | 広告宣伝費(費用処理) | 繰延資産又は 長期前払費用(資産計上) | 無形固定資産(資産計上) |
HPの内容 | 1年以内に内容を更新する場合 | 1年以内に内容を更新しない場合 | ソフトウェア機能のような高度な機能が搭載されているホームページの場合 |
HPの機能(wordpressで作成したHPも含む) | 会社、個人及び商品の専ら広告宣伝のためのもので特別な機能はなし | 会社、個人及び商品の専ら広告宣伝のためのもので特別な機能はなし | 下記の様な高度な機能を保有している ⑴会員登録機能、ログイン機能 ⑵オンラインショッピング機能(ショッピングカート機能、クレジットカードなど入金処理機能など) ⑶サイト内検索機能 ⑷予約システム・会員システム |
耐用年数 | 支払い時に全額損金算入又は必要経費算入 | 使用期間に応じて均等償却 | 1 「複写して販売するための原本」または「研究開発用のもの」 3年 2 「その他のもの」 5年 |
取得費が30万円未満で青色申告の中小企業者の場合、年間合計300万円まで | 支払い時に全額損金算入又は必要経費算入 | 支出年度で全額損金又は必要経費 | 支出年度で全額損金又は必要経費 |
ホムペ-ジの維持管理費
内容 | 通信費 | 広告宣伝費 |
ドメイン取得費 | 〇 | |
サーバー費用 | 〇 | |
SSL証明書取得費用 | 〇 | |
コンテンツ制作費 | 〇 | |
SEO費用 | 〇 |
補助金及び助成金の種類
ホ-ムペ-ジの製作費に対する補助金又は助成金は条件等が厳しく、適用が可能かどうかわかりりませんが、下記補助金等に該当する可能性もありますので、詳細でご確認ください。
IT導入補助金
経済産業省の管理下で「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」という団体が運営している補助金制度です。
小規模事業者持続化補助金
商工会議所の管轄地域で事業を展開する小規模事業者向けの補助金制度。
事業再構築補助金
経済産業省が提供している補助金制度です。
地方自治体が運営している補助金制度
各自治体にお問い合わせください
レジャ-クラブ・社交団体等に関する支出等
レジャ-クラブの入会金
レジャ-クラブの入会金(宿泊施設、体育設備、遊戯施設等のレジャ-施設でゴルフクラブを除く)の処理は、ゴルフクラブの入会金の処理を準用します。 ただし会員としての有効期間が決まっていて、かつその退会時に返還を受けることが出来ないものは、繰延資産として償却することが出来るものとします。
年会費
年会費その他の費用はその使途に応じて交際費、福利厚生費又は給与となります。
社交団体の入会金
区 分 | 内 容 |
法人会員として入会する場合 | ①退会時に返還を受けることが出来るもの ➡ 資産計上 ➁退会時に返還を受けることが出来るないもの ➡ 支出した日の属する事業年度の交際費 |
個人会員として入会する場合 | ①原則 個人会員たる特定の役員又は使用人の給与となります ➁例外 法人会員制度がないため個人会員としてに入会した場合で、その入会が法人の業務の遂行上必要であると認められる場合は、その入会金は支出の日の属する事業年度の交際費とします |
社交団体の会費等
会費の種類 | 区 分 | 処理内容 |
経常会費 | 入会金が交際費に該当する場合 | 交際費 |
入会金が給与に該当する場合 | 特定の役員又は使用人に対する給与 | |
経常会費以外の費用 | 会費が法人の業務の遂行上必要であると認められる場合 | 交際費 |
特定の役員又は使用人が負担すべきであると認められる場合 | 特定の役員又は使用人に対する給与 |
ロータリ-クラブ及びライオンズクラブの入会金及び会費
番 号 | 区 分 | 内 容 |
1 | 入会金又は経常会費として負担した金額 | 交際費 |
2 | 1以外の負担金 | ①目的に応じて交際費又は寄附金 ➁特定の役員又は使用人が負担すべきであると認められる場合は特定の役員又は使用人に対する給与 |
同業団体等の会費
会費の種類 | 内 容 |
通常会費 | 支出した日の属する事業年度に損金算入。 ただし受け入れ団体に多額の剰余金がある場合は剰余金が適正金額になるまで、前払費用とし処理 |
その他の会費 | 前払費用とし処理し、当該団体が支出した時にその費途に応じて当該法人が支出したものとして処理します (その他の費用の内容) ① 会館その他特別な施設の取得又は改良 ➁ 会員相互の共済 ➂ 会員相互又は業界の関係先等との懇親 ➃ 政治献金その他の寄附 |
社葬費
概略
法人が、その役員または使用人が死亡したため社葬を行い、その費用を負担した場合において、その社葬を行うことが下記要件に該当するときはその支出した日の属する事業年度の損金の額に算入することができます。
⑴社葬を行うことが社会通念上相当と認められること
死亡した役員等の死亡の事情、生前の当該法人への貢献度合等、を総合的に判断することになります。
⑵その負担した金額のうち社葬のために通常要すると認められる金額であること
社葬に要する下記の様な費用です。 基本的に、墓石、仏壇、位牌等費用及び戒名料は故人の遺族が負担すべきものですのでこの費用から除かれます。
内 容 | |
1 | 社葬の告知費用や広告費用 |
2 | 葬儀社に支払う会場費、設営費等の費用 |
3 | お寺さんへの読経料 |
4 | お寺さん及びご来賓等に対する送迎費用 |
5 | 会場への案内費用、会場警備費用 |
6 | 会葬者への礼状代及び、お礼品の費用 |
7 | 会場での食事代 |
受け取った香典等の処理
会葬者が持参した香典等については、法人の収入としないで遺族の収入とすることができます。
海外渡航費
概略
法人税における海外渡航費の取り扱いは法人税の基本通達9-7-6から法人税の基本通達9-7-10に規定されていますので、ご参照頂けれはご理解していただけると思いますので、下記に記載いたします。
(法人税基本通達 9-7-6)(海外渡航費)
法人がその役員又は使用人の海外渡航に際して支給する旅費(仕度金を含む。以下この款において同じ。)は、その海外渡航が当該法人の業務の遂行上必要なものであり、かつ、当該渡航のため通常必要と認められる部分の金額に限り、旅費としての法人の経理を認める。したがって、法人の業務の遂行上必要とは認められない海外渡航の旅費の額はもちろん、法人の業務の遂行上必要と認められる海外渡航であってもその旅費の額のうち通常必要と認められる金額を超える部分の金額については、原則として、当該役員又は使用人に対する給与とする。
(注) その海外渡航が旅行期間のおおむね全期間を通じ、明らかに法人の業務の遂行上必要と認められるものである場合には、その海外渡航のために支給する旅費は、社会通念上合理的な基準によって計算されている等不当に多額でないと認められる限り、その全額を旅費として経理することができる。
(注1) 役員の給与になった場合は定期同額給与に該当しませんので、損金算入されません。
(法人税基本通達 9-7-7)(業務の遂行上必要な海外渡航の判定)
法人の役員又は使用人の海外渡航が法人の業務の遂行上必要なものであるかどうかは、その旅行の目的、旅行先、旅行経路、旅行期間等を総合勘案して実質的に判定するものとするが、次に掲げる旅行は、原則として法人の業務の遂行上必要な海外渡航に該当しないものとする。
(1) 観光渡航の許可を得て行う旅行
(2) 旅行あっせんを行う者等が行う団体旅行に応募してする旅行
(3) 同業者団体その他これに準ずる団体が主催して行う団体旅行で主として観光目的と認められるもの
(注1) 業務のための渡航でも国によっては観光渡航の許可しか出ない場合もありますので、実質判断により行うこととされています。
(法人税基本通達 9-7-8)(同伴者の旅費)
法人の役員が法人の業務の遂行上必要と認められる海外渡航に際し、その親族又はその業務に常時従事していない者を同伴した場合において、その同伴者に係る旅費を法人が負担したときは、その旅費はその役員に対する給与とする。ただし、その同伴が例えば次に掲げる場合のように、明らかにその海外渡航の目的を達成するために必要な同伴と認められるときは、その旅行について通常必要と認められる費用の額は、この限りでない。
(1) その役員が常時補佐を必要とする身体障害者であるため補佐人を同伴する場合
(2) 国際会議への出席等のために配偶者を同伴する必要がある場合
(3) その旅行の目的を遂行するため外国語に堪能な者又は高度の専門的知識を有する者を必要とするような場合に、適任者が法人の使用人のうちにいないためその役員の親族又は臨時に委嘱した者を同伴するとき
(法人税基本通達 9-7-9)(業務の遂行上必要と認められる旅行と認められない旅行とを併せて行った場合の旅費)
法人の役員又は使用人が海外渡航をした場合において、その海外渡航の旅行期間にわたり法人の業務の遂行上必要と認められる旅行と認められない旅行とを併せて行ったものであるときは、その海外渡航に際して支給する旅費を法人の業務の遂行上必要と認められる旅行の期間と認められない旅行の期間との比等によりあん分し、法人の業務の遂行上必要と認められない旅行に係る部分の金額については、当該役員又は使用人に対する給与とする。 ただし、海外渡航の直接の動機が特定の取引先との商談、契約の締結等法人の業務の遂行のためであり、その海外渡航を機会に観光を併せて行うものである場合には、その往復の旅費(当該取引先の所在地等その業務を遂行する場所までのものに限る。)は、法人の業務の遂行上必要と認められるものとして、その海外渡航に際して支給する旅費の額から控除した残額につき本文の規定を適用する。
(注1) 法人の業務の遂行上必要と認められる旅行の期間と認められない旅行の具体時な期間の按分の仕方の一例
同業者団体等が行う視察等のための団体による海外渡航については、課税上弊害のない限り、その旅行に通常要する費用(その旅行費用の総額のうちその旅行に通常必要であると認められる費用をいう。以下同じ。)の額に、旅行日程の区分による業務従事割合を基礎とした損金又は必要経費算入の割合(以下「損金等算入割合」という。)を乗じて計算した金額を旅費として損金の額又は必要経費の額に算入する。
「業務従事割合」は、旅行日程を「①視察等(業務に従事したと認められる日数)」、「➁観光(観光を行ったと認められる日数)」、「➂旅行日」及び「➃その他」に区分し、次の算式により計算した割合とする。
(算式)
①視察等の業務に従事したと認められる日数/(①視察等の業務に従事したと認められる日数+➁観光を行ったと認められる日数)
(法人税基本通達 9-7-10)(業務の遂行上必要と認められない海外渡航の旅費の特例)
法人の役員又は使用人の海外渡航が9-7-7に掲げる旅行に該当する場合であっても、その海外渡航の旅行期間内における旅行先、行った仕事の内容等からみて法人の業務にとって直接関連のあるものがあると認められるときは、法人の支給するその海外渡航に要する旅費のうち、法人の業務にとって直接関連のある部分の旅行について直接要した費用の額は、旅費として損金の額に算入する。
(注1) 具体的な一例として団体旅行の一員として、観光旅行をした場合でも、その途中に現地の取引先等で商談等を行ったときは、この規定に該当することになります。 この場合損金に算入されるのは業務に直接関係ある部分のみに限定されます。
建物の賃借時に支払う権利金等
概 要
法人が建物を賃借りする時に支払った権利金、立退料等の費用、礼金及び敷引等(支払った敷金ゃ保証金で契約が終了した場合にも返還されないもの)がある場合で、その支出効果が1年以上あるものは繰延資産として資産に計上し、その内容によって下記のような耐用年数で償却します。
契約内容による区分
番号 | 契 約 内 容 | 耐用年数 | |
1 | 建物の新築に際して支払った権利金等で、その金額が建物の賃借部分の建設費の大部分に相当し、かつ、その建物が存続する期間中は賃借できる状況にあると認められる場合 | その建物の耐用年数の10分の7に相当する年数 | |
2 | 建物の賃借に際して支払った上記(1)以外の権利金等で、契約や慣習などによって、明渡しに際して借家権として転売できることになっている場合 | その建物の賃借後の見積残存耐用年数の10分の7に相当する年数 | |
3 | 上記1および2以外の権利金等の場合 | 5年 ただし、契約による賃借期間が5年未満の場合で、契約の更新に際して再び権利金等の支払を要することが明らかであるときは、その賃借期間となります。 | |
注意 | (注1) 上記の償却期間に1年未満の端数があるときは、その端数を切り捨てます。 (注2) 償却限度額は、繰延資産の額を償却期間の月数で割ったものに、その事業年度の月数を掛けて計算した金額となります。 ただし、事業年度の中途での支出の場合は、「その事業年度の月数」は支出の日から事業年度末までの月数となります。この場合、月数は暦に従って計算し、1か月に満たない端数はこれを1か月とします。 (注3) 繰延資産の償却費を損金算入する場合には、確定申告書に繰延資産の償却額の計算に関する明細書(別表16(6))を添付する必要があります。 (注4) 少額な繰延資産(その支出した金額が20万円未満のもの)については、その支出の日を含む事業年度においてその全額を損金経理により処理することができます。 (注5) 仲介手数料は支払い時に損金処理をします。 |
内部造作
概 要
賃借りした建物に内部造作をした場合は、建物付属設備に該当するものは建物付属設備勘定で処理し、これに該当しない場合は建物勘定で処理をします。 この場合建物の耐用年数は合理的に見積もった年数により計算することになり、内部造作を事業の用に供した日が、下記の様な時期に該当した場合はそれぞれの償却方法が適用されます。
平成10年3月31日以前に取得 | 平成10年4月1日以後に取得 | 平成19年4月1日以後に取得 | 平成28年4月1日以後に取得 | |
建物 | 旧定額法又は旧定率法 | 旧定額法 | 定額法 | |
付属設備 | 旧定額法又は旧定率法 | 定額法又は定率法 | 定額法 |
建物付属設備の詳細
下記の様なものが建物付属設備に該当します。
構造・用途 | 細目 | 耐用年数 |
アーケード・日よけ設備 | 主として金属製のもの その他のもの | 15 8 |
店用簡易装備 | 3 | |
電気設備(照明設備を含む。) | 蓄電池電源設備 その他のもの | 6 15 |
給排水・衛生設備、ガス設備 | 15 |
投資有価証券
有価証券の分類
国債、社債、株券、新株予約権証券、投資信託の受益証券等を取得した場合は、有価証券勘定で処理しますが、その保有目的により下記のように区分されます。
保有目的による分類 | 内 容 | 金融商品会計基準等による区分 | 税法上区分 | 期末の評価方法 |
売買目的有価証券 | 簿記勘定科目 株式などの有価証券を短期的な資金運用によってキャピタルゲインなどの運用益を目的として保有する場合は「売買目的有価証券」になります。 | 売買目的有価証券 | ― | 時価(有価証券評価損益は損金又は益金に算入) |
税法上の科目 内容は上記の通りですが、法人税法上はより限定的に、証券会社や金融機関でディーリング部門など専門の部署を設けて運用している有価証券や、それ以外に取得日に短期売買目的で取得したものである旨を帳簿書類に記載したもの等がにこれに該当すると規定されています。 | ― | 売買目的有価証券 | ||
満期保有目的の債券 | 満期保有目的の債券で、満期期間が決算日の翌日から1年を超える券権 | 満期保有目的債券 | 投資有価証券 | ⑴原則取得価格 ⑵償却原価法 下記①と➁に該当する場合 ①満期保有目的債券を額面とは異なる価額で取得した場合 ➁額面の価額と取得した価額の差異が金利調整差額という性質を持つ場合 |
満期保有目的の債券で、満期期間が決算日の翌日から1年以内の債券 | 満期保有目的債券 | 有価証券 | ||
子会社・関連会社株式 | 他会社への支配力や影響力を行使する目的で会社の株式を保有する場合は「子会社・関連会社株式」に該当します。 | その他有価証券 | 投資有価証券 | 取得価格 |
その他の有価証券 | 上記以外の目的で株式などの有価証券を保有する場合は、「その他有価証券」に区分されます。 | その他有価証券 | 投資有価証券 | 時価(ただしその他有価証券評価差額金は貸借対照表に記載) 実質、原価法 |
前払費用
前払費用とは、法人が損害保険の契約で一年分の保険料を期中に支払った場合等、①一定の契約に基づき➁継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち、期末決算時おいてまだ提供を受けていない役務に対応する費用をいいます。 原則として決算期末時点においては、この未だ提供を受けていない役務に対応する費用を前払費用として資産計上する必要があります。 具体的には火災保険契約、生命保険契約による年払い保険料及び賃貸契約に基づく家賃の前払いなどが該当します。
短期前払費用の特例
法人が、前払費用の額で、その支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、その支払時点で損金の額に算入することが出来ます。
ゴルフ会員権
ゴルフ会員権の取得費
ゴルフ会員権の取得費は、原則として、ゴルフクラブの会員となるために支出した費用等をいい、下記の様なものがこれに該当します。
番号 | 詳 細 |
1 | ゴルフクラブへの入会に当たって支出した入会金、預託金、株式払込金 |
2 | 第三者から会員権を取得した場合の購入価額、名義書換料、会員権業者に支払う手数料 |
3 | 会員権を取得するために借り入れた借入金の利子のうち、その会員権の取得のための資金の借り入れの日から使用開始の日までの期間に対応する部分の利子 この場合の「使用開始の日」は、次のとおり、会員としての権利の行使が可能となった日をいいます ⑴オープン前の会員権を取得した場合には、そのゴルフ場がオープンした日 ⑵オープン後の会員権を取得した場合には、会員権(会員資格)を取得した日 |
ゴルフクラブへの入会に当たって支出した入会金等の注意点
区 分 | 詳 細 |
法人会員として入会する場合 | 法人の資産 ただし記名式会員権で、その名義人たる特定の役員又は使用人が専ら法人の業務に関係なく利用するため、これらの者が負担すべきであると認められる場合は、当該入会金に相当する金額はその特定の名義人又は使用人の給与となります |
個人会員として入会する場合 | (原則) 個人会員たる法人の役員又は使用人の給与となります |
(例外) 無記名式の会員制度がない場合で、個人会員として入会し、入会金を法人の資産に計上した時に、その入会が法人の業務の遂行上必要であると認められる場合は、その経理処理は認められます |
資産計上の入会金及び年会費の処理
区 分 | 詳 細 | |
減価償却 | 減価償却はできません | |
退会時又は譲渡時 | 入会金のうち退会時に返還を受けることが出来ない場合に、その当該入会金に相当する金額及び譲渡により生じた当該入会金に係る譲渡損失の金額はその退会又は譲渡の日の属する事業年度の損金に算入する | |
年会費、年間ロッカ-費、その他の費用 | 入会金が資産計上されている場合 | 法人の交際費 |
入会金が給与とされている場合 | 会員たる特定の役員又は使用人の給与 |